こんにちは! 囲碁の先生してます関です。
前回の記事では、「囲碁入門書」の特徴や役目について考えてみました。
今回から、発表のために入手・参照した入門書について、
前編・後編に分けたいと思いますが、その境目を「1994年」としました。
より具体的に言えば、「 石倉昇九段の2冊目の入門書出版」 が1994年のようで、それが大きな意味を持つと考えたためです。
1909年(明治42年)『大日本囲碁解釈』井上保申
これ以前の「入門書」の存在についてはさらなる研究が必要ですが、 棋士が書いたものとしてはかなり初期にあたるのではないかと思い ます。井上氏は「方円社」のかたです。
当日、つついてみましょう。
(まえがき)
(2ページ目です。そう、これが2ページ目なのです)
1961年 『囲碁の手ほどき』 下田源一郎
入門書を調べ始めて、一番の収穫の一つでした。
初心者に向き合う著者の姿勢は、現代のわれわれにも響くものとなっています。
解説の内容じたいは、理屈を求めすぎて、 初心者が読むには大変に苦労したはずです。
しかし「読ませる」「打たせる」情熱こもった文章です。
1962年『図解囲碁入門』鈴木富士夫
この時期の入門書、何が飛び出してくるかわかりませんが・・・
こちらは堅実な出来と思われます。
しっかり必要なことを説明しようとする丁寧さを感じます。
囲碁を「遊び」というより「芸道」 と見ていることがよくうかがえる文章・構成です。
1973年『初歩囲碁入門 この本だけで完全にマスターできる』渡辺昇吉
きた!!予想超えてきた!!!
いや、どんなに昔の、自分たちの価値観と遠そうなものでも、「 入門書」って名前で出てるものなら、 頑張れば囲碁を覚えられると思うじゃないですか。
これだけは、どうしても無理だったんです。
1975年『やさしい囲碁入門』加藤正夫
堂々の一流棋士ですが、「構成」はライターの栗原聖さん。
堅実な内容です。昭和らしく、情報量は多い。
しかし初手から終局までの「対局例」がありませんでした。
(明治本にはあったのです)
注目すべきは「質問形式」にしていること。 ある質問へのレスポンスという形で解説されていきます。
ここにきて、「読み手に対するわかりやすさ」を構成において求める姿勢が現れたわけです。
しかし、その質問をしている人は「入門者」ではなく、 書いてる側が用意したものと見ねばなりません。
1986年『はじめての囲碁入門』石倉昇
やはり、今回の発表での最重要人物の一人。
現九段の、なんと五段時代です。デビュー作ではないでしょうか。
実際の対局例を多く示し、章立ても見やすくなっているなど、のちの「石倉先生の入門書らしさ」をすでに感じさせます。
今回確認できた中では、1986年の本書の次が、1994年『すぐ打てる囲碁入門(石倉八段)』
この二冊の違いを比べると、面白いものが見えてくるはずです。
1989年 『初めての人によくわかる囲碁』こしあきお
「こしあきお」氏は囲碁棋士ではなく、アマチュアの(おそらく)出版人と思われます。
従来の専門的すぎる入門書ではなく、初心者にわかりやすく。
という意図が述べられており、
碁盤の図がカラーになっている。地(陣地)の解説のときに、地の場所にしるしをつけて見やすくしている。
という定番となっていく要素を、(今回確認した中では)最初期に取り入れている本だと思います。
とはいえ文章量がすごく多い。この時期だと普通だったのでしょうか。
1992年 『7日で碁が打てる 九路盤囲碁入門』日本棋院 編
日本棋院の公式?入門書はたびたび出ています。本書はライターの甘竹潤二氏が「構成」です。
いっけん地味ですが、あなどれません。
タイトル通り「九路盤」で、試合で用いる「十九路」の4分の1のサイズ。
それにより二つの図を上下に配置し、碁盤と、展開の流れがとても見やすい。
一気に読ませず「7日」(これが長いか短いかは人によると思いますが・・・)
無理ないペース配分を意識させる点も、もしかすると新機軸だったかも知れない。
1994年 『はじめて打つ碁』趙治勲
時代的には94年ですが、上記の棋院本からの流れを感じ、ここに挙げます。
構成・執筆は小堀啓爾氏です。治勲先生とのペアでおなじみ。
九路、どころか本書は「五路盤」。なんと1ページに三段、図を配置しています。
それゆえ見やすさマックス、展開の追いやすさマックス、
解説内容も、昔~現代含め、独特の点が多く、とても面白いです。
このあたりからは、現代にインストラクターをしている私としても、
生徒さんに十分おすすめできる本がだんだん出てきます。
(後編、現代編につづく!)
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