トランプ政権、イランの「ウイルス起源説」同調に反発
2020.3.24 16:06 産経新聞
【ワシントン】トランプ政権は、イランのハメネイ体制が新型コロナウイルスの
感染拡大で米国の支援を拒否し、中国の習近平共産党体制が流している
「ウイルス米国起源説」に同調の構えを示していることに態度を硬化させている。
ポンペオ国務長官は23日、ハメネイ体制による反米思想に根差したディスイン
フォーメーション(偽情報工作)を厳しく批判する声明を発表した。
イランの最高指導者ハメネイ師は22日のテレビ演説で「米国がウイルスを作った
疑いがある。そんな疑惑のある米国からの支援を受けるのは賢明ではない」などと
主張した。
ポンペオ氏はこれに対し「ハメネイ師による作り話は危険であり、イランや世界の
人々を一層危険にさらすものだ」と非難した。
その上で「イランが世界に知られたくない事実」として複数の事例を列挙。
シリアのイラン系武装組織向けに武器を輸送したとして米独自の制裁対象になっている
イランのマハン航空が、2月にテヘラン-中国間で計55便を運航し、イラン国内での
感染を拡大させたと指摘した。
また、少なくとも5カ国で最初に確認された感染例は、イランから持ち込まれた
ウイルスに感染したことが判明したとしている。
さらに、イラン体制が最初の死亡例を少なくとも9日間隠蔽したほか、現在も感染数と
死者数を実態よりもはるかに少なく発表し続けているとした。
一方、米国のイラン制裁は食料や医薬品、医療機器などの支援物資を対象として
いないと強調。実際、イラン企業は1月以降、検査キットを問題なく輸入していると
指摘し、「制裁のせいでウイルス対策が進まない」とするイラン体制の主張は事実無根
であるとの認識を明らかにした。
同時に、米国はイランを含む諸外国に計1憶ドル(約111憶円)の支援を申し
出てきたとし、「ハメネイ師は陰謀論をでっち上げて(反米)思想をイラン国民に
優先させるのに忙しく、米国の申し出を拒否した」と切り捨てた。
ポンペオ氏は20日、ホワイトハウスでの記者会見で「中国とロシア、イランが
連携し、トランプ大統領や米国による(新型コロナ対策の)取り組みに関する評価を
傷つけることを狙った(偽情報)工作を展開している」と批判し、これらの国に
直接抗議したことを明らかにしている。
イラン「新年」迎え感染拡大の懸念。休暇2週間、中国・春節の二の舞いに?
2020年3月23日 16時58分(最終更新 3月23日 19時53分) 毎日新聞
新年「ノールーズ」を迎えたイランの首都テヘランで高速道路を走行する車両=2020年3月20日
新型コロナウイルスの感染者が公式発表で2万人を超えるイランで、更なる事態の悪化が
懸念されている。20日にはイラン暦で「ノールーズ」と呼ばれる新年を迎え、約2週間の
休暇を行楽地などで過ごす人々が続出。1月下旬に春節(旧正月)期間の人の移動で
感染が広まった中国の二の舞いとなる可能性も指摘されている。
イラン保健省の23日の発表では、これまでに1812人が感染によって死亡。
ロイター通信によると、ロウハニ大統領は21日、国営テレビを通じて「経済を正常に
戻すために必要なことは全てしなければならない」と述べ、今後2~3週間程度、
移動制限を含む社会的隔離政策を実施する方針を示した。
イラン保健省も既に国民に対して混雑する場所を避けるよう求めているが、これを
無視して例年通りに新年の休暇を楽しむためカスピ海の湖岸などへ向かう人々が
大勢いると地元警察が指摘。感染が広がるテヘランでも市民の5割程度しか事態を深刻に
受け止めていないとの世論調査結果もあり、人の移動に歯止めがかかっていない状況と
みられる。
一方、イスラム教シーア派の聖地である中部コムと北東部マシュハドでは3月中旬に
聖廟(せいびょう)などの一時閉鎖が決まったが、これに反対する宗教強硬派の人々が
集まり、一部が逮捕される騒動も起きた。
イランでは新型ウイルスの感染拡大以前から、核開発を巡る米国の制裁で経済が悪化。
制裁は医療部門にも影響を与えているとみられ、ロウハニ師は20日、国営メディアを
通じて出した米国民へのメッセージで「制裁の影響で多くのイラン市民が健康を害し、
仕事や収入を失っている」と窮状を訴え、「イランがコロナと戦っている今、制裁を
解除するよう米国政府に求めてほしい」と呼びかけた。