今日の一貫

斉藤壽さんのお話 世田谷・池尻2005/1/30(Sun.)

池尻中学校跡地。廃校を利用した「食材の寺子屋」。渋谷からわずか10分ほど世田谷公園の前というロケーションは最高なのに廃校となった中学。少子化が進む。集まったのは54人、「おいしさ」についてのお話し。お話しは、久しぶりに斉藤壽さん。最近はウインザーホテルのレストランの総合プロデユーサーとしてご活躍。
一口に「うまい」といっても、「うまみ」は様々な味の混成物。それをどう自分の座標におけるか?それぞれの味の関係を説明でき、それを如何に言語化するか? いい料理人の素質はこれができることというのが斉藤説。
これはコツやスキルといった世界全てに通じる話だろう。味という、個人的で表現しにくい暗黙知を、誰にでも共有できる形式知に置き換えること。これで味のイメージの共有が可能となる。
フレンチレストランの、シェフがいて、ス-シェフがいて、そのしたにまたたくさんいてというピラミッド構造は、作業分担の必要上だという。最後にシェフが味を点検してできあがり。そうしたチームでは、味は暗黙知のままでもいいのかもしれない。しかし、評論はそういうわけにはいかない。また言語化しないと外に広がらない。また料理のイメージも広がらない。多くの人に味わってもらうには、様々な味のターミネートが必要なのだ。
フレンチは実は非常に簡単な構造の料理だという。フォンとブイヨンが基本。その中間にポトフーがある。しかしこれから作られるソースのバリエーションが多い。それがフレンチの多様さにつながる。フレンチは、結局基本の組み合わせだから誰にでもできる……のだという。難点は、食材にはバリエーションがあること。同じ食材でも産地によって、日によって、保存状態によって皆違っている。その違いに合わせていいものを作れるか、となるとこれが意外に少ないというのが斉藤さん。
紅茶とクッキーをいただきながら講演後の質問歓談。
その後中村靖彦邸でしばし歓談。
日経新聞の岩田三代さんが「私は冷蔵庫にあるものから料理を何にするか決めますけどね」
斉藤さん「それが大事、それが料理人のイマジネーション。しかしレシピにセリなんて書いてあると、わざわざセリを買いに行く人がいる。冷蔵庫にあるものでセリの代用できるのは?と応用できる人とできない人がいる。いい料理人は、食材を見て料理をイメージできる人、イマジネーション力がないといけない」
要は頭が良くないといい料理人にはなれないということ。
そうした意味で、食材提供業者と料理人はいい意味での緊張関係を持たなければならないのだろう。レシピに、ここは「賀茂なすを使う」などと書かれていれば、地産地消のブランドがブームになっている昨今、主婦などは本当に京野菜などをお取り寄せしてしまう。料理人はそれを他の食材でいい料理に仕上げる力が必要か。食材提供者に踊らされない料理人が必要。
しかし料理人には、また自分の食材リスクを避けるため、やはり産地との情報交換を密にする必要もある。レストラン直営の農場などというのも、必要なこととなってくるに違いない。食材提供者とのいい関係が必要になる。
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