ドラマネ倶楽部の理念は、「一緒にやれば、もっとできる!」 

リーダーシップの教育例

リーダーシップについて言えば、軍隊には「命令および統制」のリーダーシップというものは存在しない。

軍隊の「命令および統制」とは、任務完遂のために、司令官が権限を行使して配下の部隊に命令し、統制を行うことである。

換言すると、司令官には任務を完遂する責任があり、法律に基づいて命令を強制できるのである。

だが、これはリーダーシップではない。

「命令および統制」は司令官がこの権限をどのように行使すべきか、ということまで踏み込んではいない。

単に命令することはリーダーシップではないのだ。

むしろ、軍隊におけるきわめて効果的なリーダーシップは、それとは逆の方法をとることが多く、まったく命令をしないことも少なくない。

私は高校生のときにこのことを体験的に知った。

私の同級生の祖父は退役陸軍少将だった。

当時私は高校三年生で、軍事教育科目で中尉という高い地位にあり、それを誇りに思っていた。

あるとき、高校のバスケットボールの試合に同級生とその祖父とともに私も招待されたことがあった。

退役少将が買ってくれたチョコレートバーを食べ終わったあと、私はその包み紙を試合会場のベンチの隙間に見つからないように捨てようとした。

悪いことだとはわかっていたが、ごみ箱を探しに行っている間に、試合の経過を見逃すのが嫌だったのだ。

まずいことに、私の行為を退役少将に気づかれてしまった。

彼は命令はせずに、こう言った

「ゴミをもっているのは、私だっていい気分ではない。だけど、どうしてもそうしなければならないときもある。ゴミを投げ捨てたりしたら、子どもが真似るからね」。

私の顔はさぞや真っ赤になっていたことだろう。

このときのことは50年経った今でもよく覚えている。

リーダーシップのテクニックとして、間接的な手段をとったほうがはるかに効果を発揮することを教えてくれた例である。

のちに軍隊で部下に直接命令を下す権限をもったときも、そういう場面を何度も目にしたし、自分でもよく使ったものである。

:ウィリアム・A・コーン 「ドラッカー先生のリーダーシップ論」

 

リーダーシップのテクニックとして、間接的な手段をとったほうがはるかに効果を発揮する。

これは、素晴らしい伝承例を表している。

リーダーシップは、所属する組織とは関係ない場面でも学ぶことができることを示している。

しかし、いかにしてリーダーシップを伝承するかは簡単ではない。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「ドラッカー」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事