一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

強い米CPIならドル150円も射程、注目される国内物価動向と日銀の判断

2024-10-10 14:28:21 | 経済

 9日に発表される9月米消費者物価指数(CPI)が、149円台で推移するドル/円の先行きを大きく左右しそうだ。市場では総合が前月比プラス0.1%、コアが同0.2%と予想しているが、コアが同0.3%に強含んだ場合、米長期金利の上昇を伴ってドル/円もドル高・円安が進行するだろう。仮にドル/円が米CPI発表後に150円台に乗せるようなら、日銀の中長期的な金融政策判断にも影響が出てくるかもしれない。

 

 <強い9月米雇用統計後に上がったFF金利予想、CPIの注目度高める>

 9月米CPIが急速に注目されるようになったのは、強かった9月米雇用統計を受けて市場が予想するフェデラルファンドレート(FF金利)のイールドカーブ(金利曲線)が上方にシフトし、2025年末の予想が3.25%-3.50%付近まで上がっているためだ。

 もし、市場が注目するコアの前月比がプラス0.3%に上がった場合、市場が予想するFF金利の予想はさらに上昇し、10年米国債利回り(長期金利)が足元の4.07%付近から一段と上がりだす可能性が高まる。

 東京時間の9日午後に149円前半で取引されているドル/円は、米長期金利の上昇があれば、ドル高・円安方向に動き、150円目前まで円安が進むと予想される。市場の地合いによっては、一気に150円台に乗せることもあるだろう。

 

 <9月の米50bp利下げ、市場にやり過ぎの思惑も>

 円安加速の「ガソリン」になる米長期金利上昇のマグマが溜まりやすくなっている背景として、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における50ベーシスポイント(bp)の利下げが「やり過ぎだったのではないか」との声が米市場関係者の間でじわじわと広がっていることがある。

 米連邦準備理事会(FRB)が9日に公表した9月17─18日のFOMC議事要旨の中では、一部の参加者は25bpの利下げを支持し「他の数人はそうした決定を支持した可能性もあった」との記述もあった。FOMC内にも50bpの利下げはやり過ぎと感じていたメンバーが複数いた可能性があることを示唆する表現になっており、9月米雇用統計の強い結果と合わせて考えると、2025年中の利下げ幅は当初の想定よりも小幅になるのではないか、との見方が多くなる素地を作ったと言える。

 実際、米アトランタ地区連銀の「GDP NOW」は今年第3四半期の成長率をプラス3.2%と試算しており、8月上旬に市場が予見した「景気失速」とは対照的な強いデータとなっている。

 また、9月CPIとの関連では中古車価格の強含みの動きや高止まりする家賃の動向を懸念する声も浮上。コアの前月比がプラス0.3%になる可能性は小さくないとみる声もある。

 

 <短期筋の円高ポジション、機能しないおそれ ロスカットの時期に注目>

 ただ、9月CPIが市場予想と同じであれば、米長期金利とドル/円はあまり動かず、予想よりも弱ければ、米長期金利の4%割れとドル安・円高方向にドル/円が動くと予想される。

 ここで問題になるのは、最近の取引で円買いポジションを積み増してきた短期筋が、予想とは反対方向である149円台へと円安が進んだ結果、高い金利のドルを調達して低金利の円で運用しようとしてロスが出ているということだ。

 円安方向の滞空時間が長くなると、円高ポジションの参加者の損失が大きくなるため、円高方向への転換が見込めないと判断すれば、ロスカットがどこかで生じることになる。

 そのタイミングが強い9月米CPIの発表と重なれば、円安方向への振れ幅が大きくなる可能性が高まるだろう。

 

 <再び150円台の円安なら国内輸入物価が再上昇も、どうなる日銀の時間的余裕>

 161円台から140円への円高シフトで、大きな影響を受ける1つに日本の輸入物価がある。日銀の企業物価指数によると、8月の輸入物価(円ベース)は前月比7.4%の円高によって前年比プラス2.5%と前月の同10.7%から伸び率が大幅に縮小。9月は前月比2.0%の円高で輸入物価は前年比マイナス2.6%に落ち込んだ。

 こうした動きを反映して、日銀は経済・物価情勢が見通し通りに推移して金融緩和の度合いを調整する(利上げする)ことが合理的かどうかを判断する際に、時間的な余裕があるとの認識を示してきた。

 だが、堅調な米経済と来年の利下げ幅予想の圧縮が進み、米長期金利上昇とドル高・円安を経由した日本の物価上昇圧力の高まりが顕在化してくれば、時間的な余裕が次第になくなってくる可能性も否定できない。

 その意味で9日の米CPIの結果は、日本の当局や市場関係者にとっても未来を左右する重大なファクターになっていると指摘したい。


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