要因に品種変換があり、それを消費者に隠していることが問題、と本ブログではしたが、その後、卸からのヒヤリングで、卸は品種交換を、入札に当たってはさして問題にしてない様子が伝わってきた。
ところが、昨日、朝日が1面トップで、この問題を取り上げた。
「業界ではさして問題になってないようで、イリーガルではないが、とまどいも」という、きわめて穏当な論調の記事だが、この記事のインパクトは大きそうだ。
どこが問題になるかといえば、消費者の知る権利を保障してない点。業界が寄ってたかって、コシヒカリと、コシヒカリBLとは商標上同じもの、としている点で、消費者にきちんと知らせないのは、いかがかと、いうもの。
確かに消費に軸足を置くなどといいながら、肝心の消費者に知らせていないのは大問題だろう。産地の独善といってもいいすぎではないと私は思っている。
一部の良心的な米小売店が、努力している様子も書かれている。
コメのトレーサビリティといっても、なかなかうまくいかない要因は、産地の対応がきちんとできないことがあるのだが………。いまコメ流通の合理化を中間の卸にだけ押しつけようとする政策が採られているが、いかがなものか?
もう少し風通しのよいコメ流通にして欲しいものだ。
以下朝日新聞四倉記者等の引用
新潟コシヒカリ、味変わった? 産地偽装防止、50年ぶり新品種 昨年産から2006/05/15, 朝日新聞 朝刊, 1ページ, 有, 2091文字
「米の王者」新潟コシヒカリにちょっとした「銘柄騒動」が起きている。昨年産米から、新潟県とJAが産地偽装の防止などを目的に県内のコシヒカリを一斉に新品種に切り替えたが、品種変更を知らない消費者から「味が違う」との声が出始めたからだ。品種の切り替えには、消費者の試食も重ね、農水省から同じブランド名で売るお墨付きも得ているが、一部の農家や業者の中には、消費者の声を意識して従来品種を流通させる動きも出ている。(四倉幹木)
新品種の名は、コシヒカリBL。病害に弱いコシヒカリの欠点を克服しようと、新潟県が15年かけて開発した。他県産米を「新潟産」「魚沼産」と表示する産地偽装に対抗する切り札でもある。BLの種もみの販売先を県内農家に限れば、DNA鑑定で他県産と区別できるからだ。
新潟コシヒカリが世に出て50年ぶりの品種変更で、県がBLへの一斉切り替えに踏み切ったのは昨年の作付けから。JAは従来品種の種もみの販売をやめ、収穫の買い上げ価格もBLを従来品種より60キロ当たり200円高くした。県は「県内のコシヒカリの作付面積は98%がBLに変わった」と強調する。
●県「味は同等」
消費者にとって最大の関心である味に関しては、東京の渋谷と銀座で千人以上の消費者に試食してもらうなどし、「味はコシヒカリと同等」という結果を得た上での決断だったという。日本穀物検定協会の「食味ランキング」でも、従来品種と同じ「特A」だった。
しかし、品種変更は消費者の目には見えにくい。検査済みの米の包装には「コシヒカリ」としか表示されないからだ。県農林水産部の幹部は「(銘柄名が)変わるとイメージ低下につながりかねない」と説明する。
県の申請を受けてBLに「コシヒカリ」の表示を認めた農水省は「特徴や味が変わらないという県の報告と、見た目にも区別しがたいことから判断した」としている。
●「甘み足りぬ」
その新米が流通し始めた昨秋以降、消費者らからは異論も出始めた。
「これ新米ですか?」
和食店「門左衛門」神戸空港店の秋山隆店長(33)は羽田空港店長だった昨年10月、新潟県産でも最高級の魚沼産コシヒカリを注文している同県の米穀業者に聞いた。
送られた米がこれまでと香りが違い、つやと甘みも足りないと感じた。業者は先に送ったBL米を回収し、従来品種の米を送ってきた。今度はいつもの味だった。
東京都府中市で米穀店を営む小沢量さん(46)は今春、米穀店の有志で試食会を開いた。4割ほどの人はBLに、残りは従来品種に軍配を上げた。一時はBLも扱ったが、「好みは人によるが、味が違うのは確か。別物を『コシヒカリ』としては売れない」と従来品種に限った。
兵庫県西宮市の消費者グループ「お米の勉強会」代表の主婦、村山日南子さん(64)は「品種変更が消費者にわからないのは問題」と話す。
●戸惑う生産者
国の有機JAS認証を受けた新潟県十日町市のNPO法人「魚沼ゆうき」代表の山岸勝さん(59)は「BLは別品種。不透明なやり方が新潟ブランドを傷つけないか」と心配する。
独自の販路を持つ生産者でつくる県稲作経営者会議の幹部も「うちは昨年も従来品種を植えた。今年は県外から従来品種の種もみを買って植える農家が増えたようだ」。
新潟県が銘柄名を変えなかったのには、10年あまり前の宮城県の教訓もありそうだ。ササニシキを元に病害に強い「ささろまん」を開発し、「味や品質はササニシキと同じ」とふれ込んだが、売れ行きは伸び悩んだ。
新潟県の担当者は「新しいコシヒカリは、外観や味は従来品種そのものと言っていい。今のところ県にクレームは来ておらず、同じ表示でも問題はないと思う」としている。
◇生産表示の時代
食品問題に詳しいジャーナリストの郡司和夫さんの話 偽装を防ぎ、コメの評価を落としたくない行政や生産者の心境は、コシヒカリというブランド信仰によるものだ。しかし、消費者が生産表示を求める時代だ。新品種に『コシヒカリ』を生かした新しい名称をつけて出荷しても、ブランドとしての評価を落とすことはないのではないかと思う。
◆キーワード
<コシヒカリとコシヒカリBL> コシヒカリは福井県農業試験場で誕生し、56年に新潟県が奨励品種に採用した。全国で最も多く栽培され、新潟県は最大の産地。コシヒカリBLは、同県がコシヒカリと、イネを枯らす「いもち病」に強い外来系の品種を交配し、さらにコシヒカリと5、6回かけ合わせる「戻し交配」をして開発。農薬使用量が従来品種より25%減らせるという。
■水稲の品種別収穫高 (05年産・農林水産統計から)
コシヒカリ 37.1%
ひとめぼれ 10.0
ヒノヒカリ 9.2
あきたこまち 8.8
その他 34.9
<コシヒカリの主な産地>
新潟 15.7%
茨城 10.0
栃木 9.4
福島 8.1
千葉 7.0
その他 49.8
【写真説明】
コシヒカリBLでないことを表示したシールを張って売る店も=14日午後、神奈川県海老名市のスーパーで、恒成利幸撮影
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