プランをまとめると言ってからもう1年半以上立っている。
昨年秋に出されたプランは、5項目だったが、いずれも本質論とは遠いもの。
(5項目とは:農地情報のデータベース化、耕作放棄地の解消、優良農地の確保、農地の面的集積、所有から利用の転換による農地の有効利用)。
また、若林農水大臣が、改革サボタージュで寝てしまった。
それだけに、どうせまた「狼少年」だろうと期待もしていなかった。
そこで彼らの言う「近々出るプラン」を「キンキン(禁々)プラン」といって揶揄していた。
ところが、12月3日の経済財政諮問会議、石破臨時議員報告。
内容、かなり本気。
本格的な制度設計をしてアプローチしているのがわかる。
次期通常国会中の法改正まで射程に入ってきた。
昨年来、「諮問会議W」が主張していたのは、基本的に二つ。
一つは、改革の趣旨や意義では農水省と一致しているはずなのに、様々な枝葉末節があって、その方向すら共有できなくなっている。それを明確にすること。実はこの作業が大変。結構細かい事項にわたって提案していたが、、。
そのために、二番目だが、改革のスピードが遅くなっているので、スピードを速めよ、
この二点につきていた。
共有事項とは、農地の利用本位の改革。
その心は、
公的・社会的資源としての農地の高度利用を図ること、そのための仕組みの構築。
順番として言えば、経営あっての利用。高度に利用できる主体への開放。
農地所有がそれを阻んでいるのであれば、農地所有に関わる法改正が必要。
要は、農業の生産力向上、付加価値増加に資する農地の利用システムを早急に構築するための制度改革。
石破プランの、改革の方向は、
①農地の私的所有を完全に認め、
②転用への強固な規制をかけ、
③誰でも参加できる借地による経営を(農地法でも)完全に合法化するというもの。
そんなこと当たり前じゃないかというのが社会的常識。
それのどこが革新的なのか、褒めるに値するのか?
たしかにそうだ。
これには少々説明がいる。
まず法制的問題。
農地法に、「小作地所有制限」というのがある。
町村居住者以外の小作地所有を禁じている(6条)、あるいは1haをこえる小作地を持ってはならない、とした条項。
それに違反した場合には、国が買収できる。
しかし、一方で農地流動化を進めていれば、1,1haの所有地を全部貸すと、もしかして、この条項が効いて国に没収されてしまうかも知れない。現実には、利用権設定して貸すことによって法的には保護されるが、しかし経営基盤強化法と、農地法、どちらの条項が勝るのかと言った議論にならなくもない。実は農地法のこの条項、今や全く時代錯誤なのだが、あることはある。
この「小作地所有制限」借地拡大のネックになるだけで有名無実。
そこで石破プラン、国による小作地買収(9条)をしない、という方向を明確にするする線が明確になってきた。もっといえば、小作地所有制限に関わる条項をすべて排除するということだろう。
これ農家による農地所有、私的所有の強化になる。
提案では、その意義は大きい。
もし農地改革、この条項に大きな期待をかけるとすると、極端な議論として、農地の国有化論がでてくる可能性もないとは言えない。
私的所有を制限し、公共財としての農地を国有地化して利用に、、というものだが、、この方向はもはや現実的ではない。
耕作放棄地が38万haもアリながら、国家買収する元気がない。
不耕作になっても農業委員会に監督能力がない。
もともと農地改革、戦後の混乱や、GHQという超国家的組織がなかったら、とてもできなかったろう(これに関しては、戦前からの民主化プロセスがあったから可能になったとする論者もいるが、行政的決定打はGHQだろう。財閥解体、農地改革、労働民主化は皆アメリカさんのおかげ)。
麻生政権でそれができるとも思えないし、この極度に資産保有化した社会で私的所有権を剥奪する改革はほとんど無理といっていい。
なにより憲法違反という主張もある。
また今回のプランでさりげなく語ってるのが、権利取得者の耕作義務。
「責務」という言葉を使ってるが、耕作義務条項じつは農地法には課されていない。これは画期的。
①農地の私的所有を完全に認める。②しかし農地は完全に耕作利用。だから転用には強力な縛りをかける。③その代わり、耕作者は耕作という線で完全に貸借自由,
同時に耕作責務がある。耕作責務は農家の場合も同様。
これが石破プランの中身
懸念は二つ。
一つは、現在の政治勢力の中で実現できるかという課題。
もう一つは、これで本当に生産力の向上が可能かという課題。
農地改革の趣旨は、経営活動を活発化し、農業生産力を向上させ、食料供給力を向上すること。果たして装置は作ったが肝心の経営力が向上しないことにならないか。それが重要。農地改革はそのための手段。やはり経営政策とのリンクが必要。
前者だが、農水相、昨年も出すと言ってたはず。農地制度を利用本位に変え、生産力の高い農業を作ると言ってきた。
しかし、
若林元農水大臣、5月の諮問会議で、「その方向は共有するし、小作地所有制限の廃止もするが」といいつつ、「私は農水省の職員でこれをやってきた」などと訳のわからないことを言い続けてきた。
増田議員(総務大臣)の発言にも全面的に反対。党の方でもちゃんと議論してる、、とも、、
まー心は、民間議員がごちゃごちゃ、つまらないことは言うな、俺は専門家だ、ということなのだろうが、挙げ句の果て、、福田首相に反旗を翻してしまった。
本音は「やりたくない」だったかも知れない。
ここまで若林大臣がかたくなになるのは、他でもない、参議院選挙の敗北後の自民党守旧派のまきかえし。
そうなると、課題は、今の自民党政権下でこれができるかどうか。
ましてや、衆議院選挙は4月以降。
この間様々な動きが出るが、
その点、私的所有を完全に認めた点については農業団体の評価はおそらくOK。
転用の一層の制限は、農業団体、建設団体ともに、ノー
農業への参入自由に対しては、農業団体は拒否。
自民党の農林関係委員会での「方向は良いが、、」といった攻撃にどこまで耐えられるかが重要。
しかし、石破プラン、方向は良い。
構造改善課の職員がイキイキしているのは本来の仕事がやれるからだろう。
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伊吹春夫
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