
*金子左千夫、中馬美和、大坪夕美出演 ティアラこうとう 12月26日のみ
この不思議な響きのコンサート名は、フランツ・シューベルトの友人たちが集まって、彼の歌やピアノ曲を奏でながら踊ったり食べたり飲んだり等々に興じていた「シュベルティアーデ」に由来するとのこと。公演チラシに「金子左千夫が知り合いの音楽家・友人知人をたぶらかし、好きなことを好き放題にやりましょう、というコンサートなのである」とある通り、演奏者はネコこと金子はじめ、これまでに「林光・歌の本 Ⅰ~Ⅳ全曲を歌う」の演奏を果たした盟友たち、ソプラノの中馬美和、ピアニストの大坪夕美という最強の3名だ(1,2,3,4)。
プログラム前半は、林光が作曲した全国さまざまな小中高校の「校歌」から選りすぐりの9曲が歌われた。以前も聴いた東京都足立区竹ノ塚北小学校の「きょうがきた」(谷川俊太郎作詞)に、改めて胸を打たれる。かけがえのない大事な今日という日が来たこと、昨日よりも前に進んでいけること、そして喜ばしい明日が来ることを祈るひたすらな願いは、いつの時代も変わらないはず。自分自身は、小中高と「いかにも校歌」的、大学はバンカラ全開のごとき校歌で育ったため、優しく温かな校歌には憧れを覚える。ふと先週観劇した都立高校の教師と生徒、親の苦悩と葛藤を描いた鵺的公演『天使の群像』を思い出す。あの学校はどんな校歌なのだろう。
15分の休憩後の後半は短いソングを3曲、シューベルトのピアノ即興曲作品90-4を、大坪が曲の構成を解説しての演奏、最後は再びソング「ひとつ名前の兄弟の歌」(平和を強く希求する歌)、名曲「がっこう」で幕となった。「がっこう」は楽譜が配布され、客席もいっしょに歌う趣向であったが、林光のソングは素人にはテンポが速く、この歌もハ長調なのだが、メロディの運びはなかなか複雑で、簡単には歌えないことを実感した。できれば1回練習タイムを取り、もう少ししっかりと歌ってみたい。
アンコールは金子による「十二夜」から道化のフェステの歌が披露された。道化の歌らしく軽やかな曲調ながら、鍵盤ハモニカの中馬、ピアノの大坪が順に退場してゆき、金子ひとりがアカペラで歌う最後の一節には淋しさが漂う。年の瀬の慌ただしさをしばし忘れる佳き時間となった。
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