一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

日本株に複数の重し、そこに加わる不透明な衆院選情勢という売り材料

2024-10-08 13:34:13 | 経済

 8日の日経平均株価は大幅に反落し、前日比395円20銭(1.00%)安の3万8937円54銭で取引を終えた。中東の地政学的リスクの高まりや米長期金利の低下を背景にしたドル安・円高、中国株の上昇による日本株からの資金シフトなど売り材料がそろう展開になった。

 ここで見逃せないのが、「衆院解散から総選挙までは日本株買い」という国内勢が信奉するアノマリーの機能不全だ。石破茂首相の発言のブレに注目が集まる中、自民党が実施した情勢調査で同党が予想以上に劣勢だったとの情報が流れ、「選挙は買い」と踏み切れない参加者が多くなっているという。27日の衆院選投開票日まで選挙情勢をめぐって神経質な展開になることが予想される。

 

 <イラン核施設攻撃のリスク、原油高や株安に>

 8日の日経平均株価を押し下げた第1の要因は、中東情勢の緊迫化だ。 イスラエルのガラント国防相は7日までのCNNの取材に対し、イランに対する報復攻撃についてあらゆる選択肢が排除されていないと述べ、イランの核施設への攻撃の可能性を否定しなかった。

 7日のNY市場で、米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値は約1カ月ぶりの高値となる前週末比2.76ドル(3.71%)高の1バレル=77.14ドルまで上昇。 米株式市場の主要3指数は約1%下落して取引を終えた。この流れを受けて8日の日経平均株価は午前中から売りが先行した。

 

 <中国株上昇、日本株からの資金シフト>

 第2の理由は、中国株の大幅な上昇で資金が日本株からシフトしたことだ。中国政府の景気刺激策の効果に期待した買いが集まり、8日の上海総合株式は取引序盤で9.7%高となり、その前後から日経平均の下げ幅が大きくなる場面があった。

 ただ、中国の国家発展改革委員会が8日に開いた記者会見では、市場の期待した具体的な追加策への言及がなく、その後はいったん1.9%高まで上げ幅を縮小する動きとなり、日経平均株価も下げ止まりとなった。

 

 <国内勢の米債買い、円高から株安の流れに>

 3つ目の要因は、アジア時間帯の米長期金利の低下によるドル安・円高の動きだ。いったん下げ止まった日経平均株価は午後に下落幅を拡大。ドル安・円高が進んだことを注視した一部の参加者が日本株売りに加わった。この背景には、前日NY市場で4.019%まで上昇した10年米国債利回りが一時、3.999%まで低下し、材料視されたことがある。

 一部国内勢が4%台で10年米国債を買ってきたとの見方が市場で広がっていたが、その動きが一巡すると、円高の動きもストップして日経平均株価は、やや水準を切り上げたという。

 

 <石破首相のブレ、「選挙は株買い」のアノマリー飲み込む可能性も>

 筆者は以上の要因とは別に、衆院選が迫る中で話題になる「衆院解散から衆院選投開票日までは、日本株は上昇する」とのアノマリーが今回、従来通りに機能していないことが大きく作用しているのではないかとみている。

 石破首相は6日、派閥の政治資金規正法違反事件で収支報告書に不記載のあった議員のうち、6人を衆院選で公認しない方針を打ち出した。合わせて不記載者は全員が比例選で重複立候補できないことも明らかにした。当初、都道府県連から申請のあった候補者は全員、原則として公認され、比例選への重複立候補も全員に認めると報道されていただけに、永田町には大きな衝撃が走った。

 7日付読売新聞朝刊などは、同党が最近になって極秘で実施した衆院選情勢調査の結果がよくなく、そうした情報が石破首相や与党幹部の方針転換につながった可能性があると伝えた。

 また、衆院解散前に予算委での質疑が必要との見解を自民党総裁選の期間中に述べていた石破首相が、衆参本会議の代表質問と党首討論だけで9日に衆院解散を断行すると表明し、発言のブレが大きく報道されたことも「新内閣の出はなをくじいた。ご祝儀相場の支持率上昇なしに衆院選に突入しそうだ」(国内銀関係者)との見方を広げることになった。

 「選挙は株買い」との思惑は、与党が衆院選で勝利することが前提となっており、安倍晋三氏や岸田文雄氏の首相時代の衆院選は自民党が全勝してきた。

 だが、今回は石破首相の発言のブレや政治とカネをめぐる公認問題での方針転換など、本当に与党が勝てるのかという確信が市場参加者に存在しない中で行われる珍しいケースとなる。もし、自民党が敗北すれば、2009年8月の衆院選以来となる。

 

 <勝敗ラインは与党で233議席、情勢報道で市場は一喜一憂か>

 自民党と公明党は両党で過半数の233議席以上の獲得を勝敗ラインに設定するとみられる。だが、現有の258議席から25議席減の233議席で単独過半数を維持するというのが、石破首相が選挙後に敗北責任を問われない最低ラインではないかと筆者は考える。

 今後、9日の衆院解散から投開票日の27日まで国内報道機関による数回の情勢分析調査が実施されるとみられるが、その動向によって「与党過半数の勢い」という見出しが出れば株高、「与党の過半数微妙」や「自民、都市部で苦戦」などの見出しが躍れば、株安になると予想する。

 あす9日の衆院解散以降は、国内政局動向が大きな材料としてなマーケットに影響を与える時間帯になる。

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