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「石破ショック」とも言われた株安・円高の動きは1日の東京市場で修正され、日経平均株価が買い戻されるとともにドル高・円安が進んだ。背景には、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演後に進んだ米金利上昇や米経済のソフトランディング期待の広がり、日銀が1日に公表した9月金融政策決定会合における「主な意見」を受けた早期利上げ観測の後退などある。
また、1日に発表された9月日銀短観では8月上旬の大幅な株安と円高進展という市場動向を経ても、大企業・製造業の業況判断DIが堅調だったことが、今後の日本株買いの材料として意識されると予想する。同時に好調な企業業績と米経済のソフトランディング期待の高まりは、来年の春闘における賃上げ率が今年並みに大幅になる可能性を高めていると言える。大幅な緩和度合いを段階的に調整していく方針を維持している日銀にとって、見通し通りに経済・物価情勢が進展するという「オントラック」との認識を強めることになると筆者は考える。
<1つ目の材料、パウエル議長の講演で米金利上昇>
1日の東京市場では、日経平均株価が買い戻され、前日比732円42銭(1.93%)高の3万8651円97銭で取引を終えた。ドル/円も144円前半までドル高・円安が進んだ。
石破ショックや高市トレードの巻き戻しという呼び方まで登場した株安・円高が、どうして1日の市場で反対方向へ大きく動いたのか──。
1つ目の大きな材料は、9月30日に行われたパウエル議長の講演内容だった。「利下げプロセスは時間をかけて行われるため、急ぐ必要はない」と述べるとともに「米経済は堅調で、われわれの政策ツールを使いこの状況を維持していく」と指摘。11月の米連邦公開市場委員会(FOМC)で前回に続いて50ベーシスポイント(bp)の利下げを実施することに距離を置くとともに、米経済のソフトランディングに自信を示した。
この結果、発言前は五分五分だった25bpと50bpの利下げ予想は、発言後に25bp利下げが62%に上昇する一方、50bp利下げは約38%に低下した。
30日のNY市場で、10年米国債利回りは3.9bp上昇して3.790%となり、2年米国債利回りは8.2bp上昇の3.645%で取引を終えた。ドル/円は米金利の上昇を受けて143.85円までドル高・円安が進展した。
<2つ目の材料、日銀の主な意見で金融市場の不安定さに言及>
東京市場でさらに円安が進んだ材料として注目されたのは、日銀が公表した9月金融政策決定会合における主な意見だった。金融市場の不安定さに言及し、短期的には慎重な判断が必要という見解が数多く示され、石破茂・新首相なら日銀の判断を容認して「早期利上げもありうる」とみていた市場参加者の見通しを大幅に修正させたと筆者は考える。
大幅な円安は日経平均株価の買い戻しをさらに強め、前日の市場で円高・日本株売りを仕掛けた一部の海外勢も巻き戻しの取引を強いられたという。
<自民党が衆院選公約の作成へ、高まる選挙前の株高アノマリー>
石破新首相は1日に内閣を発足させ、数日中には衆院選に向けた「公約」を発表する手順を考えているという。こうなると、9月30日の当欄でも指摘したような衆院選までは株価が上がるというアノマリーを信奉する国内勢が、重点投資先を整理して国内株の選好を強めることになると予想する。
10月27日の投開票まで4週間足らずという短期決戦では、衆院小選挙区における候補者の調整が衆院選全体の死命を決することになるが、野党側は立憲民主党と日本維新の会の選挙区調整が全く進展の兆しを見せておらず、立民と国民民主党との選挙調整も時間的制約の中で着地点が見えない状況だ。
こうした選挙情勢は、国内メディアの報道とともにマーケットにも順次、浸透していくことになるだろう。そして、複数回の選挙情勢報道で与党有利が伝えられれば、衆院選は株買いというアノマリーが様々な参加者に広がり、日本株上昇に拍車がかかる展開になると予想する。
<8月の市場変動で悪化しなかった企業心理>
一方、1日発表の9月日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが前回並みのプラス13と堅調だった。8月上旬の市場大変動で企業心理の悪化も懸念されていただけに、堅調なDIは先行きの国内経済にとって明るい展望をもたらした。
また、設備投資計画も大企業・製造業で強さが目立っただけでなく、仕入れ価格判断の低下幅が販売価格判断の低下幅より大きく、企業の収益構造にはプラスに働く可能性が高まっていることも示した。
日銀がリスク要因として指摘している米経済のソフトランディングの行方に関しても、米経済の様々な指標が急速な悪化を示していないだけでなく、パウエル議長の講演でも経済の底堅さに自信を示している状況では、心配するような米景気後退から日本経済のへ下押し圧力の強まりというシナリオは後退しているとみるべきだろう。
実際、9月FOМCでの50bpの利下げは、ソフトランディングの可能性をかなり高めることになったと指摘したい。
短観における企業の人出不足感が依然として強いことなども勘案すると、来年の春闘における賃上げは大企業に限定すれば、今年並みの大幅な引き上げが可能であるとのパスを描けるのではないか。
<日銀は「オントラック」の認識維持の公算>
このように考えると、日銀は現在の経済・物価情勢に関して「オントラック」との認識を維持していると筆者は考える。
10月の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、オントラックと考える理由を列挙して、市場動向が大荒れから沈静化への道を進んでいると確認できれば、緩和度合いの調整を探ることが可能になるという考え方を示すのではないかと予想している。
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