経済連携への対応を戦略的対応策を作ってからというのが筋だろう。
やることをやってというのが政策的には基本。
しかし、これまで日本の農政、「やることをやる」ことに反対してきた。
そのためこの手順がなかなか踏めない状況にある。
これまであまりにも弱者論を振りまくすぎた。
そのつけがいま一気に来ている感じだ。
「規模拡大には努力するが、どんなに努力しても、アメリカやオーストラリアのようにはならない。
だから、日本の稲作農業をはじめとする農業は保護しなければならない」と言い続け、農業を壊滅的にさせてきた。
これ、農水省や全国農協中央会の公式見解だが、壊滅的にさせた責任を、「TPPで農業は壊滅的になる」とも主張し免責を狙ってる風にも見える。
もし本当に農業のことを考えているなら、「壊滅的にならない農業を作ろうじゃないか」となるのが常識人の発想と思うのだが、決してそうはならないから不思議だ。
またTPPによって壊滅的になることを証明しようとして、農業への影響試算なるものを行っているが、これもあまり意味があるとは思えない。
計算の仕方に異論があるが、それ以上に重要なのは、日本農業一般ではなく、誰に影響があるのかを明らかにすることだろう。
多くの兼業農家へのマイナスの影響はきわめて小さいはずだ。あるいは、もしかしたらプラスの影響があるかもしれない。
重要なのは、最も大事にしなければならない専業農家への影響だ。
こうしたことをはっきりさせない、農業構造改革は考えられない。
私のTPPへのスタンスはどうなんだ、とよく聞かれるが、この新潟日報や、11月10日の日経の記事がよく表現している。11月10日の朝日の石破インタビューとも同様の考えをもっている。
[潮流時流]TPP対応 本県足並みそろわず JA・「農業壊滅」と反対 知事・主食除外で交渉を 生産者に不安広がる
2010/11/20 新潟日報 朝刊 3ページ 1660文字
政府が環太平洋連携協定(TPP)をにらみ農業改革を検討する中、農業県である本県の足並みがそろっていない。県農協中央会(JA県中)などが「農業が壊滅的打撃を受ける」と反対姿勢を貫く一方、泉田裕彦知事は「食料安全保障にかかわる部分(主食用米)を留保した上で、(TPP交渉に)積極的に取り組むべきだ」と主張。方向性が食い違う中、農業者の間で「農業はどうなっていくのか」と不安が広がっている。(報道部・荒木崇)
「他国に国民の命を依存する国家は政治的に落第だ。TPP交渉への参加は絶対に認められない」。17日、新潟市中央区で開かれた緊急集会で、JA県中の万歳章会長が声を張り上げた。
県内の農協関係者約270人が気勢を上げた集会は20分ほどで終了。参加反対の決議を採択したが、協議開始の方針を決めた政府の閣議決定からは8日たっていた。
他県では既に農業団体などが緊急集会を開催。北海道庁はTPP影響額がコメや酪農などを含め計約2兆1千億円に上るとの試算を公表している。県内ではこれまでJAグループが街頭で訴えてきたが、大規模な集会は初めて。JA県中は「米価下落や品質低下の対応で動けなかったが、今後は各種団体に働き掛けていきたい」と説明する。
一方、県は「各省庁の出す試算がばらばら。まず(影響の)前提の議論をしないと数字だけ出しても仕方ない」(泉田知事)と試算は示さず、国の動きを見守る姿勢だ。
中越地方の農協役員は「農協の対応も遅いが、(TPP交渉に理解を示す)泉田知事の発言は農業県の知事としてふさわしいのか」と疑問視し、「農業をどうすべきか広く考える必要があるのに、農業関係者だけが騒いでいる形になってしまっている」とつぶやいた。
■ ■
農林水産省の試算によると、TPPなどに参加し関税を撤廃するとコメは国産の約9割が安い外国産に置き換わる見通し。残る1割の高級米(新潟コシヒカリや有機米)は今後も残るという試算だが、価格は1キロ当たり288円(2006年から08年の相対価格の平均額)から39%減の同177円に落ち込むという。
本県の08年の農業産出額2777億円のうち、コメは1669億円と約6割を占める。同省の試算を基に計算すると、コメ産出額は1000億円程度に減ることになる。
村上市の農業法人男性(37)は「経営が厳しいのに海外から農産物が入ればやっていけない。(大規模化で)強い農業をと言うが、そんなに簡単ではない」と語る。
■ ■
同省によると、多国間で行うTPPはあらかじめ特定分野の自由化を除外した形での交渉参加は認められない可能性が高い。「10年以内の関税撤廃が原則」で、品目の除外も宗教上の理由などを除くと限定的だという。
それでも泉田知事は「原則ということは例外があるということでもあり、数品目の除外はある」とし、条件を明確化した交渉を求めている。
宮城大学の大泉一貫副学長(農業経営学)は「貿易交渉は10年から15年はかかり、その間に行われるであろう2国間交渉ではおそらくコメの例外扱いも可能」とみる。
その上で「参加の是非よりもむしろ、(関税撤廃までの間に)農業の構造改革をどう進めるか考えるべきだ。最も影響を受ける専業農家を支え、競争力を付ける『強い農業』支援と、中山間地域を守っている農家への『優しい農業』支援の構築が必要だ」と指摘した。
<TPPの影響に関する国の試算> 農水省によると、関税を撤廃すると海外から安い農林水産物が入り、国内の農林水産物生産額は約4兆5千億円減少。国内総生産(GDP)は約8兆4千億円減り、食料自給率は40%から13%程度に減る見通し。一方、経済産業省はTPPなどを締結しなかった場合、実質GDPは1・53%減(10兆5千億円減)、雇用は81万2千人減ると試算。内閣府はTPPに参加すると実質GDPは0・48%~0・65%増(2兆4千億円~3兆2千億円増)とした。
荒木記者
最新の画像もっと見る
最近の「農政 農業問題」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2020年
2019年
2014年
2004年
人気記事