手招きをする秋に、私は「ちょっとまってね」と微笑みかけると、再びレース針を動かします。新しい編み模様に出会うのも楽しく、難しくても臆せずに挑戦です。
レース糸には、結構カラフルな色があるのですが、私はやはり白を選びます。一枚ひらりとあるだけで、そのコーナーが華やかになるのは、やはり白いレースのほかないでしょう。
デザインも多種多様。例えば昭和を彷彿とさせるレトロなデザインも、丸い桐の御盆で運ばれてきた甘いノスタルジーのようで、それはそれで素敵です。
でも私が作りたいのは、ヨーロッパのアンティークに近い雰囲気を持つ、エレガントで洗練されたレース。手芸本から見つけた、イメージ通りのデザインだけを形にしていきます。雄鶏社から出ている本はどれもセンスが良く、2冊買ったレースの本は大活躍です。
糸は今のところオリムパス製しか使用していませんが、輝くような白と出来上がったときの清楚感が素晴らしいと思います。また、すべりも良好で編みやすいので、制作中も楽しい気分でいられます。
レース針にはクロバーの№8。実に針先が1㎜程度しかなく、これで細い糸を編んでいきます。でも持ち手がペン状になっているので、指にタコができたり、余計に疲れることはありません。
秋の夜は長く、私はその長さを愛おしみます。レースを編む手をふと休め、さざめく虫の声に聞き惚れながら、あるいは、麗しい月の光を仰ぎながら・・・・
そしてまた、とくとくと流れる時間を編み込んでいくのです。
写真は、実家の母への誕生日プレゼントとして作ったもの。すっきりとシャープでいながらゴージャスなデザインです。