フィンランドのインテリア雑誌「avotakka」のバックナンバーに「フィスカルス(Fiskars)」のハサミの記事が載っている。
タイトルは、
「Fiskarsin sakset ovat joka kodin designklassikko – tiedätkö, miksi väri on oranssi ?」
「フィスカルス」のハサミは、どの家庭にもあるデザインの定番ですが、なぜ色がオレンジなのかご存知でしょうか?」
オフィースや家庭で「フィスカルス」のオレンジ色のハサミを見かけることが多い。
フィンランド以外の国でも、オレンジ色を見ることが多く、このハサミは世界を制覇した感がある。
なんと、現在までに10億個以上が販売されたという。
僕は、この「フィスカルス」のオレンジ色と「コニシ」の木工用ボンドの黄色に前から好感をもっている。
作業机の上は、常に乱雑となり、探し物はどこかに紛れて見つかりづらい。
オレンジ色の「フィスカルス」と黄色の「ボンド」は、何時でも簡単に見つけることができる。
色の選択に感心していたのだが、「フィスカルス」のオレンジ色は偶然の産物だったという。
記事の概略は以下のようなもの、
1649年に鉄工所としてスタートした「フィスカルス社」は、欧米で最も古い企業の一つで、ガーデニング、料理、クラフト製品を60カ国以上で販売する世界有数のライフスタイルブランドとなっている。
1960年代初頭、フィンランド南部の町、フィスカルス(Fiskars)から南東7kmぐらいにある、ビリナス工場 (Billnäs、フィンランド語ではPinjainen)でハサミの開発が始まった。
ハサミをデザインした「オロフ・ベックストローム(Olof Bäckström、1922-1998)」は、ABS樹脂のハンドルの色に「黒、赤、緑」の3色を選んだ。
1967年に工場での生産が始まると、機械のオペレーターは自分の機械に残っているオレンジ色を使い切ろうと考えた。
その結果、「黒、赤、緑」に「オレンジ色」を加えて、4つの試作品ができあがった。
ハンドルの色を決めるにあたり、スタッフ16人の間で投票が行われた。
「黒とオレンジ」が最後まで残り、最終投票で「オレンジ9票、黒7票」と「オレンジ」が黒を上回り、ハンドルの色が決定されたのだ。
工場の機械オペレーターが、機械の中に残った材料を使い切ろうという「もったいない精神」は、会社の発展を左右するほどの大きな意味をもっていたが、当時は知る由もなかっただろう。
オレンジ色は商標として保護され、次第に会社全体のブランド色となり、「オレンジ色のフィスカルス」は世界中で認識されるようになったのだった。
40年ほど前にヘルシンキで購入した「フィスカルス」のハサミ。
酷使にもにもかかわらず、いまだにシャキシャキと快適な音を立て、活躍している。
オレンジ色の「フィスカルス」のハサミは、雑然とした作業机の上でも、簡単に発見できる。
2017年9月8日―10月29日
ヘルシンキの「デザイン・ミュージアム」で行われた展覧会
「フィスカルス社」と「デザイン・ミュージアム」は、このハサミの50周年を記念して、「our scissors / meidän sakuset / 私たちのハサミ」と題した展覧会を開催した。
アメリカ、スウェーデン、デンマーク、ドイツなどのアーティスト、デザイナー、クリエイター、 28人が招待され、日本からは皆川明氏が参加した。
ある人はデザインから、ある人は特徴的なオレンジ色から、またある人は切断機能からインスピレーションを受けた作品を出展。
1999年に発行された記念切手 「Finnish Design」
6枚組切手シートの表紙に採用されたのはオレンジ色のハンドル「フィスカルス」のハサミ
1999年に発行された記念切手「Finnish Design」
6枚組切手
「フィスカルス」は、園芸用ハサミがモチーフとなっている。
stamp design: ヤーナ・アールトマー (Jaana Aartomaa)
「Finnish Design」シリーズの切手は1998年から2000年まで3年に渡って発行された。 どれも素晴らしいデザインなので、ついでに紹介しよう。
1998年発行「Finnish Design」
stamp design: カリ・ピーポ (Kari Piippo)
2000年発行「Finnish Design」
stamp design: エーヴァ・シヴラ (Eeva Sivula)、イロナ・イロトゥ (Ilona Ilottu)、ペトリ・サルメラ (Petri Salmela)