ハニカム薔薇ノ神殿

西南戦争の現地記者の歴史漫画を描いてます。歴史、美術史、ゲーム、特撮、同人誌の話他

田原坂美少年と言われる束野孝之丞を入れなかった理由

2023年10月18日 | 文学・歴史・美術および書評
「いや、あまりにも束野では描けない…」

シチュエーションだけあればいいイラストなら描けるのかも。
勝手に丸々と創作設定を加えて良いなら描けるかも?
う〜ん…


田原坂にある美少年像で有名な
束野孝之丞。「つかのこうのじょう」と読むらしい。
「田原坂美少年」として歌われたのはこの伝説の人物だとか
お墓があるのは知っていますとも、もちろん。



これだ。

しっかし!
あまりにも何も出てこなかったのです。
エピソードらしきものが…
宮崎県民らしいけど。
個人的になんかその、特別な感情があったとかなかったとかは知りませんが
何も無いと記号的すぎるのです…
完全オリジナルで別途描くなら可能ですが。
シリーズには入らんよなあ。

「雲よ、伝へて!」には田原坂美少年として
村田岩熊と高橋長次を入れましたが
この二人には描けそうなエピソードがありました。
20歳過ぎてて「少年」枠では厳しい高田露も
既に津本陽も司馬遼太郎も遊んでしまっているので!
便乗して遊ぶことは可能で。(高田露がああなったのは私のせいではない)

大きなストーリーの流れに対して、そのエピソード
それのまつわる人物がどうして重要なのか
問題はそこでした。

主人公の飛高が今回の新刊「其の八」で、記者として関わった人物を回想する場面がありまして
「小さいけど記者」である彼がどうして必要な存在なのか
そこを描く必要があると思いました。

西郷の弟である小兵衛は
何がなんだかわからないうちにどんどん走り出していった暴動の真っ只中にいた。

谷村計介は官軍、薩摩側にいる伝から見たら敵のスパイ?だけど
そこには生い立ちや、唯一自分を肯定した乃木への憧れ、居場所としての「軍」があった。

村田岩熊には「居場所」は無かった。だから友達として飛高を選んだけれど
父親は村田新八。西郷や篠原という父親の友情を背にして、戦に走らされる。

そして高橋長次。彼もエピソードは少ないのですが
「適地に大事な刀を落とした」はエピソとしては十分大きい…
何故、何がそうさせたのか、その小さな個人の「声」を届けるのが
言葉ではなかろうかと考えて、
熊本協同隊を入れたのなら熊本隊もと思いました。

束野の場合の記念碑が建てられたのが昭和7年でして
谷村もそうですが、特に戦前というのは
官軍万歳で戦意高揚のためにあちこちで仕掛けを施されていまして
せっかく平和な戦後に生まれた自分ですから
プロパガンダを知りつつそのまま出すというわけにはいきません。
(良い子の戦意高揚に力なんか貸さないから漫画なのですよw)


さてなら束野をどうするのか。
大きな流れのあるストーリーでその意味のアサインが難しい…
せめてもうちょっと何かあってくれたらなあ…!

例えば「あいつ馬のことばかり気にしおって」でもいいんですよ。
「薩軍として勇敢に戦に身を投じた」ではなくて
むしろそれと全然関係なさそうな方が
人間的で面白いかと思うのです。

福地源一郎(桜痴)が
「史論」で「歴史の効用は歴史家が読者をして
自らその時に存在して、その心情や状況を目撃するかのように示すこと」
というような事を語っていて

いつどこで誰がどうしてそれを行なって
作者は何が言いたいのか
そういうものを考えていけば行くほど

「束野はむずい」

となりました…

けど
研究が進んで何か出てきたらいいね!

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