宮内庁三の丸尚蔵館、図録「北欧の工芸」より「カイフランク氏の部屋」1957年
4年ほど前、皇居の梅を観に皇居・東御苑へ出かけた折、宮内庁三の丸尚蔵館で開催されていた「北欧の工芸・自然が生み出す」という展覧会を観た。
展覧会では、明治から昭和の時代にかけて、北欧各国から皇室に贈られた工芸品が陶磁器やガラス作品を中心に展示されていた。
デンマークのロイヤル・コペンハーゲンやスウェーデンのグスタフベリ製陶所、コスタ、オレフェス、ノルウェーのハーデランやフィンランドのイッタラ、ヌータヤルヴィなど北欧ファンには馴染み深い名前、そして皇室から皇室への贈り物、どれも素晴らしいものばかりである。
それぞれの作品と共に、北欧のどの皇室から日本のどの皇室にどんな機会に贈られたかを知るのも、とても興味深いものだった。
先日、展覧会の図録を眺めていると、図録の最後に陶芸家・加藤土師萌 (かとう・はじめ)によるスケッチ 「カイフランク氏の部屋」というスケッチが掲載されている。
加藤土師萌(1900-1968)は、板谷波山や北大路魯山人、楠部彌弌などと共に陶芸ファンにとってはお馴染みの作家で、富本憲吉と並んで色絵磁器の陶芸家、人間国宝である。
その加藤土師萌とフィンランドのデザイナー、カイ・フランクの名がどう結びつくかは、フィンランドファンにとっては気になるところだ。
図録の解説では、「加藤土師萌は、1962年2月にアメリカ国務省の招聘を受けて、約4か月間にわたってアメリカに滞在した。
その後、デンマーク、スウェーデン、フィンランドを訪れた。 フィンランドではヌータヤルヴィ社を訪れ、同社のガラスデザイナーをしていたカイ・フランクのオフィースを描いたもの。・・・」とある。
2年ほど前に行われた展覧会 「フィンランド陶芸・芸術家たちのユートピア」の図録にも岐阜県現代陶芸美術館の山口敦子氏が加藤土師萌のアラビア製陶所訪問の様子が詳しく解説されている。
以前、中央公論社から出た「日本の陶磁・現代篇」の付録で陶芸家・加藤卓男(人間国宝、かとう・たくお 1917-2005)の随筆で「私は昭和30年代の半ば、北欧に在住していたが・・・」という記述に、ペルシャ陶器、ラスター彩の巨匠と北欧がどう結びつくのか気になっていた。
前述の図録に山口敦子氏が「陶芸家・加藤卓男は、カイ・フランクと彼の来日時に知遇を得た。
1961に工業技術院産業工芸試験所の斡旋でフィンランドの産業美術学校に短期であるが留学が実現した・・・」ことなどが解説されていて、疑問が解けた。
意外な著名人のフィンランド、北欧との関係を知ることは楽しい事である。