沖縄・台湾友の会

《台湾に興味のある方》《台湾を愛する方》《不治の病・台湾病を患ってしまった方》皆んなで色々語り合いたいものです。

好調経済に冷や水をかけるな!      高橋洋一

2023-05-28 16:03:06 | 日記
わたなべ りやうじらう のメイル・マガジン
               頂門の一針 6514号 

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 好調経済に冷や水をかけるな!
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          高橋洋一

【日本の解き方】 問題は岸田政権の緊縮体質、逆戻りしなければ…インフレ率上回る賃金上昇に 

今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)の内訳(年率換算)は、民間消費が2・4%増、住宅投資が0・7%増、設備投資が3・8%増、政府消費がほぼ横ばい、公共投資が10・1%増、輸出が15・6%減、輸入が9・0%減だった。

(GDP)の内訳(年率換算)は、民間消費が2・4%増、住宅投資が0・7%増、設備投資が3・8%増、政府消費がほぼ横ばい、公共投資が10・1%増、輸出が15・6%減、輸入が9・0%減だった。

民間消費はGDP動向のカギを握るが、対前期比でみると、2022年1~3月期が1・1%減の後、4~6月期が1・7%増、7~9月期が横ばい、10~12月期が0・2%増となり、今年1~3月期に0・6%増とやっと伸び始めた。コロナも5類に移行し、行動制限もなくなったので、今後は消費の増加も期待できるだろう。

住宅投資は22年7~9月期まで5期連続のマイナスだったが、10~12月期に0・1%増とプラスに転じ、今年1~3月期に0・2%増と底打ち感がある。今期は設備投資も0・9%増とプラス。公共投資も2・4%増と大幅増、政府消費はほぼ横ばい、輸出が4・2%減、輸入が2・3%減と、国内民需、政府部門でプラスになった。

特に公共投資は、21年1~3月期から22年1~3月期まで5四半期連続でマイナスだった。その後、4~6月期以降はプラスだったが、5期連続マイナスの大幅減をまだ補っていない。

内閣府は潜在GDPの計算方法を変更して、GDPギャップは少ないという。しかし、実質GDPの水準をみると、コロナ前のピークである19年7~9月期が557・5兆円であるが、22年10~12月期が546・8兆円、今年1~3月期548・9兆円とまだコロナ前を回復していない。このため、まだ十数兆円のGDPギャップが存在していると筆者は見ている。

そのため、エネルギー・原材料価格の上昇があっても、欧米のような価格全般が上昇するインフレにつながりにくい。

5月19日公表の4月消費者物価は、総合が3・5%上昇、生鮮食品を除く総合が3・4%上昇、生鮮食品・エネルギーを除く総合が4・1%上昇だった。日本ではインフレというが、欧米と比べるとひどくない。内閣府資料には、インフレかデフレかを見るために最適といわれるGDPデフレーターが掲載されているが、四半期デフレーター季節調整系列の前期比をみると、22年7~9月期が0・5%下落、10~12月期が1・1%上昇、今年1~3月期が1・3%上昇で、安定的に2%を超える状況ではない。

だが、世界経済は低迷している。その煽りで輸出は伸びなかった。筆者の見るところ、しっかりとコロナ対策で大型財政出動・金融緩和を行った国とそうでない国とで差が出ているようだ。日本はしっかりと増税なしの100兆円対策をしたので優位に立っている。問題は岸田文雄政権の緊縮体質だ。防衛増税や少子化対策での社会保険料引き上げなど、好調な経済に冷や水をかけるような政策を取りかねないのは、懸念材料だ。

今はコロナ禍で抑圧された消費が続伸する可能性もあるので、政府は冷や水でなく逆に燃料投下をすればいい。そうすれば、インフレ率を上回る賃金上昇が起こり、好循環の景気で盛り上がるだろう (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

マクロンのあまりの不人気にルペン待望論が再浮上   フランスも政治混迷が続いている

2023-05-28 16:02:24 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)5月27日(土曜日)弐
       通巻第7768号  
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 マクロンのあまりの不人気にルペン待望論が再浮上
  フランスも政治混迷が続いている
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 どの民主主義国家でも「民主主義」なるものが完全かつ理想的に機能している国はない。欧米は左翼がメディアを牛耳り、よこしまな報道で国民を洗脳し、正論を吐く本物の民主主義者を右翼とさげずんできた。バイデンやヒラリーの巨大な汚職には蓋をして、代わりに重箱の隅をつついて醜聞か事件に仕立て、トランプに対してロシアゲートなどを次々とでっち上げた。
この手法は朝日新聞と同じ。いや世界の左翼に共通の手口である。

子ネズミのようにちょろちょろと舞台を走り回るのはフランスのマクロン大統領。北京の習近平皇帝に会いに行くと大歓待されて有頂天になったか、帰りの飛行機で「台湾問題でわれわれは米国に追随する必要はない」と発言し、西側指導者から酷評された。
 ウクライナ戦争でも昨年はモスクワとキエフの間で、廊下鳶を演じたが、道化師かとプーチンが相手にしなかった。

ゼレンスキーはEU諸国でフランスがもっとも援助がすくなく(日本より少額)、武器の提供を殆どしないフランスが何を抜かすかとう顔をしていた。そこでマクロンはG7に訪日を希望していたゼレンスキーにフランス機を提供してご機嫌を取った。

 現在、フランスでマクロンの支持率は最低ラインに近く国民連合(旧「国民戦線」)のルペンがリードしている。ルペンの党は地方議会で圧勝を続けている。

 もしフランス大統領選が今やり直されたとした場合、マリーヌ・ルペンがマクロンに勝利するとの世論調査の結果がでた。仏BFMテレビの委託で調査会社エラブが行った世論調査では、得票率はルペンが55%、マクロンが45%となったのだ。

 この世論調査に慌ててマクロンが言ったのだ。
「もし私たちが国の課題に対応できず、嘘や現実を否定する習慣を持ち込んだ場合、マリーヌ・ルペン氏が(権力の座に)登場するだろう」

 マクロン不人気の主因は年金である。フランスの退職年齢を62歳から64歳に引き上げるとういう年金改革は、フランス全土で抗議活動、デモを展開し、現在もおさまりそうにない。5月21日、テレビ出演でルペンは「マクロン氏の改革は結局「完全に失敗」に終わった」と語った。


 ▲トランプは「アメリカ・ファースト」。ルペンは「フランス・ファースト」である。

 ルペンはウクライナ問題でも冷ややかで、この基調は援助削減を唱えるトランプと同じで「フランス・ファースト」である。
さきの選挙でルパンの政党はロシアの銀行から融資を受けた。それはEUの銀行がどこもルペンに資金を貸してくれなかったからだ。

 クリミア半島の帰属に関してもルペンの立場はEU主流の左翼や米国のネオコンとはことなり、もともとロシア所属なのだと歴史的事実を挙げる。

「ロシア帝国は 18 世紀にオスマン帝国からクリミアを獲得しました。したがって私は住民投票を全面的に支持します。クリミア住民はロシアとの再統一を目指して、投票によって自由に意思を表明したのであり、完全に合法だった」

ニキータ・フルシチョフが気まぐれでウクライナに譲渡されたものの、その前の60年間は一貫してロシアのものだった。だから、とルペンは付け加えて。「住民投票後にクリミアから逃げた難民はいなかった。

クリミアのロシアへの復帰は「不法併合」ではないとのルペンの主張は、2017年1月にフランスのBFMTVに、2月にはCNNに表明された。
かっとなったゼレンスキー政権はルペンにウクライナへの入国禁止処分を科した。

 ゼレンスキー大統領と政権幹部は「一インチも領土の妥協をしない」と豪語して、「クリミアを占領したら、ロシア語を禁止し、ロシアとの 「協力」の疑いがある人物を追放する」と言っている。

或るウクライナ高官は「クリミアに(ウクライナ軍が)入ったらすぐに、クリミアにいるロシア人をすべて根絶しなければならない」と語った。

 ルペンの政治姿勢はトランプやデサンティスと近い。
 しかし妊娠中絶や同性愛を容認しているが、同性婚には反対である。確固としてカソリックである。
ルペンはまた、反ユダヤ主義的発言を理由に父親を除名した。ムスリム移民の排斥を唱えてはおらず、「フランス社会にふさわしいイスラーム」を求めていくとしている。

ルペンはまた二重国籍の廃止を訴えており、これらのルペンの姿勢はフランスのカソリックや保守派から強く支持されている。


デサンティス知事の大統領選出馬表明は大きな空振りだった   米国の分裂状態こそ、世界の安全保障にとって脅威である

2023-05-26 22:04:11 | 日記

 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)5月27日(土曜日)
       通巻第7767号  <前日発行>
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 デサンティス知事の大統領選出馬表明は大きな空振りだった
  米国の分裂状態こそ、世界の安全保障にとって脅威である
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 順風満帆ではなかった。船出は最初から座礁した。
ロン・デサンティス(フロリダ州知事)の2024年大統領選出馬表明は大きな空振りだった。
 5月26日、ツィッターでイーロン・マスクとともにデサンティス(フロリダ州知事)は型破りの大統領選出馬表明を行った。事前の期待はかなり大きかった。
予約の回線がパンクしたらしく、開始が20分遅れとなった。そのうえ、出馬表明にとくに目新しいスローガンがなく、従来の保守の思想を繰り返しただけで、直後の世論調査はトランプ前大統領との差を縮めるどころか30ポイント以上も開いてしまった。

リベラルなメディアの多くが、『悲惨なスタート』等と書き散らしたが、サンティスが[WOKE]を繰り返し、その反リベラルな政治姿勢を批判したためマイナス面を押し出したに過ぎない。

サンティスは月末から六月初旬にかけてニューハンプシャー、アイオワ、サウスカロライナ州など12カ所を遊説にまわる予定だ。
しかし予備選の緒線地域でも、現時点では盛り上げる空気がない。所詮は「ミニ・トランプ」であり、二人の差違は何かと言えば、サンティスが「若いこと}と「軍隊経験がある」こと、嘗てサンティスの子供がトランプの本を読んでいる映像を流して選挙戦のPRに使うなど熱烈なトランプ支持者だった過去のトランプ便乗経過があり、それなら「次の次」に備えるべきだと諫める声も多い。

インフレ、スタグフレーション、失業、社会保障、銃規制、中絶反対、LGBTなど、とりわけ米国を分裂させているのは『大きな政府』vs「小さな政府』論争に収斂される。

 直近のFOXニュースは久々にヒラリー・クリントンを登場させて「誰もが(バイデンの)老齢を気にしている」と言わせているが、この時の世論調査でバイデンの三大政策にアメリカ人の三分の二が反対していることが分かった。
 すなわち経済政策に不賛成が66%、銃規制と不法移民対策でバイデンの政策に不賛成が67%とでた。

 大統領選挙は24年11月、あと17ヶ月も先であり、これから何が起こるか分からないが現時点でのイッシューにしぼり込むと、第一の争点は中絶問題だろう。第二が大學授業料減免措置、第三が不法移民。ついでインフレ対策、銃規制か? ウクライナ支援は大きな争点にはなっていない。中国に関しても関心はかなり鈍い。

 現在のところ、ウクライナ支援削減は共和党の保守系に限られている。しかしウクライナ戦争が長期化すれば、たぶん来年の予備選の開始までずれ込むとすれば、大きな争点に浮上する可能性はある。

それにしても、これほどバイデン政権は不評なのに、選挙となると、なぜ民主党が強いのか。労働組合の組織力? 若者たちの「なんとなくリベラル」? メディアの左翼偏向。共和党への蔑視?
具体的には身近な雇用、インフレ、そして中絶問題だろう。ファンダメンタルズの強い州では中絶は認められておらず、これが昨年の中間選挙で共和党が予想を裏切って、上院で勝てず、下院で辛勝だった結果を産んだ。共和党有利といわれた選挙区で女性票が土壇場で民主党に流れたからだ。


▲なぜあれほど無定見な民主党が選挙に強いのか?

バイデンが相当な自信をもって二期目の出馬宣言をした背景に大學ローン返済免除プログラムがある。返済のため生活に窮している国民がおよそ4000万人から7000万人。この人たちの多くが民主党に投票するだろう。

米国の大学授業料は高い。そのうえ大學の粗製濫造である。日本も少子化があきらかとなっても新制大学が雨後の竹の子状態だった。
これこそは文科省の最悪の愚策だが、産経新聞(5月24日)の報道に依れば、すでに19の新設大學が入学募集を打ち切った。

全国に私大は598校もある。このうちの284校が定員割れ。経営悪化が急速である。
立志舘(広島)、福岡医療福祉、帰路嶋国際、得上野学園、神戸海星女児学院などが学生募集を停止した。卒業生の就職のためのパスポートである以上、閉校とならず近くの大學に「救済合併」を待つしか無いだろう。

次に争点は不法移民である。
NYから50万人が去って、ブロンクス、クイーンズの人口が減ったが、かわりに65000名の不法移民がNYCに」雪崩れ込んだ。
それこそ一時的にはホテルを借り上げ、ウクライナ近隣諸国の風景と変わらない難民キャンプ、シェルター増設、かれらへの給食やら医療サービル。

じつに140ヶ所のシェルターで一日三食、つれてきた子供たちには学校へ通う手続き、一日に10億円。NYCは24年度の『難民対策予算』を29億ドル(およそ4000億円)と見積もる。
 多くのアメリカ人は不法移民のあまりのおびただしさに悲鳴を上げ、これはバイデンが不法移民の入国を黙認したからだと考えている。失業者の怒りは外国人に職を奪われたという強迫観念に近いものがあり、不法移民の大量の流れ込みを許したバイデン政権に猛烈な批判となる。

ところが、夥しいムスリム、ヒスパニック、黒人、アジア系移民などニューカマーは移民に優しい民主党に投票する。ユダヤ人も民主党贔屓が多い。


中国を制裁すると言いながら、中国との商売は維持する   政策的矛盾のバイデン対中外交はどこへ向かっているのか?

2023-05-26 21:41:14 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)5月26日(金曜日)
       通巻第7765号  <前日発行>
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 中国を制裁すると言いながら、中国との商売は維持する
  政策的矛盾のバイデン対中外交はどこへ向かっているのか?
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米国務省から三人の中国通がいなくなる。
外交路線は必ずしも商務省が主導する中国企業との取引禁止651社というエンティティリストと適合しない。
ましてUSTRは中国との交渉を続行している。毎日、矛盾に遭遇する国務省としてはやる気を失う人が出てくるかも知れないなぁ。

ウェンディ・シャーマンは初の女性国務副長官である。
 ハーバード大学ケネディスクールの教授を努め、国際政治を講義した。2011年から2015年までは国務次官(政治担当)を務め、54カ国を訪問した。国務省ではオルブライト国務長官の下で参事官、クリントン大統領の特別顧問および北朝鮮政策調整官、クリストファー国務長官の下で立法担当国務次官補を務めてきた。
シャーマンは2021年4月に上院が指名承認後、すぐに来日し、そのあと韓国、モンゴルを訪問しバイデン外交と安全保障政策を説明した。
そのシャーマン次官が近く、国務省を去ると発表された。

 国務省「中国室」の責任者で副次官補を兼ねるリック・ウォータ-も六月末で退任する。
かれは中国、中東専門家で北京語、アラブ語、モンゴル語、スペイン語を操る稀有の存在だった。

 ローラ・ローゼンバーガー(女性)は外交や安全保障分野で多彩なキャリアを重ね、国務省やホワイトハウスの要職を歴任した。三月までサリバン補佐官率いる国家安全保障会議(NSC)の中国担当上級部長だった。台湾政府と頻繁に意見交換を積み重ね、ブリンケンが国務副長官時代には首席補佐官を務めた実績がある。

彼女は三月に米国在台協会(AIT=事実上の米大使館)の理事長に就任した。台湾外交部は歓迎声明を出した。

5月22日に米国企業の代表者らは上海で中国の王文濤商務大臣と会談した。中国が米国の半導体メーカー「マイクロン」に制限を課すことが切っ掛けとなった。在中米国商工会議所などは外国企業の多くが中国のおけるビジネスの継続に不安を高めており、会合がもたれたのだ。
王文涛は両国が協力を継続する方法を見つけることを提案した。

一方で、「中国製」を買わない傾向が顕著となった西側企業がサプライチェーンの再構築を急ぐ中、中国企業も海外へ進出し、「中国製」というラベルを貼り替えて輸出を続行拡大に挑む。
こうしたいたちごっこはいつまで続くか?

チャットGPT、実は日本に親和的     櫻井よしこ

2023-05-26 21:39:12 | 日記
わたなべ りやうじらう のメイル・マガジン
               頂門の一針 6512号 

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チャットGPT、実は日本に親和的
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          櫻井よしこ


「チャットGPT」が急速に広まっている。「ITの神様」と呼ばれる伊藤穰一氏はチャットGPTを創ったサム・アルトマン氏を、過日、岸田文雄首相に紹介したご当人だ。伊藤氏は千葉工業大学で変革センターの所長を務めているが、学生たちにチャットGPTの使用を義務づけた。

「1週間前から始めたばかりですが、学生の能力を飛躍的にのばせると期待しています」と語る。

そもそもチャットGPTとは何か。GPTはGenerative Pre-trained Transformerの略だ。Generativeは「生成的な」とか「生殖力のある」という意味で、Pre-trainedは「事前学習済みの」の意、TransformerはAI(人工知能)の一種、アルゴリズムである。伊藤氏が4月21日、「言論テレビ」で語った。

「チャットGPTは、大規模言語モデルを有したAIです。大規模言語モデルは、ワープロでの仮名漢字変換に重ねて考えるとわかり易いでしょう。仮名文字を変換するとき、多くの漢字が出てきます。あれは日本語の文章を学習させて、この言葉の後にはこういう漢字が出てくるぞというのを統計学的に学んで、それを出してくるのです。間違いも少なくないけれど、キーを押している内に正しいのが出てくる。GPTはそれに似ています」

人間とのやりとりの中で、AIはある文章の後に何が続くのかを統計学的に出してくる機械、道具立てだというのだ。会話するというより、アルゴリズムに従って続きの文章を選び出し続けるイメージだという。

GPTの理解を進めてくれそうなもうひとつのイメージ、世界中の書物が全て揃っている大きな図書館を例にして氏は続けた。

「櫻井さんが司書に、あるテーマについて学びたいのですがと問います。司書は何冊かの書物を示してくれますね。でも彼は答えを知っているのではなく、誰かがこれまでに発表した著作の中から答えに辿りつく道筋を示す書物を探してくれるわけです。GPTのすることも同じなのです」

司書自身は答えを知らない。同じくAIも答えは知らない。

中露は猛然と活用する

「もっと言えば、AIはたとえば重力についても、数学についても知りません。ただ、『2+2=4』というのはどこかで見たことがあるね、そういえば『1+1=2』というのがあった。これを使えば2+2=4につながるんじゃないかという過程を辿る。だからかなり曖昧な部分はあり、堂々と間違える。想像でしかやっていないから」と伊藤氏。

「大規模言語モデルは、カチッと作られた構造的なルールではないのです。人間でも、人の話を聞いてそれを口写しに言う人がいます。自分が理解していないのに誰か偉い人が言ったからそれを繰り返す。GPTはそんなキャラです」と、氏は笑う。

大変な物識りのチャットGPTというAIにいま、プログラマーでも専門家でもない普通の人が無料で接触し利用できるようになった。プログラムを書けなくてもGPTを使える。全員がプログラマーになれる。そんな夢の時代の到来に米テスラCEOのイーロン・マスク氏が難色を示した

「チャットGPTの頭脳の部分を一般公開すると、犯罪者が悪用して危険だと、彼は言っているのです。ただ何を公開してよいのか悪いのかを決める権利が特定の人やチームにあるのかという議論もなされています。それに彼自身、GPTの開発を半年間中断すべきだと言ったけれど、実は新しいGPTを創る会社をすでに設立していたのです」

世界の一部の国がGPTを活用しなくても、中国やロシアは猛然と活用する。相手方にあるツールをこちらが使えず理解しなかったら、全ての面で私たちの側はボロボロの敗者になると、伊藤氏は説く。

始まったばかりのGPTはまだ問いに対して変な答えを出してきたり、未熟な部分が多い。しかしGPTは日進月歩で成長している。

GPTの成長を促すために、人間は追加情報を入れることができる。善悪の価値基準も入れられる。GPTの頭脳に人類が蓄積してきた価値観、倫理、哲学などを注入し、さらに次の段階に進むための情報や知恵を追加することでGPTの思考系統を人間が調節できるというのだ。

最後は人間が決定するのであれば、世の中に存在する邪(よこしま)な心を持った人々とGPTの関係をどうするのか。ウクライナ侵略戦争ではAIが、殺戮性をさらに高めた怖ろしい兵器を次々に生み出している。

「善悪は同じくらいずつ、世界に存在しています。加えて人間が世の中の出来事をコントロールできているわけではありません。だから、僕たちはガバナンスとかメディアの役割を重視するのです。GPTも含めてAIは人間にジェットエンジンをつけるようなもので、凄い力をその人に与えますから、よい方向にも悪い方向にも凄まじいエネルギーが生まれる。そこで誰がAI、GPTをコントロールするかが重要になります。中国やロシアは国が、米国は民間企業がコントロールしています。ヨーロッパはためらっている。日本は米欧の中間的な立場ですが
、日本こそ重要な役割を果たせると僕は考えています」

使いこなせるのは日本人

日本はIT技術の開発においては出遅れている。しかしこの技術を人類のために最善の形で使いこなせるのは日本人だと、伊藤氏は言うのだ。

「米欧社会はキリスト教、ユダヤ教の価値観で人間が上にいて、その下に動物と物と自然がある。AIやロボットなどを人間を圧迫する存在ととらえて感情的、宗教的に違和感を抱きがちです。日本は神道の国で人間は自然の一部としてとらえられている。ロボットも機械も、魂を持っていても不思議ではないという考えがあるんじゃないか。僕は哲学的、宗教的に日本人の方がAIの活用に向いていると思うのです。AIと社会が上手い具合に融合して、人間らしいガバナンスを保つことも、日本でなら可能じゃないかと思う」

伊藤氏は千葉工大で、MITダライ・ラマ倫理センターのCEOを務めるチベット仏教の僧、テンジン・プリヤダルシ氏と共同授業を行っている。そこでは哲学を学生に学ばせており、ソクラテス・メソッド、つまり学生たちに質問をし、考え学ばせる手法を用いる。

「GPTはこのソクラテス・メソッド、哲学的に考えるということが意外にうまいのです。僕自身、GPTに沢山質問をして貰い、回答し、考えを深めるという学びをしています」

理系の大学でチベット仏教の高僧と哲学について考え、教え、手応えを感じていると伊藤氏は言う。

「善悪ほぼ半々の人間社会を僕たちは善い方向に導きたい。そのために、日本の僕たちが日本本来の、皆で一緒に和をもってやっていこうという哲学、美学をAIにもたせることができれば、AIもGPTも怖くはないと思います」

それを実現するためのプログラムは今年6月頃にも発表されるという。楽しみに待ちたいと思う。