コメの出荷が低かった15年という年ではあるが、平成の初め頃には3千億円を越えていたことを思うと、その衰退ぶりは目を覆うばかりである。
野菜地帯の千葉、茨城は4億、畜産地帯の鹿児島も4千億であることを考えると、農業全体がそうなのではない。一人、土地利用型農業が衰退しているのである。
だからこそ、構造改革が必要であり、成功する経営者が欲しいのである。
経営者の育成に関しては、機関車農家の育成などといって、90年前後からかなりこれまで主張してきたつもりである。
◆こんな危機意識は、農水官僚の中にも醸成されていた。
もう15年以上も前の話だ。
具体的には次のような施策となって現れている。92年の「新農政プラン」から、認定農業者制度の創設、法人協会の設立など、法人化の本格的推進、食管法の改正等による、市場アクセスの拡大等を経て、99年、市場原理と経営者育成をうたった「新農業基本法」ができた。その第二ラウンドの17年に、リスクを背負う経営者のセーフティネットとして、経営安定対策ができた。これらの施策、一つ一つ見れば、課題はあるが、経営者重視政策からセーフティネットまで、曲がりなりにも、農業の経営者政策が完成したという意味では、実に大きなイーポックとなる予算と言っていい。
19年からの施行というが、実に制度が完成するまで15年かかったことになる。遅すぎると言えば、遅すぎるのである。構造改革をするには最後のチャンスかもしれない。そうした言葉が何度も農水官僚の口に上った。
◆経営対策の趣旨
農水省的に言えば、「望ましい農業構造の確立に向けた担い手の育成」が必要なのである。担い手などと曖昧な言い方をしているが、要は経営者育成。
17年3月に閣議決定された「新たな基本計画」や10月27日に省議決定された「経営所得安定対策等大綱」を読み知る限り、農業経営者育成路線は、確固としたものとなったと確信させるものがある。
◆さてそうした経営者育成政策は、予算があって初めて動く。農林水産予算は、昨年3兆円を切った。18年度予算はさらに4.6%マイナスの2兆8千億円。予算縮小も官僚達の危機意識を高めているに違いない。
危機的状況の土地利用型農業と縮小する農業予算。こうした隘路の中で、新たな農政へと舵を切る使命を持ったのが、18年度予算の性格といえよう。
市場拡大策としての輸出対策。革新的な営農手法の構築。担い手対策、農地流動化対策の革新的推進策等に重点的な配分が見られる。特に、19年度から導入する品目横断的政策「経営所得安定対策等大綱」への対応は一つの目玉であろう。
品目横断政策への転換のために、3億6千6百万の予算が付いているのも理由なしとしない。
◆集落農業対策費
肝心なのが、、「望ましい農業構造の確立に向けた担い手の育成」の中身。
「集落営農の育成・確保の推進107億円」、「認定農業者等担い手の育成・確保の推進11億4千万円」となっている。
担い手(経営者)育成といいながら、集落への補助金の方が一桁多い。これは、集落や関係機関への補助金。このような予算はこのほか、「農地の有効利用の促進費で77億程度」も講じられている。どうもバランス感覚に欠ける様な気がする。
あるいは予算の構造を知らない素人だからそう思うのだろうか。財政学を専門とする識者はこれをどう評価するのだろうか。
目的達成のためには、効果的予算措置がなされる必要がある。集落にこれだけの措置を講じて、それが担い手(農業経営者)育成にうまく機能しなかったのはこれまでの農政の経験である。憂うのは予算「乏しきではなく、効果があがるか」(山下一仁)ではないのだろうか。少ない予算ならそれを効果的に、しかも地元の創意を喚起する方向で機能させること、が肝要なはずだ。
この予算は、農家へ行くと言うよりも、農協や農業委員会といったところが窓口になって使う予算だ。関係機関はいいだろう。しかし、である。一体何が市場原理で、何が競争的になのか、これでは全くわからない。
先の総選挙で民主党が提出した案は、2兆8千億のうち、1兆円をすべての農家に直接支払いとし、残り、1兆8千億円で農水省は運営しなさいというものだった。
本当に少ない予算で、真剣に効果を考えた予算を講じるには、案外この方が良かったのかもしれない。
14日の朝日新聞は、この「農協改革」が、「規制改革・民間解放推進会議」の最終答申で、改革が見送られた事に関し、「官僚と族議員の岩盤が厚かった」と社説で書いている。
小泉政権でもまだこのようなことがあるのだろうか。
最新の画像もっと見る
最近の「農政 農業問題」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2020年
2019年
2014年
2004年
人気記事