PRIMO信号処理研究所 / Synchro PRIMO Lab.

周波数測定、位相差測定に関する新しい数理。
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欧州の電力系統、各地で波形収集

2017-01-08 22:10:46 | 信号処理

 欧州は巨大な単一系統(50Hz)となっています。チェコあたりからスペインの先まで、1つの系統になっています。地図でみると線路のように1つに繋がっていますが、すべてが単一系統として運用されているかどうかは不明です。

 系統図は ENTSO-E という機関で公開されています。 

https://www.entsoe.eu/map/Pages/default.aspx

 欧州では、電力の売買が自由化されているのですが、安定供給のためにはロードバランスや潮流を適切に管理する運用が大事なのです。国によっては発電過剰だったり消費過剰だったり・・・その埋め合わせのために「国際連系線」とよばれる国をまたぐ送電線で電力のやりとり(売買)を行っています。とは言うものの遠距離で売買をしようとしても実際の電力を送るのではなく、「最終的な供給・消費の収支」が合うように発電量・送電量が調整されるのです。上記の地図をみると国内はメッシュ状に多数の送電線がありますが、国をまたぐ送電線はそれほど多くないことが分かります。

 2015年、国際会議での発表がてら、欧州各地をまわり、電力波形・周波数変動データを収集してきました。しかし、その場所の選定をどうするか。。。そこで、上記のENTSO-Eの巨大地図のお世話になっています。

 この系統図から選んだ地点(訪問日程順)

  1. スイス:Laufenburg ・・・スイスのオペレータ(Swiss Grid)の本拠地であり、太い回線が多数集結、ドイツとのやりとりをしている。近場に原発もあり周囲の様子をみたかった。
  2. ドイツ:Simbach/Braunau am Inn ・・・ドイツ-オーストリアを結ぶ国際連携線。Inn川をはさんでドイツ・オーストリアの変電所が接続
  3. オーストリア:Villach ・・・かつて仕事で住んだところ。周囲はほとんどが水力発電で、大消費地からも遠い。Pureな波形ではないかと予想
  4. オーストリア:Wien郊外 ・・・東欧諸国と接続される巨大変電所。一帯にはLNG発電所が多数。消費地に近い
  5. ドイツ:Aachen ・・・ ドイツ・オランダ国境近く。波形はあれているかもと予想
  6. ベルギー:ベルギー・フランス間にある連携線 ・・・ 帰国直前の静養もかねてベルギーのDinant という町を起点に現地を視察。
 このツアーですが・・・欧州で発生した難民の大移動に見事に遭遇してしまい、当初予定を変更、上記のように落ち着いています。当初はチェコ方面も計画していたのですが、難民のハンガリーからオーストリアへの流入、クロアチア経由オーストリアへの流入に遭遇しキャンセル。
 
 上記Simbachという町はInn川を渡ってオーストリアからドイツへ徒歩で移動できます。なんと国境の橋(Simbach-Braunau間)では検問があり救護所の設営の真っ最中でした。またWien中央駅でも1000人を超えているであろう集団に遭遇しています。そんな事情もあり移動は電車・バスのみとし、治安に不安を生じそうなエリアへの移動は控えました。
 
 この時のモニター波形については、次回以降、記事にしたいと思います。
 
 
 
 

 

 


ゆらゆら? 系統電圧波形

2017-01-08 21:36:51 | 信号処理

 添付の画像(GIF)をご覧ください。複数画像をあつめてGIFアニメーションにしたものです。

 この波形は、フランス・ニース市内で取得した電圧波形(欧州の系統は50Hz)です。なんと、奇数/偶数サイクルごとに図のようにゆらゆらと波形がゆれています。ミクロ的には、ゼロクロス点が毎サイクルで前後しており、Synchro PRIMOで周波数を計測すると、2値が突然現れるように観測されます。

 

ゆらゆら

 

 詳細な原因は不明ですが、おそらく1サイクルおきに電流が大きく変動する負荷がつながったのでしょう。しかし抵抗負荷だけだと仮に非線形であったとしても、ゼロクロス点が変動するのは理解できません。おそらく・・・ですが、かなり大きい誘導性の負荷が、かつ1サイクルおきに変動していた・・・と想像しています。

 見かけの周波数のゆれは、別の言い方をすれば、位相角が波打っているともとれます。時変の誘導性負荷が接続されていたと考えれば、「インピーダンスの変化率」できまる「位相角の変化率」が系統周波数の変動として観測されているのでしょう。

 現在、欧米で研究開発がすすめられているPMU(=Phasor Measurment Unit)ですが、こういった電圧フリッカーの検出はできるのでしょうか? PMU仕様や観測標準として検討されているのでしょうか・・・ 

  Synchro PRIMOは半サイクルのデータでも瞬時周波数・位相角、瞬時振幅の測定が可能です。

 余談ですが、2015年9月にニースで開催された国際会議(EUSIPCO-2015)で発表した際に計測したものです。ニースの配電系統はわりとシンプルで、ニース郊外のCarrosという町にそこそこの変電所があり、ここから供給されているようです。https://www.google.co.jp/maps/@43.80259,7.1916265,16z 近隣には工場が多数あり、変電所に近いところでの誘導負荷の影響があったのかと想像しています。

 CarrosまではNice市内からレンタカーを使用しましたが・・・現地の運転は短気なドライバー?が多く、市内への戻りは大変だったです・・・Carros から上流にも足を伸ばしましたが・・・ドライブを堪能できました。ただし欧州ではMT車が標準・・・私はMT乗りなので問題なかったですが、シフトミスでエンスト多数。少々後ろをイライラさせたかも。