一歩先の経済展望

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石破・小泉・高市の3氏が先頭集団、浮かび上がってきた自民党総裁選の構図

2024-09-06 14:15:11 | 政治

 過去最多の立候補者数が予想される自民党総裁選(12日告示、27日投開票)は、どのような票の分散状況になるのか政界関係者も正確に把握できていないため、マーケット参加者の新総裁・新政権に対する織り込みも全く進んでいない。この「大混戦」の先行きがおぼろげにわかる調査結果が5日、日本テレビから公表された。自民党の党員・党友だけを対象にした調査では、石破茂氏の支持が28%で最も多く、小泉進次郎氏の18%、高市早苗氏の17%と続き、前回の総裁選で岸田文雄首相に敗れた河野太郎氏は3%にとどまっていた。

 この調査から予想できるのは、石破氏が上位2人の決選投票に残る可能性がかなりあり、決選投票では石破氏対小泉氏ないし石破氏対高市氏の対決になる可能性が相応にあるということだ。ただ、石破氏はテレビ番組で金融所得課税の実施に言及し、東京市場の参加者の多くは「石破政権なら株売りか」と身構えた。今後、他社の同種の調査結果も発表されるとみられ、同じような傾向が出るなら、石破氏、小泉氏、高市氏の経済政策を含めた具体的な目玉政策に市場の関心が集まるとみられる。

 

 <先頭の3氏から引き離された他候補>

 今回の日本テレビの調査は、自民党員・党友であると明らかにした全国の有権者1019人を対象を9月3、4日に実施された。

 石破氏、小泉氏、高市氏の上位3人に続くのは、7%の上川陽子氏、5%の小林鷹之氏、4%の林芳正氏、3%の河野太郎氏と青山繁晴氏、2%の茂木敏充氏と加藤勝信氏、1%の野田聖子氏だった。

 この調査は、対象を自民党員と党友に限定しているのが特徴で、一般的な世論調査に比べて自民党員や党友の支持傾向をより正確に表している可能性が高いとみられている。

 

 <地方票で石破氏が小泉氏を30-40票リードか>

 従来の世論調査では、自民党支持者を対象にすると小泉氏が石破氏をリードしている結果が複数あり、日本テレビは番組の中で「石破氏は強い」との自民党国会議員の声を紹介している。

 また、この調査結果を1回目の総裁選での投票に当てはめると、石破氏は小泉氏を党員票で30-40票リードすることになるが「国会議員票でひっくり返すのは難しい」という自民党議員の見方も紹介している。

 この1回だけの調査で自民党総裁選の動向を詳細に分析するのは難しいが、マラソンレースにたとえれば、先頭を石破氏が疾走し、その後ろに小泉氏、高市氏がつけ、それ以外の各氏は大きく引き離されているという構図が描ける。

 今回の総裁選では、1回目の投票で国会議員票と地方票が同数の367票となっている。国会議員票は候補者の乱立で相当、細かく分散される公算が大きく、地方票の優劣が1回目の投票結果を左右する可能性が高いと筆者は予測する。

 

 <石破対小泉の決選投票なら、世代間の抗争も影響>

 今回の日本テレビの調査結果が自民党員・党友の声を反映していると仮定すれば、決選投票には石破氏、小泉氏、高市氏の3人のうちの2人が残る可能性がかなりありそうだ。

 もし、石破氏対小泉氏の対決になれば、建前の政策論争とは別に自民党内にくすぶる「世代間の抗争」が大きなポイントになると予想する。小泉氏は43歳で衆院当選5回。自民党総裁選で当選すれば、米国のジョン・F・ケネディ氏の大統領就任時と同じ若さということも注目されている。

 だが、小泉氏よりも当選回数が多く、年齢のかさんだ自民党政治家にとっては「世代交代」が一気に進み、あっという間に「一丁上がり」の烙印を押されるのではないかという恐怖心も芽生えているのではないか。一気に若返りが進むことへの反発は表向きは表明されないものの、かえって水面下でのエネルギーを溜め、決選投票で小泉氏のハードルになる可能性があると指摘したい。

 

 <石破氏と高市氏の対決なら、アベノミクスの評価も論点に>

 一方、石破氏対高市氏の決選投票になれば、石破氏がアベノミクスによる負の影響の是正を主張していることからみて、アベノミクスへの評価が論点になりそうだ。ただ、日本の政治は過去を振り返っても、真正面から政策をめぐって対立したことはほとんどなく、多くは人脈をめぐる駆け引きだったとも言える。

 安倍晋三元首相が死去して旧安倍派の求心力は低下しており、高市氏の下に集まる安倍氏を慕う人々と、高市氏とは別の道を歩もうとするグループなど様々な動きが散見されている。旧安倍派の動向だけでなく、その他の自民党国会議員が決選投票に残った2人のどちらにつくかを決断した先に、新しい自民党内の勢力図が浮かび上がってくるのではないか。

 

 <小泉総裁なら衆院選の自民勝利を期待するマーケットの声も>

 マーケットはだれが新しい日本のリーダーになるのか、具体的なイメージが固まっていない。一部の市場関係者は、小泉氏が新総裁になって今年中の衆院解散・総選挙になれば自民党が勝利し、政権基盤が安定することで株価が上がることを期待している。

 ただ、小泉氏は6日の会見で、一般ドライバーが有料で客を運ぶライドシェアの全面解禁を掲げたが、それ以外の経済分野におけるめぼしい政策の提案はなかった。このため刺激を受ける経済分野や注目される業種などのイメージはまだ形成されておらず「イメージ先行による衆院選での自民党勝利」が、今のところの買い材料になっているようだ。

 一方、金融所得課税の強化に言及した石破氏に対し、マーケットは「株価の重しになる」と懸念する声が多い。その後、石破氏は金融所得課税の強化は超富裕層が対象と述べたが、市場の持つイメージの修正には至っていないようだ。

 

 <人口減少と低成長、日本の課題は投資の国内回帰>

 筆者は、日本と日本経済が直面する課題には、少子高齢化に伴う生産年齢人口の右肩下がりの減少傾向と0.5%に満たない貧弱な潜在成長率の下で、どのように富を稼ぎ出す力を回復させるのかという問題があると指摘したい。

 この解決には、国内における企業の投資を復活させ、生産拠点を海外から日本国内に還流させるための優遇先を政府が自ら打ち出すことが必要であると考える。

 これからの自民党総裁選でだれが、投資の国内回帰策に言及するのか、国民は注視するべきだ。具体策を伴わずに「成長戦略の強化」だけを主張するようでは、低成長と弥縫策の経済策の実施を繰り返すことになる。


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