一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

強い米雇用統計なら円安進展も、物価対策検討の石破首相は150円台を容認するのか

2024-10-04 14:15:40 | 経済

 株安・円高から株高・円安に大きく振れた今週の東京市場は、4日発表の9月米雇用統計で再び、大きな岐路に直面する。もし、市場予想よりも強めの結果が出れば、ドル/円が148円台からさらに円安に振れて150円が視野に入る可能性が高まると予想する。一方、弱めのデータとなればドル安・円高方向に戻るが、石破茂首相の日銀利上げけん制発言を意識している市場は、これまでよりも円買いにためらいを見せるのではないか。

 もし、来週のドル/円が150円台に乗せた場合、この先の経済対策で「物価高対策」を検討しようとしている石破首相が、どのような反応を見せるのか大きな注目点として浮上するだろう。

 

 <雇用者15万人増・失業率4.2%の予想、強ければ円安方向にジャンプ>

 日本時間の4日午後9時半に発表される9月米雇用統計の市場予測は、非農業部門の雇用者数が前月比15万人増(8月は14万2000人増)、失業率は8月から横ばいの4.2%となっている。

 仮に雇用者の増加数が20万人台になるなど強めに出て、失業率も4.1%や4.0%に低下した場合は、11月の米連邦公開市場委員会(FOМC)での50ベーシスポイント(bp)の利下げ予想が大幅に後退し、米金利は上昇するだろう。

 3日のNY市場で10年米国債利回りは5.3bp上昇の3.841%で取引を終えたが、大幅に上昇して4%目前の水準になっている可能性もありそうだ。

 ドル/円は足元の146円前半から148円台にドル高・円安方向へとジャンプし、週明けの取引では150円台が意識されるとの市場の声が多数派になっていると予想する。

 

 <ドル高・円安に行きやすい2つの理由>

 なぜかと言えば、大まかに2つの理由がある。1つ目は、3日に米供給管理協会(ISМ)が発表した9月の非製造業総合指数が54.9と、前月の51.5から上昇し、2023年2月以来、約1年半ぶりの高水準を付けていたため、市場に米経済の強さが予めインプットされていたことがある。

 その結果、11月FOМCでの50bp利下げの思惑が後退し、米金利上昇―ドル高・円安の市場地合いが形成されやすくなった。

 2つ目は、高市早苗・前経済安全保障相の自民党総裁選での敗退と金融正常化に前向きな石破首相の登場で、市場における円買いポジションの積み増しが目立っていたところに、石破首相が「現在、追加利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言し、そのポジションの急速な巻き戻しが進行しているということがある。

 円買いポジションの手仕舞いで損失を出した一部の短期筋は、ドル買い・円売りの材料が出てきた場合に円売りで反応しやすくなるという傾向があるという。現在の市場心理の「微妙なあや」が普段よりも円安を加速させやすくしている点は、軽視しないほうがいいだろう。

 

 <弱いデータ、円高方向に動くものの142円台が下限か>

 一方、弱い米雇用統計の結果になった場合は、米金利低下―ドル安・円高の動きが目立つことになると予想する。

 ただ、このケースでも石破首相の利上げけん制発言に対する市場の印象が強烈であったため、ある種の「残像現象」が効果を発揮し、大幅な円高は回避されてドル/円は142-143円台が当面の下限になるのではないか。

 予想通りの結果になったときは、大きな市場変動はないとみられている。

 

 <物価高対策の効果を減じる大幅な円安>

 3つのケースの中で、石破政権にとって悩ましい展開になりそうなのが、強い米雇用統計―大幅な円安という展開だろう。

 石破首相は4日の閣議で、総合経済対策の取りまとめを指示し、物価高対策やデフレ脱却に向けた経済成長力の強化、災害対応や防災対策の強化が柱になると伝えられている。

 物価高対策が大きな柱の1つとして位置付けられているが、円安が進んで輸入物価が再上昇し始め、消費者物価指数(CPI)が一段と上がりだすなら、実施が予想される低所得者向けの給付金の効果が大幅にカットされることになる。

 また、その円安の動きの中に石破首相の強い利上げけん制発言の効果が含まれているとすれば、政府のマクロ政策の方向がどちらを向いているのかわからない、との批判を受けかねない。

 週明けの東京市場で大幅に円安が進展した場合、9日とも言われている「党首討論」での大きな論点になる可能性も秘めていると指摘したい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする