飼い猫の遠吠え

とにかく気持ちは前向きに寝る間を惜しんでほふく前進・・・

雁坂峠ぐるりっぷ(5)

2008-09-15 23:51:14 | 山登りのたしなみ
その5・雁坂峠より



雁坂峠で思う存分休憩した後は、今日の宿泊地、雁坂小屋に向かいます。ちょっと長めの下り坂を歩いて500メートル、静かなたたずまいの雁坂小屋に到着です。
ガラガラとドアを開け、小屋の中に呼び掛けます。

「す、すいませ~ん」


「あの~、テント・・・泊まりますよ」


いくら呼びかけても返事がありませんので、不在のようです。

取りあえず、先にテントでも組んでからまた来ようと、テント場に向かいます。噂のトイレ国道を通過して・・・と、ここらへんですかね。


あちらの建物が噂のトイレ


雁坂トンネルが出来るまでは、車を通すような道路工事も出来なかったため、山梨と埼玉間のこの区間は「開かずの国道」と呼ばれておりました。そして、この雁坂小屋と黒岩尾根を通過するこんな場所に国道140号線が通っておりまして、その途中の道路内にトイレが敷設されていたこともあり、別名「トイレ国道」などと呼ばれていたようです。国道に私設のトイレが通っているというシチュエーション、何だか面白いですね。


雁坂小屋の奥、道路わきの小高い場所がテントスペース
奥にもあるのですが、50張・・・どうやるんでしょ



そのテント場で、あちこち探してみたものの、古礼山で別れた居眠りおじさんのテントがありません。最後に別れた時には、先にこちらに向かわれていましたし、自分は亀の子ペースでしたから、抜かれることは無いはずなのですが・・・また、古礼山で寝ていたのかもしれませんね。

地図には50張となっていますが、どうやったらそれだけ張れるのか、他にも場所があるのかもしれないと思って探索しようとしたら、雨が降ってきてしまい、とっとと小屋そばの真っ平らな小高い丘にテントを張る事にしたのでした。


雨の中、手早く設営をしたかったのですが
もたもたは相変わらずで、汗だくだから濡れてもいいや的な感じに・・・


降り出した雨に焦りつつも、ようやくオタオタせずに組み立てられるようになってきました。時折白く光って雷の存在を匂わせてきていましたが、音からして、秩父の向こうの方から来る気配はありませんので、ちょっと安心です。
しばらく、テント内でモゾモゾと荷物整理をしながら過ごしていると、ドドドッといきなりの豪雨が襲ってきました。あらら、また雨のテント泊かと思いつつ、とっとと、トイレと水の補給がてら小屋に挨拶に行こうと、傘さしながら向かいました。



雨の雁坂小屋
小さめの小屋かと思いきや、奥行が結構あるようです



有難いことに水が出ておりました
ここが使えないと、下の水場まで歩いて取りに行かなければいけなかったので助かりました




その水場には、見慣れたお方が見慣れない格好でいらっしゃいました。そう、居眠りおじさん、三度登場です。ただ、パンツ一枚という不思議ないでたちで、挨拶してくるではありませんか(ヲイヲイ)。

今日は宿泊者がいないため、管理者の方はいらっしゃらないようで、この小屋は無人のようです(登山者のために、一部開放)。
おじさんは、こんな土砂降りの中でテント設営をするのが面倒ということで、小屋泊を選択するとのことでした。室内を見ると、洗濯物という名のウェアがはためき、ザックの中身もすっかりポジションを確保されて、すっかりおじさん色に彩られておりました。

※ こちらの小屋は常駐ではありませんので、こういった場合の宿泊費は、2000円を別途郵送することになります(と書いてありました)。

自分は、テントを立ててしまいましたし、折角の独り占めをお邪魔するのも悪いかと思いまして、宿泊場所を変更するのはやめましたが、雨の中、狭い場所で一人チマチマと食事するのは寂しいので、夕食は、小屋でご一緒させて頂くことにしました。


ご一緒といっても、自分の方でおすそ分けできるものもなかったのですが・・・


今回、同じコース取りで、幾度もすれ違っていましたが、「居眠りおじさん」と勝手に命名してしまう程、寝姿ばかりでしたので、きちんと話をしたのはここで初めてとなりました。
何でこんなマイナーコースを歩いているのか聞いたところ、何でも今は秩父を繋いで歩いているそうで、今回は、前回終了場所の笠取山から歩くことになっていたとのこと。ちゃんと前回終了場所まで戻ってからスタートするという律義っぷりに感心してしまいました。実際は、もっと驚いた話も沢山ありましたが・・・。
話の内容も、こんなコースに来る方ですから、自分がついていけないアルプスのようなメジャー級の山話ではなく、この界隈の山話が中心となって、夕食もまた楽しい味わいも加わり、時間を忘れたひと時となりました。

自分の方が先に、身体的に限界が来たようで、暗くなりつつある中、テントに戻って寝ることにしました。雨も降ったりやんだりを繰り返し、明日晴れればいいなと思いつつ寝床につきました。

今回の山行で1つ忘れ物をしてしまいました。


お酒です


おそらく、ここにいらっしゃる山ヤの方からすれば、幾ら重量がかさばろうが背負ってみせます的な必須アイテム。忘れるなんてとんでもない、気付いたときには即下山、という声も聞こえてきそうな、死活問題ともなるアイテムではないかと思います(そうなのか?)。自分もザックを開けてそりゃもうビックリです。確かに、行きのコンビニに立ち寄れなかった時点で、缶ビール買えなかったことは分かっていましたが、途中に笠取小屋に立ち寄ろうと考えていた目的もビール確保だったのですが、疲れですっかり忘れておりました。それでも、食料の中に焼酎や梅酒の類を入れていたと思っていたのですが、普段の日に飲んでしまっていたようです(ヲイッ)。

それでも、今日は疲れているので、お酒が無くてもグッスリ眠れると思い、眠りにつきました。

・・・雨の叩く音が止んだ為なのか、眼が覚めました。
うーん、結構良く寝たなぁ、そろそろ出発準備か、と思い目を覚まし時計を見ると、

22:00

ウダウダして眠りについてから、まだ3時間30分しか経過していません。職業病でしょうか・・・。

折角起きたので、トイレに行っておくかと、外に出てみると、遠方では、まだ白く雷が光っておりました。こんな時間でも光るんだなぁと感心しながら、自分の頭上をみると、満天の星が輝いていました。うーん、これが山のテント泊の醍醐味かぁ・・・。見ていると、どんどん星の数が増えていくようで、目の悪い自分にもお腹いっぱいな星空を味わうことが出来ました。
と、暫くライトを消して星空を満喫して、さてさて、寝るまえにトイレに行こうとライトをつけると、

前方に光るモノが・・・

どうやら鹿のようです。夕方あたりに泣き声を結構聞きましたが、こちらの方にもやってきているようです。トイレ前まで来た時に、別の鹿もいたようでガサガサッという跳んで逃げていく音を聞いたときには、正直、ビクッとして、「ウヘェ」なんて変な声が出てしまい、武器がないかとトイレに駆け込んでしまいました(ダメなんです、そういうの)。やっぱり一人きりというのは、怖いものです。

それから、暫く眠ることが出来ず、ウトウトとして寝たり起きたりしていました。やっぱりお酒がないと、どこでも寝られる自分でも、何も気にせずに寝るのは結構大変だなぁと思って、幾度目かの覚醒をむかえたのが 1:30。

外で妙な音がし始めました。

周囲でガサガサとこのテントの周りを回る音がするのです。
また、鹿か? と思い、追い払うつもりでテントの壁を叩いてみましたが、どうも去る気配がありません。うわぁ、もしかして「熊」とか出ちゃった? と怯えつつ様子を探りますが、どうも、気配は無いものの音だけがするような感じなのです。ウロウロする音と、何故かコンビニビニール袋のような音。あらら、食べ物かゴミのビニール取られちゃったかな? とも思いましたが、食べ物もゴミもビニール袋に入れていませんし、横においてあります。熊さんが、どこからか調達したのかな?

う~ん

と、もう想像するだけでは埒があかないので、勇気を出して外に出てみました。

・・・何もいません。

・・・音もしません。

月のない星空が綺麗に瞬いて、周囲には誰もいないようです。


しばらく、周囲を眺めてみて


・・・うん、風だな。

そう結論付けて、テントに入ってから聞こえてきた音は気にしないことにして、寝ることにしました。必死で。意地でも。





と、気が付けば、予定起床時間の4:00 を過ぎて、すでに 5:30。

身体の節々には激痛を感じつつ、2日目の山行が始まります。

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19 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ぜいぜい)
2008-09-16 16:48:54
え、酒なし!
軽量化しなくちゃしなくちゃと思っても、そこだけは越えられない乙女の一線デス・・・

へえ、雁坂峠って歩く国道だったのですね。
なんか、埼玉のこと、勉強になる!
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居眠りおじさん (小太り親方)
2008-09-16 18:14:18
ツワモノですね、居眠りおじさん。
パンツ一丁のオジサンって、どこかで歩荷されている方にもいませんでしたっけ?

街中だったらケーサツ通報でしょうが、山の中だと自然に受け入れられてしまうんですね、何故か。
最初の登山で「居眠りおじさん」に会ったら、山のヒトって皆こんな風?と刷り込まれてしまうのでしょうね。
酒を忘れるヒトも、「居眠りおじさん」も山じゃ珍しいヒトなのに(爆)
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ツワモノ (かいねこ@帰り道)
2008-09-16 22:27:41
>小太り親方さん

自分には、到底真似の出来ないあの頑張り。眠くても山に行きたいという執念をとても感じました。この日は天気も良かったので、いいお昼寝日和だったと思いますよ。自分も出来る事ならと羨ましかったですしね。

あ、パンツでしたが、ちゃんと?上は着ていました(ちゃんと書かないと、これじゃ本当に変態ですものね)。でも、最初、なんだこの人、小屋番さんだったのかと思ってしまいました。向こうもそう思ったようですが…。
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乙女の… (かいねこ)
2008-09-16 22:48:59
>ぜいぜいさん

絶対に乙女はそこでは悩みませんって(笑)。それこそ、乙女になる一線を超えられないのは、それがネックではないかと(爆)。
でも、お酒無しは、何だか一日が締まらない感じがしてしまいますね。

雁坂トンネルが開通したのも、まだ10年前。近年まで歩きしかなかったとは、なかなか想像出来ませんね。最初の計画では、雁坂峠を国道上に通す予定だったそうですが、道の地盤などの関係で今の形となりました。こうやって静かに歩けるのも、計画変更のおかげなんですよね。

そうそう、この記事のオマケ、お気付きになった方は、いらっしゃいますか。
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Unknown (Unknown)
2008-09-17 00:43:03
>パンツでしたが、ちゃんと?上は着ていました
ぎゃー。そのほうが、ずっとやばいきがするんですけど~

なんて、そんなことはさておき

いいレポですねえ。わたしは、最初のテント泊のころって仲間と一緒でしたので、こういう経験ないんですよ。それより、なによりテン場にテントひとつっきりなんでしょ? これ、きますねー。夜の動物の気配って、想像力どんどん翼がはえちゃって、どこまでも飛んでく感じで、もお、たいへん! 
でね、なんにもいなかったんでしょ? てことは、あれがきてたんだろうね。うん。まあ、そういう現実も受け入れないとね、山やってくなら。
うんうん。
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Unknown (ま○く○)
2008-09-17 00:45:03
す、すみません。
わかっていると思いますけど、上の名なしコメント、わたしです。
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Unknown (アランチャ)
2008-09-17 01:19:20
かいねこさん、こんばんは。
>おそらく、ここにいらっしゃる山ヤの方からすれば、幾ら重量がかさばろうが背負ってみせます的な必須アイテム。
この件、お昼休みに職場で吹き出しそうになりました。(笑) 危険極まりないですわ~。^_^;

車の通れない国道が、全国には何箇所かある、という話は聞いたことありますが、ここもその1つだったのですね。
で、この記事のおまけって何でしょか???
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山の神 (かいねこ)
2008-09-17 02:04:28
>ま○く○さん

>>パンツでしたが、ちゃんと?上は着ていました
>ぎゃー。そのほうが、ずっとやばいきがするんですけど~

おおっ、そう考えると、登山ウェアにパンツ・・・確かに萌・・・もとい、危険な格好ですね(爆)。

それはさておき。

お褒め頂きまして光栄です。
登山暦は、無駄にそこそこになってしまいましたが、新人としてテント泊の使い方を一から勉強している状態です。今回は、テン場にテントひとつっきりでしたが、だだっ広い場所にポツネンとか、鬱蒼とした森に囲まれた場所でなくて本当によかったですよ(涙)。

あっ、さすがまきくまさん。見られましたね。
今思えば、こういった出来事も考え方一つで変わってしまうのかもしれませんね。
一人で不安な自分のために寂しさを紛らわせるために集まってくれたとか、安全に山行を続けられるように見守ってくれているとか、コンビニで缶ビールを買って来て寝ている隙に置こうとしてくれていたとか・・・。山の神様と考えてみれば、そんなに怖くないのかもしれません。
恐らく皆さんにとっては、数限りなく体験されていることでしょうから、第一歩を踏み込んだということですね。なるほど、なるほど。

※ でも、この先の某避難小屋では、昼間だというのに・・・(激汗)。
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国道 (かいねこ)
2008-09-17 03:03:38
>アランチャさん

ぜいぜいさんのコメントを見てお分かりの通り、全くの誇張ではなさそうです(笑)。
恐らく、一升瓶を容器に移すなんて風情が無い派の方々ばかりですから。そんな事ばかり言っているから、某小屋の山ヤの方には、飲兵衛のイメージが憑いてしまうんですよ。危険ですね。

ここもその通れない国道の一つだったようですね。他にも、尾瀬の自然保護のために工事が出来なくなった国道401号線(沼山峠)、登山道に国道標識がある国道289号線(甲子峠)などは、有名どころですね。他にも探してみると、いろいろな理由で中途半端に止まってしまった国道も多々あるようですから、こういった場所を歩いてみるのも楽しいかもしれませんよ。
そうそう、国道話でしたら、プロフェッショナル¥さんがいらっしゃいますし(笑)。

この記事のおまけは、空白部分にありますよ。
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やっぱりテント泊じゃーん (まゆ太)
2008-09-17 12:30:15
ねこさん、いい旅だったじゃないですかー。
酒なしはちょっとかわいそうでしたけど、まっ、これも思い出のスパイスってやつですかね。だけど、日帰りのときはお酒たくさんもってるのにねー(笑)

ここの縦走路、とってもあこがれです。奥多摩から奥秩父、の途中ですよね?こうやって、1泊で来てみるのもいいかも。さすがに1人だと不安だから、国道ネタで相方を釣るしかないなぁ(笑)

ほんと、おつかれさまでした!いいレポでしたよん。
(こんな感じで、サイテイレポも書いてほしいなぁ。ぶつぶつ。)
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