市場が注目していた米連邦準備理事会(FRB)の金利見通し(ドットチャート)は、年内の利下げを1回と予想した。3月時点での予想は年内3回だったことから、市場の一部では「9月利下げの可能性は後退した」との見方が浮上した。だが、本当にそうだろうか。パウエルFRB議長の会見から言えることは「9月利下げを排除していない」ということだろう。
<5月CPIは良好、パウエル議長が指摘>
12日に発表された5月米消費者物価指数(CPI)は前年比3.4%上昇と市場予想の同3.3%上昇を下回った。また、スーパーコアCPI(住居費・エネルギーを除くサービス価格)は前月比0.04%低下となった。前月比での低下は2021年9月以来であり、パウエル議長も会見で5月CPIについて「誰もが予想していたよりも良好だった」と述べていた。
また、パウエル議長は「最近の月次インフレ指標は幾分緩和している」と指摘しつつ「控えめな一段の進歩を遂げたが、インフレに対する信頼を高めるにはさらに良好なデータが必要」とも語った。つまり、今後のインフレを含む経済データが徐々に弱含む方向になれば、9月利下げの可能性があることをえん曲に示したといえるのではないか。
<僅差のドットチャート>
実際、今回のドットチャートで年内の利下げ予想は1回になったが、詳細にみると、政策担当者19人のうち、年内利下げなしが4人、1回の利下げ予想が7人、2回の利下げ予想が8人と僅差の結果となっている。この先、インフレ指標が低下していくことが明らかになった場合、9月の米連邦公開市場委員会(FOМC)で利下げ容認が多数派になる可能性があると筆者は予想する。
12日の米株式市場でFOМC結果が発表されてもS&P総合500種とナスダック総合が最高値を更新した背景には、9月利下げに対する市場の根強い期待感が存在することも示したかたちだ。
<8月ジャクソンホールでのパウエル発言に注目>
もし、インフレ指標が順調に低下する気配を示せば、8月に行われるジャクソンホール会合(米カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム)でのパウエル議長の発言への注目度が一気に高まるだろう。そこでパウエル議長が何らかの示唆的な発言を行えば、市場の利下げ折り込みが急速に進むことになると思われる。
利下げの可能性が大きくなるにつれて、米株への追い風は強まるだろう。日経平均は3万9000円を挟んで一進一退となっているが、いずれ米株の堅調さが波及する展開になる公算が大きいと予想している。
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