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再送:米QT縮小や日銀利上げの観測、一時149円台に 1月CPI強ければ一段の円高も

2025-02-20 16:33:59 | 経済

再送:円高が進展したため、見出しと本文の一部を修正しました。

 

 20日の東京市場でドル/円は一時、149円後半までドル安・円高が進行した。トランプ政権が実施を主張している輸入自動車への25%の関税実施の影響や、米連邦準備理事会(FRB)がバランスシート縮小(QT)の一時停止・縮小を検討すると受け取られ、米長期金利が19日に低下したことなどが影響した。

 また、19日の高田創・日銀審議委員の講演・会見で物価の上振れリスクに言及したことや、20日昼に石破茂首相と日銀の植田和男総裁が首相官邸で会談したことも内外の市場参加者に日銀の利上げが前倒しされるとの観測を広げることになり、円高の動きを強めた。あす21日に発表される1月全国消費者物価指数(CPI)が市場予想よりも強い結果となれば、一段の円高進行も予想される。

 

 <FOMC議事要旨でわかったQTの一時停止や縮小の可能性>

 20日の市場で進行した円高の要因の1つとして注目されたのが、FRBのQT縮小の可能性と米長期金利の低下だ。

 19日に公表された1月28─29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、米債務上限問題に関連して今後数カ月間で準備金が大きく変動する可能性があり、この問題が解決するまでバランスシートの縮小を一時停止または減速することが適切かもしれない、と複数の参加者が指摘した。

 筆者は、上記のQTの一時停止や縮小の理由は「表向きの要因」で、本当の理由はトランプ政権から圧力のかかっている利下げは、インフレ鎮静化の傾向が明確にならないため早期の実施が難しく、その代替策としてQTの一時停止・縮小のカードが容易されたのではないかと推論する。

 3月のFOMCでは、QTの一時停止ないし縮小が決定されると多くの市場参加者が予想したために、19日のNY市場で米長期金利が0.9ベーシスポイント(bp)低下の4.535%で取引を終了したと思われる。

 米長期金利の低下は、ドル売り・円買いの材料として市場では消化される。このピースは、地味なようで継続性という点では、無視できない材料になると指摘したい。

 

 <「来月かそれより前」、トランプ氏の自動車関税めぐる発言で市場に波紋>

 もう1つの大きな材料は、トランプ政権による自動車を対象にした25%の関税賦課の方針だ。トランプ大統領は18日、輸入自動車に25%程度の関税を課す方針を表明し、4月2日に詳細を発表するとの見解を示した。

 ところが、19日になってトランプ氏はフロリダ州のイベントでの講演の中で、自動車関税について「来月かそれより前」に発表する意向を表明。4月2日なら一定の交渉期間があると高をくくっていた市場にとっては「大きなショック」(国内金融機関)となり、日経平均株価が一時、前日比600円超の下落となる原因となった。

 複数の市場関係者によると、この日本株下落の動きも海外勢などによる円買い戻しの動きを誘発したという。

 

 <石破・植田会談、市場の利上げ観測を刺激>

 さらに19日の日銀の高田審議委員による講演と会見で、物価の上振れリスクに言及したことや足元の長期金利上昇を強くけん制しなかったことなどに改めて注目が集まり、円買いを後押しする心理的な要因になっているとの見方も出ていた。

 20日昼には石破首相と植田総裁が首相官邸で会談。植田総裁は定期的な懇談だとし「金融・経済動向について意見交換した」と話したと報道されたが、足元で上昇している日本の長期金利について「そうしたことは話していない」と語ったと伝わり、一部に長期金利の上昇が容認されているとの見方も浮上。市場の日銀利上げに対する警戒感を刺激したとの声も出ていた。

 一部の市場関係者からはドル/円の基調が転換するのかどうか、見極めが重要な局面に入ったという意見も聞かれた。

 

 <1月CPI、総合が4%台なら円高加速も>

 筆者は、FRBのQT一時停止や縮小が意識される中で、ドル/円の上値を追うことは難しくなってきたと予想する。そこに日銀の利上げ前倒しの思惑が重なると、ドルの上値は抑えられ、経済データや当局者の発言によっては円高が進む可能性も出てきたと予想する。

 その意味で注目されるのは21日発表の1月全国CPIだ。生鮮食品を除く総合(コアCPI)は前月の前年比プラス3.0%を上回る伸びを示す可能性があり、総合は同4.0%に達するとの予想もある。

 日銀内で物価上振れのリスクが高まりつつあるとの判断に傾けば、市場の利上げ予想が90%を超える7月会合から前倒しされる可能性があると予想する。

 日銀は従来から経済・物価の見通しが予想通り(オントラック)なら、段階的に緩和度合いを調整する(利上げする)方針を示してきたが、上振れとなれば、予想よりも上方に物価上昇率がシフトするリスクが相応に高まるということになるからだ。

 1月全国CPIの結果によっては、ドル安・円高が一段と進む展開も十分にあると予想する。


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