「口うるさい店の大将みたい」。昨日の緊急事態宣言延長を
発表し、細々と「新しい生活」を喋りまくったた安倍首相への
評価である。蓋し納得。
新型コロナ感染対策の「広報官」になったような一国の宰相。
心が籠らないお喋りを日本国民はいつまで聞かされるのか。
さて、いち早く緊急事態宣言を出し、いち早く解除した北海道
だが、第二波感染の様子。第一波は札幌雪祭り見物客など「中国
由来」ウィルスと言われ、第二波はで国内からの観光客の「欧州
由来」ウィルスらしい。
その結果、北海道の感染者数は一度抜かれた千葉県、埼玉県
を抜いて４位に躍り出そうである。「北海道の失敗を教訓に」
というアメリカの誰かが喋る映像が昨日報道された。
ちょっと待てよ、アメリカだけには言ワレタナイ！
ＪＲ福知山線脱線事故の遺族、淺野弥三一がＪＲ西日本を
追及する姿を描いたノンフィクション「軌道」（松本創）の
続きである。
事故の遺族と加害者であるＪＲ西日本が、同じテーブルで
顔を合わせて「真の事故原因」を追究するという前代未聞の
「課題検討会」を実現したのは二人の技術屋の出会いである。
事故の後、ＪＲ西は南谷会長、垣井社長辞任の後の社長
含みで、技術系「運転屋」であった山崎正敬を安全担当の
副社長に抜擢した。
常に事務屋がトップに君臨するＪＲ西では異例の人事、
報道関係者もこの後で山崎が社長になるとは、だれも予想
しなかったという。
山崎が社長になって遺族廻りをはじめ、淺野弥三一の家
も訪れた。淺野が遺族会「4.25ネットワーク」活動の論客
であることは知っていた。
妻と妹を亡くし娘も重傷と言う、多分最大の遺族であり、
どんな怒りをぶつけられても当然と覚悟して緊張していた。
しかし、その覚悟に反し、淺野の語り口は穏やかだった。
山崎からの謝罪の言葉を聞いた後、「ま、それはそれだ。
そんなに謝られても戻ってくるわけではない。それよりも
事故の原因をちゃんと知りたいんだ」と語る淺野に、冷静
に理論的に見ようと言う淺野の印象を受けた。。
一方の淺野は「あんたも落下傘（人事）で大変やな」と
言い、建築と工学の違いはあるが同じ技術屋、年も二つ
違いの同世代。彼となら対話が出来るかもしれないという
期待を感じた。
山崎が東大の航空学科出身で、モーター同好会で車を
いじっていたこと、阪神・淡路大震災では互いに復旧に
関わったことなど、取り留めもなく話を交わした。
山崎が、それまでの通り一遍の謝罪を口にするＪＲ西の
幹部とは違い、自分の言葉で語り、素直に自分を出す男だ
と淺野は感じた。
鉄道本部長時代の責任を問われ、幹部としては唯一、
起訴された２週間後、社長辞任を控え再び淺野を訪れた
山崎は、厳しい取り調べに憔悴しきっていた。
一人で事故の責任を問われる屈辱、安全と現場の技術
重視を掲げた改革から退場させられる悔しさ。そして、
遺族への申し訳なさ、背を丸めて頭を下げる山崎。
淺野は言った。「あんたも時代を支えて来た技術屋だ
ろう。その人生をこのまま終わるのか。間違っていない
なら法廷で堂々主張すればいい。それが技術屋だ」。
そして、「被害者と加害者の立場を超え同じテーブル
で安全について考えよう。責任追及はこの際、横におく。
一緒にやらないか」。
山崎もこの構想、要望は知っていた。受けるべきか否か、
社内では激しい議論になっていた。自分一人が起訴と
なった今、影響の及ぶ範囲は狭い。
山崎は決断した。「やる方向で考えましょう。後任の
佐々木に伝えます」。淺野の家を出る山崎の表情は晴れ
やかになっていた。丸まった背筋も伸びていた。
その後、紆余曲折はあったが、こうして「課題検討会」は
実現したのである。
次回は、その内容を紹介しよう。実はこれは未だ第Ⅱ部
の内容である。これからが第Ⅲ部「安全をめぐる闘い」で
ある。
散歩から、爛熟のツツジを
