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デジタル庁「TikTok」で啓発動画
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有本香
米国は「締め出し」再三警告、中国アプリに「お墨付き」与える日本の ?底抜け危機感?
米連邦通信委員会(FCC)は20日、中国の国有通信大手「中国聯通 (チャイナ・ユニコム)」の米国法人と、「パシフィック・ネットワーク ス」および、その子会社「コムネット」を、「国家安全保障上の脅威」に 指定したと発表した。
2019年に制定された、「米国の通信ネットワークを守るための法 規」に基づく措置だという。
同様の脅威指定で、記憶に新しいところでは、昨年3月、「華為技術 (ファーウェイ)」「中興通訊(ZTE)」「中国海能達通信(ハイテ ラ・コミュニケーションズ)」「杭州海康威視数字技術(ハイクビジョ ン)」「浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)」の5社が初めて指定 されている。
さて、ここで気にすべきは、わが国の対応だ。
読者の皆さまにおかれては、ぜひとも前述の中国系通信企業(機器メー カー含む)のどれでも構わない、社名を日本のネットで検索してみていた だきたい。
何事もなかったかのように、これら中国企業の格安SIMや新型スマホ を宣伝・販売するサイトが山ほど出てくる。唯一の同盟国である米国が、 「国家安全保障上の危機」にまで認定したにもかかわらずだ。
米国は20年以降、同盟国に対し、次世代通信規格「5G」からファー ウェイを完全排除するよう求めていた。これに対し、英国が同年、翌21 年以降のファーウェイ新規購入を禁止。27年までに5Gから同社製品を 完全排除する方針を決定している。
当時の日本は、安倍晋三政権のもと、かろうじて政府調達からファー ウェイ製品の事実上の排除を決めた。とはいえ、一部の自治体はその後も ファーウェイの端末を一括購入し、民間での活用は現在も、各企業・団体 の判断任せ、つまり?野放し?状態だ。この危機感の欠如はもはや、のん 気だとか、お花畑だとかいうレベルではなく、犯罪的ですらある。
こうしたなか、今月8日からデジタル庁が、若者を中心に支持を集める 中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で、マイナ ンバー普及のための動画を配信したことが話題となった。
ティックトックも米国当局はかねてから「危険視」している。ドナル ド・トランプ政権時にいったんは排除を決めたものが、ジョー・バイデン 政権で見直されたものの、個人情報流出の懸念は引き続き出されている。 6月には、FCC関係者が、アップルとグーグルに、アプリストアからの 削除を求めてもいる。
日本のデジタル庁の動きには当然、ネットなどで厳しい批判の声が上 がった。ツイッターでは、国民の批判的な書き込みに加え、前経済安全保 障担当相である小林鷹之衆院議員が次のように疑義を呈した。
「政府内で十分に検討した結果の取組なのか??」これに対し、大串正 樹デジタル副大臣が、次のとおりツイッターで釈明した。
「動画の作成から配信まで、TikTok側で完結してます。 TikTokユーザー世代への広報が弱いのは事実なので、ご協力いただ いたというものです」
これに、さらに小林議員は「国として国民に対して、特定のアプリを事 実上オーソライズ(認証)するには十分な検討が必要ではないか、との意 味です」とくぎを刺している。
河野太郎デジタル担当相も、大串副大臣とほぼ同様に、「動画で機密が 漏れるということはなく、問題ない」との認識を会見で示したが、河野、 大串両氏の認識は根本的にズレている。
広報動画を通じた情報漏洩(ろうえい)はない、などというのは当たり前 だ。それよりも、日本のデジタル庁が、米国が再三警告しているアプリに 「お墨付き」を与えたとも見える行為を小林議員や国民は批判しているのだ。
中国が関わる個人情報管理問題が発覚した無料通信アプリ「LINE(ラ イン)」も何のお咎めもないまま、行政や自治体で利用が推奨されてい る。「経済安全保障」という言葉だけが躍る一方で、危機感の底が抜けて いるわが国の現状。薄ら寒いものを感じるのは私だけだろうか。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生 まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国 際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に 『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬 舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国 紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。
デジタル庁「TikTok」で啓発動画
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有本香
米国は「締め出し」再三警告、中国アプリに「お墨付き」与える日本の ?底抜け危機感?
米連邦通信委員会(FCC)は20日、中国の国有通信大手「中国聯通 (チャイナ・ユニコム)」の米国法人と、「パシフィック・ネットワーク ス」および、その子会社「コムネット」を、「国家安全保障上の脅威」に 指定したと発表した。
2019年に制定された、「米国の通信ネットワークを守るための法 規」に基づく措置だという。
同様の脅威指定で、記憶に新しいところでは、昨年3月、「華為技術 (ファーウェイ)」「中興通訊(ZTE)」「中国海能達通信(ハイテ ラ・コミュニケーションズ)」「杭州海康威視数字技術(ハイクビジョ ン)」「浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)」の5社が初めて指定 されている。
さて、ここで気にすべきは、わが国の対応だ。
読者の皆さまにおかれては、ぜひとも前述の中国系通信企業(機器メー カー含む)のどれでも構わない、社名を日本のネットで検索してみていた だきたい。
何事もなかったかのように、これら中国企業の格安SIMや新型スマホ を宣伝・販売するサイトが山ほど出てくる。唯一の同盟国である米国が、 「国家安全保障上の危機」にまで認定したにもかかわらずだ。
米国は20年以降、同盟国に対し、次世代通信規格「5G」からファー ウェイを完全排除するよう求めていた。これに対し、英国が同年、翌21 年以降のファーウェイ新規購入を禁止。27年までに5Gから同社製品を 完全排除する方針を決定している。
当時の日本は、安倍晋三政権のもと、かろうじて政府調達からファー ウェイ製品の事実上の排除を決めた。とはいえ、一部の自治体はその後も ファーウェイの端末を一括購入し、民間での活用は現在も、各企業・団体 の判断任せ、つまり?野放し?状態だ。この危機感の欠如はもはや、のん 気だとか、お花畑だとかいうレベルではなく、犯罪的ですらある。
こうしたなか、今月8日からデジタル庁が、若者を中心に支持を集める 中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で、マイナ ンバー普及のための動画を配信したことが話題となった。
ティックトックも米国当局はかねてから「危険視」している。ドナル ド・トランプ政権時にいったんは排除を決めたものが、ジョー・バイデン 政権で見直されたものの、個人情報流出の懸念は引き続き出されている。 6月には、FCC関係者が、アップルとグーグルに、アプリストアからの 削除を求めてもいる。
日本のデジタル庁の動きには当然、ネットなどで厳しい批判の声が上 がった。ツイッターでは、国民の批判的な書き込みに加え、前経済安全保 障担当相である小林鷹之衆院議員が次のように疑義を呈した。
「政府内で十分に検討した結果の取組なのか??」これに対し、大串正 樹デジタル副大臣が、次のとおりツイッターで釈明した。
「動画の作成から配信まで、TikTok側で完結してます。 TikTokユーザー世代への広報が弱いのは事実なので、ご協力いただ いたというものです」
これに、さらに小林議員は「国として国民に対して、特定のアプリを事 実上オーソライズ(認証)するには十分な検討が必要ではないか、との意 味です」とくぎを刺している。
河野太郎デジタル担当相も、大串副大臣とほぼ同様に、「動画で機密が 漏れるということはなく、問題ない」との認識を会見で示したが、河野、 大串両氏の認識は根本的にズレている。
広報動画を通じた情報漏洩(ろうえい)はない、などというのは当たり前 だ。それよりも、日本のデジタル庁が、米国が再三警告しているアプリに 「お墨付き」を与えたとも見える行為を小林議員や国民は批判しているのだ。
中国が関わる個人情報管理問題が発覚した無料通信アプリ「LINE(ラ イン)」も何のお咎めもないまま、行政や自治体で利用が推奨されてい る。「経済安全保障」という言葉だけが躍る一方で、危機感の底が抜けて いるわが国の現状。薄ら寒いものを感じるのは私だけだろうか。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生 まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国 際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に 『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬 舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国 紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。