一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

保守寄りの論客・野田新代表で自民党総裁選に影響も、織り込み進まぬマーケット 

2024-09-24 13:00:54 | 政治

 立憲民主党の新代表に野田佳彦・元首相が選出された。27日に投開票される自民党総裁選にも影響が出ると筆者は考える。早ければ10月27日にも実施が予想される次の衆院選を前に、保守寄りの中道路線を掲げる論客の野田氏と互角以上に渡り合える新総裁はだれか、との視点で投票権を行使する自民党国会議員が少なくないとみられているためだ。

 マーケットは混戦の自民党総裁選の結果を絞り切れていないが、衆院解散・総選挙から投開票日にかけて日本株が上昇した過去のケースを踏まえ、どの候補が当選すれば何が衆院選のテーマになって、どういう銘柄が買われるか証券業界ではシミレーションが進んでいるに違いない。ただ、今回は首相経験のある野田氏も新首相の候補の一角に入れておく必要が出てきたかもしれない。

 

 <自民には難敵、世襲議員とカネで追及も>

 23日の臨時党大会での代表選では、野田氏ら4人による1回目の投票で過半数を獲得した候補者がおらず、決選投票で野田氏が枝野幸男・元代表を破って新代表の座を射止めた。

 野田氏が勝利した背景には、近づく衆院選で勝てる「選挙」の顔としての野田氏の強みが意識されたことがあった。立憲民主党の弱点と言われる政権担当能力への疑問点を元首相の経験で打ち消し、外交・安全保障政策の現状維持を掲げ、これまで自民党を支持してきた「穏健保守層」を自民党から奪い取ることを野田氏は狙っており、政治とカネの問題で支持率を落としている自民党にとってはかなりの難敵と言えるだろう。

 また、世襲の制限では、政治団体の資金は最大5000万円まで親から子に名義変更しても非課税になるという現行法の構造に着目し、運用によっては相続税の抜け穴になりかねない点に野田氏が着目している点も見逃せない。世襲議員が多い自民党にとって、世襲の制限を真正面から掲げる野田氏は、非常に戦いにくい相手になる可能性がある。

 

 <衆院選間近、自民・立民とも選挙の顔意識>

 これまでの自民党総裁選で、野党党首選びの結果が自民党内の動きに影響を与えたというケースはなかったと言える。その点で、今回の自民党総裁選は衆院選直前で選挙を意識せざるを得ず、立民と同様に自民党も「選挙の顔」としての機能が優先事項になるだろう。

 さらに論戦力で定評のある野田氏と互角以上に戦える能力があることや、穏健保守層などより中道寄りの有権者にどの程度、支持の手を伸ばせるのかという点も意識されることになったと思われる。

 

 <日本テレビ調査、1位石破氏・2位高市氏・3位小泉氏>

 日本テレビが9月20日ー21日に実施した自民党員・党友を対象にした緊急電話調査(1007人が回答)によると、石破茂・元幹事長が31%の支持を得て1位となり、次いで高市早苗・経済安全保障相が28%で2位、小泉進次郎・元環境相が14%で3位となった。

 この結果を368票の党員・党友票に換算すると、石破氏が121票程度、高市氏が110票程度、小泉氏が54票程度になるという。日本テレビの取材では、国会議員票を加えると、石破氏が160票程度、高市氏が140票超、小泉氏が110票弱という情勢と伝えている。

 もし、この調査のすう勢が1回目の投票結果に出た場合、決選投票は石破氏対高市氏となるが、上記で指摘したように、野田氏が立憲民主党の新代表になった影響がどのように出てくるのかが1つのポイントになりうると考える。

 高市氏の政治的主張が「岩盤保守」に強く支持される一方、穏健保守層の取り合いで野田氏に押し込まれるのか、それとも互角の戦いに持ち込めるのか。この点を決選投票で自民党議員がどのように判断するのか、ということがクローズアップされるだろう。

 他方、石破氏が勝利した場合は、野田氏との主張の差が小さいため、かえって自民党の特徴を訴えることが難しくなるとの指摘も一部で出ている。

 

 <能登大雨被害と補正予算編成、野田氏の主張に自民党はどう対応するか>

 野田氏は24日午後の立憲民主党両院議員総会で、幹事長に小川淳也前政調会長(53)、政調会長に重徳和彦衆院議員(53)などを起用する新執行部の人事案を提示し、承認された。小川氏と重徳氏は同党の次代を担う中堅として期待されており、刷新感を狙った登用とみられている。

 このように野田氏は、かなり「したたかに」に衆院選を戦く態勢を整えようとしているだけでなく、石川県能登半島での大雨被害を受け、2024年度補正予算の成立を優先するよう早くも主張。早期の衆院解散に傾いている自民党をけん制している。

 これに対してマーケットは、新総裁がだれになるのか絞り込めておらず、衆院選前の「与党勝利と経済対策を期待した株買いは出てきていない」(国内証券関係者)という。

 織り込みが進んでいない分、逆に27日に新総裁が選出された後、マーケットが急激に変動する余地もありそうだ。

 終盤情勢をめぐる各種調査結果や野田新代表の登場など、党内を駆け巡る様々な思惑の中で自民党総裁選は27日に結果が判明する。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 市場混乱封じた植田総裁、賃... | トップ | 中国株上昇は一時的か、利下... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治」カテゴリの最新記事