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石破茂・自民党総裁は30日、衆院選を10月27日投開票で実施する方針を表明した。株式市場には、衆院解散・総選挙を前にした相場では株価が上昇するとのアノマリーが存在し、国内勢の一部には30日に3万7000円台まで下落した日経平均は今後、買い戻しが優勢になるとの予想が出ている。他方、30日の市場では、海外勢が主導となって円買い・株売りを仕掛ける動きも目立っており、衆院選を意識した株買いと自民党総裁選後の株売り・円買いの動きのどちらが優勢になるのか、先行きは極めて不透明になっている。
<衆院選は10月27日投開票>
会見に同席した自民党の森山裕幹事長は、10月15日に衆院選が公示されると述べた。主要な国内メディアは10月9日に衆院が解散される方向であると伝えている。
当初、石破総裁は国会での論戦なども考慮して11月10日の投開票というケースも念頭にあったとみられるが、30日付読売新聞朝刊の報道によると、森山氏が早期の衆院選実施を進言し、石破総裁が受け入れたという。
石破新総裁は10月1日に首相に指名され、同日中に組閣するが、支持率の高いうちに衆院選を実施した方が与党に有利との判断に傾いたとみられる。
衆院選で与党勝利が見込まれる場合、株式市場は「株高」で反応するケースが圧倒的に多い。政権基盤の強化につながる結果になれば、金融・資本市場に追い風が吹くとの発想から株買い優勢の相場が展開されてきた。
また、衆院解散前に与党は経済対策を打ち上げ、補正予算の編成を事前にアナウンスすることが多く、その経済効果を織り込むことで「株買い」を正当化するということも繰り返されてきた。
<補正予算、市場は4-5兆円の真水織り込み済み>
今回は能登半島の大雨被害への対応に関し、機動的執行を念頭に2024年度予算の中の予備費を使って対応することが石破総裁から表明されているが、衆院選の公示までには24年度補正予算案の編成を含めた総合経済対策の骨子が政府・与党から公表される可能性が高いとみられている。
マーケットはすでに補正予算案の内容をめぐって複数の思惑が交錯しており、一部の市場関係者は財政資金の投入額(いわゆる真水の規模)が4-5兆円と見込んでおり「株価を押し上げるには、それ以上の規模が必要」(国内銀関係者)との声も出ている。
<根強い海外勢の株売り・円買い>
一方、複数の市場関係者によると、30日午後になって株売り・円買いの注文をまとまって出してきたのは一部の欧州勢など海外勢だという。
要因の1つは、高市早苗・経済安全保障相が自民党総裁選で当選するとの思惑から株買い・円売りを仕掛けるいわゆる「高市トレード」に賭けた海外勢が石破氏の当選で巻き戻しの動きを活発化させ、30日午後も継続していたことだ。
2つ目は、石破総裁が日銀の金融政策運営に対し、独立性を重視する発言をしていることに着目し、年内の利上げを日銀が押しするようとした場合に政府が止めないと判断し、円買いと日本株売りを連動させているという見方だ。
後者には、石破氏は「マーケットに冷淡」とのイメージが存在していることも意識し、株売り・円買いを仕掛けやすいという思惑も加わっているという。
<衆院選までは株高、今回も当てはまるか>
衆院選の投開票日までは「株価上昇」というアノマリーと、日銀の利上げに寛容な石破氏の政権は「株売り」と決め打ちしている動きのどちらが優勢になるのか──。複数の市場関係者によると、今回は判断が難しいという。
ただ、国内勢の中には日経平均株価は3万7000円台後半では買い戻しの動きが根強く、ドル/円も141円を割り込むには材料不足との声もあり、10月1日以降の東京市場では株買い・円売りが先行するとの見方が多い。
<注目されるパウエル講演>
一方、30日に予定されているパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演後の市場反応で、ドル売り・円買いが加速するような場合は、10月1日の東京市場で日経平均株価が続落する展開もよそうされるという。
当欄で何回も指摘しているが、海外勢の株売り・円買い基調を転換させるには、石破氏があす発足させる内閣で日本経済の成長力を高めるための具体的な成長プランを提示することが早道だ。特に石破氏が言及した国内企業の国内還流を促進させるための優遇策の提起は、最も優先して具体化するべき項目だ。
<予想外にしたたかな石破人事>
ここで、国内メディアが報道している自民党役員人事とあす発足する新内閣の顔ぶれをみると、石破総裁は予想外に「したたか」であることを示した。
一部の報道では、高市氏が総務会長就任の打診を固辞したことで、自民党内の亀裂が深まると解説されていたが、麻生太郎氏の最高顧問就任の受諾によって、その懸念は大幅に低下したと言える。事前報道では、麻生派の武藤容治衆院議員が経済産業相に就任するとされており、高市氏を強く支えた麻生氏と麻生派メンバーの反発は大幅に低下すると予想される。
また、裏金受領を認めた国会議員が多かった旧清和会からの閣僚起用がゼロだったことも、石破氏が国民に訴えるポイントに1つになると考える。
同時に林芳正官房長官を留任させ、厚労相経験者の加藤勝信氏を財務相に起用するなど、重要ポストで手堅い布陣を築くなど政権の安定に腐心していることもうかがわれる。
さらに外相に岩屋毅氏、防衛相に中谷元氏と防衛相経験者を起用し、緊迫の度を高めている安全保障環境にも配慮し、石破色を出している。
党役員人事で党内の情勢は握力が極めて高い森山氏を幹事長に充てたことも、党内基盤の弱い石破氏にとっては極めて重要な人事だったと言える。
<岸田・菅連立内閣の色彩>
菅義偉元首相を副総裁としたことで、決選投票で石破氏勝利に導いた岸田文雄首相と菅氏が石破氏の内閣を支える両巨頭であることが判明した。
永田町には「岸破内閣」との揶揄が早くも出ているようだが、実態は「岸田・菅」連立内閣の色彩が濃いのではないか。
もし、衆院選で自公両党が過半数を維持すれば、10月1日に発足する石破内閣は、予想を超えて継続する可能性が高まるだろう。
その時に海外勢の見る目が、大きく変化しているかもしれない。
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