二夜続けての千葉県北部の地震、特に今日午前2時前の
地震はビックリである。いずれも震源地で震度4だから、
このあたり(三郷)では震度3程度であろう。
一応ビックリとは書いたが、高校時代に長野松代群発
地震を経験しているので震度4くらいまでは慌てふためく
ことはない。一日に何百回という有感地震で鍛えられた。
長野市街から犀川、千曲川を挟んで約10キロの松代町も
今は長野市に吸収された。夜の地震では、その松代方向の
山の端が光るのが不気味だった。
この松代町のほゞ真ん中に、周囲の山並みとは独立して、
ポツンと皆神(ミナカミ)山がある。この溶岩ドームの山が
震源とされている。
またここは、佐久間象山が外来(フランス?)の書物で
見た気球を作って頂上から飛んだ山である。
苦労して作った布製の気球に炭火が燃え移り、助走して
飛び出した直後に敢え無く墜落、象山は負傷したという
エピソードがある。
5年前、千曲川を歩いた時に宿泊した「定鑑堂」から
見た皆神山である。
この旅館「定鑑堂」は、書物や炭を商っていた江戸末期、
佐久間象山が江戸城の広間の名から命名したという。
さて、「軌道」(松本創、2018年 東洋経済社)の紹介も
6回目である。この本は、JR福知山線脱線事故の後で参加
したNPO失敗学会大阪分科会の知人に教えてもらった本。
「違うやろうが、こっちは命懸けでやっとんねや!」
淺野がテーブルを叩いて怒鳴る。
NHKの「クローズアップ現代、いのちをめぐる対話」
の冒頭シーンである(2015年4月)。
事故の遺族と加害者のJR西が一つのテーブルについた
「課題検討会」。淺野と同じ技術屋として元社長の山崎正敬
が受け入れ方針を示し、後任に託した共同検証である。
遺族側は「4.25ネットワーク」世話人の淺野弥三一(ヤサカズ)
はじめ7名。JR西は副社長兼鉄道本部長の西川直輝をはじめ
として、被害者対応本部長の中村仁、以下安全推進部長、
運輸部長らの8名。
オブザーバーとしてノンフィクション作家の柳田邦男が
加わった。
月一回、1年と4ヶ月の計16回。「全体的には冷静で
理論的な対話だった」と総括するJR西だが、遺族側は概ね
「最後まで認識の溝は埋まらなかった」と分かれる。
テーマは4つ。日勤教育、ダイヤ、ATS、安全管理体制。
報告書の内容は省くとして、オブザーバーとしての柳田邦男
の締めくくりの言葉で代表しよう。
これまでの事故・災害・公害などでは、被害者の存在が
あまりにも軽々しく扱われてきた。原因企業は、損害賠償
や補償の請求者という利害関係でしかとらえず、事故調査
においても、専門知識を持たない被害者は顧みられない。
むしろ客観性を維持するために距離を置くべきと考え
られていた。再発防止や安全向上を指導する行政の視野
にも入っていなかった。いわば「乾いた3人称の視点」で
しか見られなかった。
私は、専門家や組織の立場に求められる客観性、社会性
の視点を維持しつつも、被害者・家族に寄り添う視点を
探ることが必要だと思う。
課題検討会におけるJR西の遺族に対する応答の仕方に、
これに近づこうとする姿勢を私は感じた。
しかし、やっと話ができるようになったというだけで
内容の合意ができたわけではない、と言う淺野弥三一の
思いは次のステップへと向かう。(続く)