一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

強い雇用統計で切り上がる米金利曲線、高まる円安加速シナリオを点検する

2024-10-07 15:54:44 | 経済

 9月米雇用統計の強さが米金利上昇を生み、7日の東京市場ではドル高・円安と日本株高が進行した。東京市場参加者の中には11月の米連邦公開市場委員会(FOМC)での利下げ幅が25ベーシスポイント(bp)になる可能性が高まったという点に関心を持つ向きが多いが、今後のドル/円の行方を左右するのは2025年末のフェデラルファンドレート(FF金利)の市場予想の行方だろう。

 市場が米経済のソフトランディングやノーランディングを織り込み、25年末のFF金利予想が足元の3.00%-3.25%から3.25%-3.50%に切り上がるなら、米長期金利の上昇を伴ってドル/円も150円台に乗せるのではないか。10日に発表される9月の米消費者物価指数(CPI)が強ければ、米経済のインフレ再燃への懸念が生じやすくなり、一段と円安圧力が増す可能性にも目配りが必要になると予想する。

 

 <強かった米雇用統計、予想通りに円安・日本株高に>

 4日に発表された9月米雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想のプラス15万人を大幅に上回るプラス25万4000人となり、失業率も市場予想の4.2%を下回る4.1%に低下した。

この強い指標を受けて4日のNY市場で、10年米国債利回りは13.7bp上昇の3.981%で取引を終え、ドル/円は一時、149.02円までドル高・円安が進んだ。

 7日の東京市場ではいったん149.13円まで円安が進んだが、ブルームバーグが三村淳財務官のコメントとして「為替市場の動向は緊張感を持って注視していく」と述べたと伝えると、その後は148円半ばでの取引で推移。日経平均株価は円安を好感して3日続伸し、前週末比697円12銭(1.80%)高の3万9332円74銭で取引を終えた。

 

 <サマーズ・エラリアン両氏、インフレ再燃に警戒感>

 強い米雇用統計とその後の円安進展は、4日の当欄で指摘した通りだったが、強い米雇用統計のデータに対し、米欧の専門家の一部はインフレ再燃への懸念を強めて身構えるコメントを出している。

 サマーズ元米財務長官は、X(旧ツイッター)に「今になって思い返せば、9月の50bpの利下げは間違いだったといえる」と投稿した。

 また、英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジ学長のモハメド・エラリアン氏は、4日のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、米雇用統計について「インフレは死んでいない」ことを気づかせたと発言。「FOMCは雇用の最大化のみに関心を持つべきだという話をもうやめた方が良い」と語った。

 

 <切り上がる25年末のFF金利予想、一段上昇ならドル150円台も>

 米経済の失速懸念の台頭から米長期金利低下―ドル安・円高―日本株安と連鎖した8月上旬の動きとはまるで逆方向の米経済のソフトランディング期待の上昇―米長期金利上昇―ドル高・円安―日本株高の流れが足元ではっきりとしてきている。

 市場が織り込んでいるFF金利の予想も、2025年末に関して2.75%-3.00%付近まで低下していた時期があったものの、足元では3.00%-3.25%付近まで上昇してきた。これが148円台から149円台前半まで円安が進んだ大きな要因と言える。

 もし、この先の米経済指標が強めに出て、25年末のFF金利の予想が3.25%-3.50%付近まで上昇するようなら、ドル/円は150円台に乗せる可能性が大幅に高まるだろう。

 

 <9月米CPI、強めなら円安加速通じて日銀の利上げパスに影響>

 ここで問題になるのが、9月米CPIの動向だ。市場は前月比プラス0.1%、前年同月比プラス2.3%と緩やかな上昇を予想しているが、仮に強めの結果が出れば、ノーランディングから「インフレ再燃」を警戒する声が出てくることも予想される。このケースでは、米長期金利の大幅上昇を伴ってドル高・円安の流れが加速することになる。

 ドル/円が150円台で定着するようなら、利上げの検討には「時間的な余裕がある」との見解を示してきた日銀のスタンスにも影響が出てくるだろう。

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