Ann Whitehead. 2012. Waratah House. Michael Joseph Penguin Books Australia: Australia.
先日レビューしたGhost Gum Valleyに続いてまた豪州を舞台にしたヒストリカルです。
Waratah Houseという美しい邸宅の使用人達のドラマで、植民地時代から1940年代頃まで、2世代に渡ったお話。
前半は、少女であるMarinaが家族とともに英国から植民地オーストラリアへ旅たつところから始まります。
しかし船上で疫病が発生し次々に乗客が亡くなり、Marinaも両親を亡くします。
同じ病で息子を亡くしたある親切な男性がMarinaを引き取りますが、妻のSarahはこれをよく思わないどころか、あからさまに言動に表し、Marinaを萎縮させます。
シドニーに着くとこの男性も事故に合い亡くなってしまい、Marinaの後見人は妻Sarahとなります。
しかしSarahは息子と夫が死んだのはMarinaがもたらした呪いのせいだと思い込むようになってしまい、Waratah Houseという大きな邸宅で使用人として働くことになっても、Marinaが周りの人々に好かれて健やかに成長していくのに対し一層憎しみが深まります。
一方、Marinaは料理人Cookieに気に入られて本当の母娘のような関係を築き、愛されて育ちます。
この美しい邸宅にも愛着があるし、やがてはメイド、そして料理人となる自分の役割にも責任感を持つようになっていきます。
しかしMarinaは使用人としてしてはいけないことをしてしまいます・・・。
その屋敷の跡継ぎの息子と恋に落ちてしまうのです。
後半はMarinaの娘Emilyが成長する様子。
Waratah Houseは新しい主人を迎え、EmilyはSarahの息子と娘と、近くの屋敷の息子との4人で仲良く育ちました。
しかし思春期を過ぎると、実らぬ恋や嫉妬、ライバル心などの感情のせいでこの4人の友情に亀裂が生じ始めます。
そして歴史は繰り返されます。
SarahのMarinaに対する憎しみや「呪い」の思い込みが自動的にEmilyへと移行するのです。
しかしEmilyは自分の幸せを守るため、ありとあらゆる逆境に耐え抜いていきます。
美しい邸宅Waratah Houseで働いた使用人達の2世代に渡る人間関係、ロマンス、血のつながりのない「家族」に対する信頼などのテーマが盛り込まれており、登場人物一人一人の顔が浮かぶかのように深く描写されています。
これもまた印象深い1冊です。
でも終わり方が気になりました。
私のホリデー中に「観光よりもいいわ」と思いながらどんどん読み進んだのに、まるで続きがあるかのような中途半端な終わり方で、最後のページに「つづき」の文字がないか探したほど。
あれだけ苦しい思いをしてきた主人公Emilyが最後に幾分かのリベンジを間接的にしか果たし得なかったことも生ぬるいし、Emilyに片思いをしていたジプシーの男性のその後や、Emilyの実の父親のことなど、話の根幹の部分とはあまり関係ないとはいえ、母MarinaやEmilyの人生と係わり合いのあった人たちのことなのでその辺の話を広げてもよかったのではないかと思わずにはいられません。
最後が気にならなければハートマーク4つあげてたところだけど、尻すぼみだったので3つに減りました。
でもこの時代設定は現実逃避にはピッタリだしで、私は楽しめました。
Emma Wildes. 2010. My Lord Scandal: Notorious Bachelors. Signet.
Alexancer St. Jamesは家宝の宝石を盗み返す(?)ため、Lord Hathawayの屋敷に忍び込みます。
泥棒を働くのだから、当然屋敷内には誰もいないと思っていたのだけど、Lord Hathawayの娘Ameliaがいて、見つかってしまいます。
結局Alexanderは家宝は見つけられなかったけど、美しいAmeliaからキスを一つ奪って帰ります。
数日後、そのキスを忘れられずにいたAmeliaは、あの謎の泥棒が実はロンドン社交界一の女たらしで有名なSt. Jamesだと分かり、また一層興味が惹かれます…。
うーん、つまらんかった。
Amazonなどネットのほうでは盛り上がってたので、私もこれを買ってから読むまで楽しみにしていたんだけど、途中でつまんなくなって終わらせるのに苦労しました。
日本に里帰りしてる時に読みました。
ヒーローもヒロインも印象に残っていなければ、お話も記憶にほとんど残っていないくらい何も起こらない1作でした。ただ、「読んだ」という記憶があるだけ。
母が息子の世話をよくしてくれていたので、読書をする時間はあったけど、やっぱり子供を抱えていると自分の時間というのは制限されてしまいます。
そんな時にこんなつまらない本を読むとすごく時間を無駄にしてしまったようで、くやしいほど。
この"Notorious Bachelors"シリーズ、私は多分残りは読みませーん。
私の自由時間を返せ~
あちこちで絶賛レビューを見たのでずーっと読みたかった一冊。
でも期待しすぎたかな?いい作品だったけど、私からは満点とまではいかないですねー。
豊満な体でメガネの奥のパッチリ目がかわいいCaroline Torringtonは、自尊心が低いため、自分はデブで全く魅力のない女だと思い込んでいます。
なので、幼なじみでもあるLord Lucas Foxhavenが彼女の事をものすごくセクシーで魅力的だと思っているなんて思いもしません。
Lucasは父と長年の確執がありましたが、ついに堪忍袋の緒が切れた父が、Caroと結婚しないとLucasの生活費を絶ち、遺産相続金額も大幅に減らすと脅します。
本ではあせったLucasが強引にCaroに結婚を迫るシーンから始まっています。
こんなに迫られたらとドキドキ
でも結婚の理由を告げられ、形だけの結婚だと言うLucasに対し、昔からほのかに彼に思いを寄せていたCaroはがっかり。
いざ二人の結婚生活が始まると、LucasはCaroのセクシーな体や、自分では気づいていないけど昔からあった彼女に対する思いが日に日に強まるけど、自分で「形だけ」だと約束してしまった以上、紳士らしくその約束を守らなければいけないと苦悩します。
CaroはCaroで、「形だけだ」と言われたので、極力彼に迷惑をかけないよう切ない努力をします。社交界ではLucasのいとこの協力を得て舞踏会やソワレへ出席。
が、このいとこの策略で、Caroはスキャンダルを起こし、Lucasとの結婚生活に絶望感も抱いていたCaroはフランスへ行ってしまいます…。
本の裏表紙に書かれているあらすじでは、Caroは「誘拐されてしまう」とあります。
私が読んだ感じでは、Caroは半ばだまされた感じもあったけど、Lucasに対する失恋の痛手からくる感傷的な気持が強かったので、自らの意志でフランスへ行っちゃいます。
お話全体としては、お互い惹かれあっているのに、全体図の断片しか見ていないことからくる思い込みのせいで、お互いの一言一言を勘違いしてしまう…の連続。
そこへLucasに嫉妬しているいとこの企みのおかげで、Lucasに愛人は本当はいないのにCaroはいると思い込んだり…とCaroとLucasの距離は離れていく一方。
なので読ませるものはあるんだけど、こういうパターンのお話の欠点って、最後まで誤解が解けないから、最後まで二人のケンカばかり読んでいなきゃいけない…。
最初のほうは特にLucasのCaroに対する態度や扱いがひどい…。
LucasがCaroを連れ戻しにフランスへ渡り、彼女をくどくあたりでやっとロマンチックになってきます。
あちこちで絶賛のレビューがあり、私がいつも行くロマンス小説専門店にもこれをオススメするお客さんがいたらしいです。
なので店員さんがドレドレと読んでみたところ、「なぜもっと早く教えてくれなかったの!?」と絶賛レビューが。
うーん。
充分楽しめるけど、勘違い・すれ違いのパターンのお話で特に飛びぬけて良いってわけでもないってのが私の印象でした。
(ちなみに、表紙の絵はスキャンダラスな人生を生きたBlessington伯爵夫人)
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今回もトリロジーかな?
詩人のバイロンとは関係ないByron brothersシリーズです。
Story:
Dialogue:
Hero:
Heroine:
Sensuality:
両親を亡くし天涯孤独になったMeg Amberleyは叔母の家に向かう途中で吹雪にあい、Lord Cade Byronの屋敷へ避難することになります。
今でも心も体もひどい戦争の傷を負っているCadeは田舎で一人ひっそりと暮らしていました。
召使達はいたといえども、若い男女が何日もシャペロンなしで2人だけで過ごしたので、このことが世間にばれればMegの名誉は汚されてしまいます。
紳士なら責任を取るために結婚を申し込むところですが、傷のせいで自分を卑下しているCadeは自分は誰の夫としてもふさわしくないと信じ込んでいるので、別の解決法を思いつきます。
Cadeの婚約者としてMegをロンドン社交界にデビューさせ、夫を見つけるチャンスを作ろうというのです。
吹雪でH/Hが同じ場所に閉じ込められ何日か一緒に過ごすというのは、こないだ出てたアンソロジー"It Happened One Night"や、Mary Baloghの"Simply Unforgettable"などで使われたばかりのプロット。プラス、傷ついたヒーローの心を癒すヒロイン。
この新鮮味に欠けるプロットをカバーするほどロマンスは情熱的でもなければ甘~くもなく…。
が、アマゾンでは高評価。
私からも全体的には楽しめるハートマーク3つ。
でも前回のTrapトリロジーが良かったので、それに比べると今回の1作目は印象が薄いです。
Tracy Anne Warren. 2007. His Favorite Mistress. Ballentine Books.
Mistress Trilogyの最終巻。期待を裏切らないものになってます。
Story:
Dialogue:
Hero:
Heroine:
Sensuality:
1作目のH/HであるRafe PendragonとJulianaを悩ませた悪者St.Georgeという貴族がいたのですが、その娘Gabriellaがこのトリロジー最終巻のヒロインです。
ヒーローは1、2作目のヒーロー達と友達のTony Black、Wyvern公爵です。
何も知らず父親を尊敬して育ったGabriellaは一方的にPendragonが自分の家庭を破壊したと思い込んでいたので、復讐心に燃えていました。
母親が亡くなりついに一文無しになってしまうと、これも全部Pendragonのせいだと信じ、Pendragon暗殺を企み彼の邸宅へ侵入。
が、Pendragonだと思い込んで銃口を向けたのは彼の親友であるTonyでした。
当然おどろいたTonyですが、冷静になんとかかんとかGabriellaを説得し、Pendragonの二人でGabriellaに真実を話します。
Gabriellaは混乱した気持ちのまま一旦は昔の生活に戻りますが、しばらくすると、とうとうお金も住む場所もなくなってしまいます。そして当初の(実は叔父である)Pendragonの申し出を受け、彼に引き取られることになります。
親友二人が次々と結婚し子供ができて幸せな様子を見てちょっとうらやましい感じもするTonyですが、それでもまだまだ独身の生活を満喫していて結婚なんてする気はさらさらありません。
初めて会った瞬間からGabriellaの勇気と明るさと美しさの虜になってしまったのですが、でも親友の姪でもあるGabriellaを自分のものにするということは、結婚しかありません。なのでなるべく距離をおくようにするのですが、彼女の愛くるしさに抗えずキスをしてしまうと、Tonyの心のガードは緩み始めます…。
最初の展開がどんなのかをどこかのレビューで読んで、「殺す!」と意気込むヒロインってどうなの?と思いましたけどね。 勘違いがわかったら、ちゃんと健全なヒロインになってました。父親の犯した罪を聞くと、すぐに自分が間違ってたことが分かりGabriellaのPendragonに対する復讐心は消え去ります。よかったよかった。
でもあれだけ「大好きだった」父親の罪業を聞かされても、Gabriellaのこころの傷などは結構あっさりと済まされています。
後半はおもしろくなるから「別にいいか」とも思いますが。
ただ、この後半もTonyとGabriellaのコミュニケーション不足でちょっとダラダラしてしまっていると感じるかもしれませんが、それでも全体的には飽きさせず楽しめるお話に仕上がっています。
Book1. My Fair Mistress
Book2. The Accidental Mistress
T.A.Warrenは前回作のTrap Trilogyでも人気を得ました:
Book1. The Husband Trap
Book2. The Wife Trap
Book3. The Wedding Trap
Mistressトリロジーの2作目。
Book1: "My Fair Mistress"
Story:
Dialogue:
Hero:
Heroine:
Sensuality:
Lily Bainbridgeの金銭欲の深い義父は、彼女を地元のこれまた金銭欲が深くヘンタイ郷士と結婚させようとします。Lilyはそんな結婚と義父から逃れるため、ある嵐の夜、自殺を装いロンドンへ逃亡します。
義父は知らないけど、Lilyの祖父が残した財産を相続してロンドンで生活するためです。
男の子の格好をして旅をする途中、ある宿屋でVessey侯爵と出会います。
Ethan Andarton(Vessey)は、ちょうど、独身生活に終止符を打つために、昔からAndarton家と係わり合いが深い伯爵家の娘と「結婚を考えている」と口約束をして、ロンドンへ帰る途中でした。
宿屋で飲んでいると、ふと、ある少年に目が留まりますが、数秒で女性だと見破ります。
男の子に扮したLilyが酔っ払いの大男にからまれているところを助けてあげた後、Vesseyは彼女の変装に気づかないフリをしながら、夕食をおごってあげます。
結局、変装を見破られたあともLilyはVesseyには全て話さず、ロンドンで別れます。
ほんの短期間ちょっとおしゃべりをしただけだけど、Lilyのように一緒にいて楽しい女性とは会ったことがないなと実感するVessey。ロンドンに着いたらもうこれっきり会えなくなるなんて嫌だと、なんとかして本名を聞き出そうとしたり、身元を知るヒントを得ようとしますが、Lilyは絶対に教えてくれません。
別れ間際、もうこれで二度と会えないなら二人の出会いを絶対に忘れられないものにしてやるんだと、Vesseyは情熱的にLilyにキスし、Lilyはロンドンの霧の中に…。
Lilyと別れた翌日、召使がつきとめた彼女の滞在先のホテルを朝一番にVesseyは訪れますが、彼女はもう去った後でした。
これで彼女に関する手がかりは何もなくなってしまいます。
そして数週間後、二人の驚いたことに、友人のパーティーで再会。
Lilyは祖父の財産を相続し、お金持ちの未亡人Mrs.Smytheとなっていました。もちろん、Vesseyのことは忘れたくても忘れられずにいたので、びっくり。
そしてVesseyは今度こそ絶対に彼女をどこへもやらないと硬く決心します。
T.A.Warrenは読んでいて楽しいです。
今回の作品では、特に二人が出会ってロンドンで別れるまでのやりとりの部分。
それから身分が違う二人が再会するまでがもどかしく感じたけど、「どこでどうやって?」と次の展開が気になるからだったのかも。
口約束だけ(とVesseyは気楽に構えていた)の婚約者の存在が、常にVesseyと読者の頭の隅でチクチクと気になりますが、やはり最後の最後でこのVesseyのいい加減さでみんな痛い目に…。
全体的に予測可能なストーリーで目新しさに欠けます。そのせいか、お話の進み方も遅いですが、でも、十分楽しめます。
私は本が置けずにほとんど一気に読んでしまいました。
次はトリロジー最後の"My Favorite Mistress"で、1月出版予定だったと思います。
一生独身を誓ったTony Black(Wyvern公爵)と、陽気なGabriella St.Georgeとのロマンス。
Warrenの新シリーズ。Mistressものでいくようです。
まず最初のお話はオススメ。次も期待。
Story:
Dialgoue:
Hero:
Heroine:
Sensuality:
金融業者であるRafe Pendragonは無慈悲で厳しい人柄だと誰もが口を揃えて言うほど恐れられ一目置かれている人物。
美しい未亡人Lady Juliana Hawthorneは、ある日かわいい弟が借金まみれだということがわかり、愕然。なんとかして助けてやらないと、弟自身も実家の邸宅も失ってしまうかもしれません。
そこでJulianaは、借金返済の期限を延ばしてもらうか、双方にとって何かいい解決法を見つけることができればと、弟が金を借りたRafeのうちを訪問します。
うわさ通りの冷酷な態度でRafeは、自分の所有物でできる限り払うからというJulianaの懇願を受け入れません。
でも、Julianaは引き下がることができません。
Rafeは一目見た瞬間からJulianaの美しさに惹かれ、性的にも魅力を感じていたのに、彼女の勇気があり家族思いの行動に心を打たれます。
同時に、彼女にこんな真似をさせた彼女の弟にも腹を立てます。
それでも、なんとかしてやりたいという気持ちを抑えながらも、Julianaを家に帰すほかありません。
なにか、女性が聞けば逃げ出してしまうような常軌を逸したことを言えば、Julianaは帰るんじゃないかと思い、「自分が持っているもので払う」と言った彼女に対し、Rafeは「じゃ、愛人になってもらおうか」と虚勢を張ります。
そして、Rafeが(嬉しくも?)びっくりしたことに、Julianaがそれに同意したのです。
こうして二人の(Hotな)逢瀬が始まります。
そしてRafeもJulianaもお互いに、この契約が切れても一緒にいたいと思い始めた頃、Rafeの過去にあった出来事のせいでJulianaの命が狙われることになる可能性が高まってきます。
Rafeは、Julianaを守るか、それとも彼女との関係を断ち切り距離をおくかの決断に迫られます。
今回はネタばらしになってしまうかもしれないので、あまり詳しい感想は書きません。
前半、二人が関係を築いていく様子も、後半の展開も良かったです。
H/Hの心情もよく描かれていていました。
H/Hのハートマークが満点にならなかったのは、自分の中のお気に入りキャラと比べてしまったからです。
他のお話で自分がすごく気に入ったH&Hが何人かいますが、それと比べなかったら今回のH/Hは満点でもいいと思ってます。
Sensualityですが、WarrenってこんなHotなものが書けるんだとびっくり。
これもハートマーク4つあげてもいいなと後から思ったのですが、やっぱり他の私がSensuality4をあげたお話に比べると、今回のは4つには満たないかな~ということで、読後最初の印象どおり3つ半に留めておきました。
でも、ホットです。
次は、"The Accidental Mistress"で、3作目は"His Favorite Mistress"です。
楽しみ楽しみ
オージー作家、デビュー作。
Story:
Dialogue:
Hero:
Heroine:
Sensuality:
ウェブや表紙裏にある先輩作家達の一言コメントは絶賛しているように見えるんだけど、実はよく読んでみると"A wonderful debut"などの表現が目立ち、「デビュー作にしては上出来」という意味なのかな?とチラっと思ったりも。
Sebastian(Carleton伯爵)は、病床について余命間もないゴッドファーザーHugoのたのみで、Hugoの孫でSebastianの幼なじみでもあるGemmaと結婚してほしいといわれます。
慕っていた兄を亡くした時に、ある理由から決して結婚はしないと兄のお墓に誓ったSebastianは、Gemmaを彼の邸宅でのハウスパーティーで結婚相手を見つけることができなければ、自分が結婚すると承諾します。
もちろん、Gemmaの結婚相手はすぐ見つかるだろうとたかをくくっているので、自分が結婚する気は全くありません。
が、6年ぶりに再会した幼なじみのGemmaは、昔の「かわいい」という言葉だけでは収まらないほど美しくてセクシーで魅力的な女性に成長しており、他の男性と結婚するのを想像するとなんだかムシャクシャするSebastian。
美人で数々の男をもてあそんだとうわさされる母親を持つGemmaは、厳しい叔母の監視のもと、祖父の屋敷を切り盛りする日々。いつかこの邸宅の女主人になることで頭はいっぱい。結婚なんて考えられないけど、色々あってSebastianのハウスパーティーに参加することに同意します。
結婚はしない・できないと(お定まりの変な)誓いをたてたヒーローSebastianと、悪女として有名で常に海外を旅して家に帰ってこない母親を持ったことで自分の人格まで疑われることがトラウマになっているヒロインGemmaのロマンス。
お話自体はスムーズだし、登場人物の心理描写なども優れているお話ですが、何か今ひとつ物足りない感じ。
お話の筋は使い古されたものでびっくりするものではありません。でも、それが原因というよりは、H/Hの二人が殻にとじこもったまま最後の最後まで劇的な変化がなかったこと。
これから二人の間に何かが起こる…と思わせる要素はあるんです。でも、グッと盛り上げておいて結局何も起こらなくて「あ~…」ってがっかりする、の繰り返しのような感じがしました。
その辺は次の作品で改善してくれることを期待します。
Baloghのコメントが一番的を得てるかな。
"A touching love story"です。
お断り
ただ今この記事へのコメント・TBは受け付けていません。
元彼を忘れるためと、博士課程のリサーチのためもありイギリスに渡ったアメリカ人留学生Eloise。
彼女のリサーチの対象は、The Scarlet PimpernelやThe Purple Gentianなど、ナポレオン軍が英国に侵入してくるのを裏舞台で防いだスパイ達(もちろん、架空です)。
中でも一番資料が少なくて正体が誰かも分からないThe Pink CarnationのおかげでEloiseの研究は行き詰っていました。
解決法として、The Purple Gentianの子孫達に半ばヤケであちこち手紙を出すと、Colin Selwickから失礼極まりない断り方をした手紙を受け取ります。
一方、彼の叔母からは資料を見せてもいいという優しくて丁寧な手紙も受け取ります。
Colinの叔母Mrs. Selwick-Alderlyは、19世紀にしたためられたAmy Balcourtという女性の手紙や日記を大切に保管してありました。
その資料からは、なんと彼女と謎のスパイPurple Gentianの間の秘められたロマンスが明らかにされます。
Eloiseが資料の入った箱をあけ資料を読み始めると、私達読者はフランス革命後のパリへと引き込まれていきます。
時々現代に戻ってきて、Eloise自身のロマンス?やリサーチの進行具合も楽しめます。
ロマンス小説家の大御所Baloghがオススメだと言っていたし、ロマンス小説専門店でも再入荷の山がすぐになくなって常に追加していたところを見ると、結構いいんじゃないかと思い、あらすじもろくに読まずに購入。
今現在アマゾンのほうでは、評価は星3つ。120人以上がコメント寄せていますが、賛否両論のようです。
私からは高評価のハートマーク4つ半。
アマゾンで厳しい評価を出している人は、もっと高尚なものを期待していたようです。表紙がヒストリカルロマンス系ではなく、生真面目なヒストリカルノベルを思わせるものでもあるし、いざ読んでみて思っていたものと違うとびっくりした人が結構いたようです。しかも、ロマンス小説は馬鹿にされる傾向があるので、「ただのChick Litだ(=読む価値ない?)」というひどいコメントがチラホラ。
好みでなかった人には、残念。でもロマンス小説全般にケチつける必要はないでしょう…
とにかく、このPink Carnationは我がブログにはビンゴ、ヒストリカルロマンスです。
Julia Quinnのような軽快さやユーモア、家族のドタバタ劇の様子なんかが好きなら、これも絶対楽しめます。
私からも、オススメ
QuinnのBridgertonシリーズの尻すぼみにはかなりがっかりしたし、彼女のような作風でここまで楽しめる作品は本当に久しぶりなので、ホクホク
Quinnと違うのは、アドベンチャーの部分がもうちょっと手の込んだものになっているところですね。
作者Willig本人が、The Mask of Zorroや仮面を被ったスパイやヒーローもの(しかもヒストリカル)に弱いそうで、そういうファンタジーを追求した作品になってます。(笑
さらに、他のロマンス小説とも違うのは、ヒーロー・ヒロインの性的な部分や湯気の出るようなラブシーンには重心を置いてないところ。それでも、甘いキスシーンやロマンスには十分ドキドキします。
Heyerなどのコテコテのリージェンシーとは全く違います。
華やかなボールルームやソワレ、紳士がレディーをドライブに誘うなどのシーンは全くと言っていいほどありません。
ヒロインは汚い格好をして夜のパリの路地裏へ繰り出しては危険な目に合う…、そして仮面のヒーローがさっそうと救出に現れる…。彼らが自分の身を危険にさらしているのは、英国をナポレオンから守るため…、という感じです。
リージェンシーロマンスファンとしては、もうちょっと優雅な部分も入れて欲しかったし、最後のほうでは、いくらフィクションと言えども考えがたい展開もあったので、ハートマークは少し減ってしまいました。
それでも、現代のEloiseとヒストリカルのAmyのキャラクターが比喩的にうまく重なっている部分(や対照的な部分も)や、Eloiseと資料を外部の人に見せたくないハンサムColinの間のドンパチ、AmyとRichardのWittyな会話など魅力十分。
最後まで楽しめる1冊でした。
このお話は2作目"The Masque of the Black Tulip"につながっています。
2作目は、EloiseとColinのガチンコ対決も気になりますが、ヒストリカルの部分ではRichardの妹Henriettaと、Richardの親友Milesが中心。
3作目は去年出ている"The Deception of the Emerald Ring"です。
Ballantine Books
Story:
Dialogue:
Hero:
Heroine:
Sensuality:
オススメです。2作目のThe Wife Trapより良かったです。
双子の姉妹Jeannetteと入れ替わり、Lady Violet BrandfordはAdrian Winter、Raeburn公爵と結婚するシーンから始まります。
わがままなJeannetteは公爵と結婚したくなくて結婚式当日、土壇場で冗談半分で入れ替われたらな、と思ったが最後。JeannetteはVioletを説得してしまいます。
頭が良いブルーストッキングのViolet、普通だったらこんなことしないはず。でもじつは社交界デビューしたころから密かに公爵に片思いをしていたVioletは、秘密がばれて村八分にされるまで、ほんのひと時だけでもAdrianの側にいれるならという切ない思いも手伝ってこの愚かな入れ替わり劇に同意してしまいます。
わがままで身勝手だとばっかり思っていた花嫁が、いざ結婚生活を始めてみると意外な面を見せ始め、思っていたよりもいい花嫁をもらったのかもと思い始めるAdrian。ただ、その以外な面に触れる度に"Jeannette"の魅力に気付き、惹かれていきます。
欠点を言うと、お話はオリジナリティーに欠けるし、くどいのを承知で言わせてもらえば、Wallpaper Historicalです。
それに、ヒロインが最初からヒーローのことを好きなのですが、ヒロインが恋に落ちた課程の描写は全くありません。その分おもしろみが減っているかな。
でもでも、全体的なロマンスの流れは良かったです。
Adrianは優しくよく気がきく紳士。別にこれといってもったいぶったような「危険な男」とか「秘密・影のある男」とかではなく、すっきりしていて私は好きです。もちろん、入れ替わりがばれた時はメチャメチャ怒りますが、仕返ししたりしてドツボにはまったりしない、さわやか系です。聡明なVioletとお似合い
最後のシーンは中途半端に感じる方もいるかもしれません。2冊目を読めば不服は拭い去れるかもしれませんが、やっぱり一話一話、"Happily Ever After"をマッタリ堪能できるような終わり方にするのがロマンスノベルの基本かと。
Anne Tracy Warren (2006) The Wife Trap
Ballantine Books
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Sensuality:
WarrenのTrapシリーズ2作目から。
AARでは、お話だけでなくヒロインもメチャクチャ斬られて、Cマイナス評価。
私も忙しい一日の終わりに「ハァ~、やっと読書の時間」と手に取った本の内容が薄いと、かなり時間を無駄にしたように思えて仕方ないので評価は低くなったかもしれません。それにこの作品はWallpaper Historicalなので、最初はハートマーク2個半にしましたが、お話の後半で挽回したので、3つにおさまりました。
伯爵家の双子姉妹の片割れ、Lady Jeannette Brantfordは一作目の"The Husband Trap"で、双子の妹(か姉)のVioletと入れ替わってもらい意思に沿わない結婚から逃れます。結果スキャンダルとなり、この2作目では罰としてアイルランドの親戚の家へ「流刑」となったところから始まります。
美しいのはうわべだけで自分のことしか考えたことがないJeannetteは、親戚の家へ行く途中で、Darragh O'Brienと出会います。
自分の思い通りに動かないどころか彼女のプライドを簡単に傷つけることができるDarraghを絶対にギャフンと言わせてやりたいJeannette。
ただ、Mr.O'Brienはただの建築家で一般人。そのくせに、すごくハンサムで魅力的。一般人なんてかまっていられないという貴婦人のプライドと過去の苦い男性経験から、Darraghの魅力は無視しようとかんばりますが、彼とのキスが忘れられず、気になって気になって仕方ありません。
なんとなく自己紹介しそびれてしまったDarragh、実は列記とした11代目Mullholland伯爵。自身が貴族だし、わがままな妹達と一緒に育ったのでJeannetteの典型的なプライドの高い貴婦人の態度には慣れっこ。それよりも彼女の美しさはもちろん、勇敢さや知性、毒舌さに惹かれます。
ただ、彼が実の身分を明かす前に、他の人のことを考えないJeannetteの自分勝手さだけは直してもらおうと、彼女の子供じみた行動などものともせず、一つ二つ教訓を与えようとします。もちろん、彼女とのFlirtationも楽しみながら。
JeannetteがDarraghの本当の身分を思いがけず知ってしまった時というのが、このお話のツイスト。最初から最後まで予測可能の展開で、このツイストの後もオリジナリティーに欠けますが、それでも後半はかなり挽回しました。AARの批評にはヒロインは全く成長しなかったというようなことが書かれていましたが、私はヒロインは前半と後半では明らかに違いが見て取れました。
ロマンス小説には少数派のケースで、ヒロインが普通なら悪役で出てきそうな性格に描かれているので、読んでいて自己投影できないお話です。
でも、自己投影する理由って、実は理想的なヒロインに自分を重ねるのであって、反対にJeannetteのように共感したくない・できないキャラは、現実に自分自身の中に存在するビッチな部分を表してもいるので、読んでいて居心地は悪いけど、教えられる部分もあります。なのでこんなお話も捨てたものでもないなというのが個人的な意見です。
あと、ネタバレになりますが、ヒロインは処女じゃありません。このことで引いてしまう読者もいるかもしれません。
メチャメチャ忙しかったので、かなり「必殺・次のセリフまで飛ばし読み」もしたし、Wallpaper Historicalなので細かい文句を言い出せばキリがないのですが、もっと時間に余裕があれば楽しんで読めたと思います。
なので懲りずに、1作目"The Husband Trap"も3作目"The Wedding Trap"も読む気満々のKです。