ブエノスアイレスG20の主な議論、金融当局の独立性や世界成長懸念
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ムニューシン長官は米金融当局の独立性を保証、為替介入ないと発言
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ルメール仏経済相は米通商措置を弱肉強食のジャングルの掟に例える
迫りつつある貿易戦争が為替市場へと波及するリスクへの懸念が広がる中、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで
開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は22日閉幕した。開幕に先立ち、トランプ大統領は
対中関税の対象拡大の脅しや米金融当局の利上げ批判に加え、欧州連合(EU)と中国が為替相場を操作してきたと
批判していた。
2日間にわたった議論の主な内容は以下の通り。
―米金融当局の独立性
ムニューシン米財務長官は、ドル高と米利上げが米国の競争上の優位性を損なっているとしたトランプ大統領の
20日のコメントへの対応で、トランプ大統領は米金融当局の独立性を完全に支持しており、外為市場に介入する
つもりはないと21日午前の開幕前に記者団に説明。伝統的な強いドル政策をあらためて表明した。
ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事はこの問題に言及し、中銀の「独立性が鍵だ」と発言。
南アフリカ準備銀行(中央銀行)のミネル副総裁は、「私の考えでは中銀の独立性は絶対脅かすべきではなく、
独立した中央銀行の方がうまく行く傾向があることを示す証拠が多くある」と指摘した。
―世界成長への懸念
世界経済の成長は引き続き強固だが、足元では成長の同時性が失われつつあり、短期から中期にかけての
下方リスクは貿易上の緊張の高まりなど、増大していると、G20は共同声明で言及した。
新興市場国は特に資本流出や市場の過度の変動のリスクに直面しているとした。
モスコビシ欧州委員(経済・財務・税制担当)は、「既に講じられた保護主義的措置の影響は幸いなことに、
これまで限定的なものにとどまっている。しかしエスカレートするリスクは存在する」と述べた。
―ジャングルの掟
フランスのルメール経済・財務相は、米国は「理性を取り戻す」必要があると述べるとともに、「米国の一方的な
貿易措置」を弱肉強食の「ジャングルの掟(おきて)」に例えた。
同相は、EUが世界貿易の各側面の見直しを議論する前に米国が鉄鋼・アルミニウム輸入関税を撤回する
必要があると主張。「われわれは銃を頭に突き付けられて交渉することは拒否する」と述べた。
-外交用語の達人
会議では激しい言葉の応酬はあったものの、複数の会議参加者によると、共同声明策定は久し振りにスムーズに
運んだようだ。主催国アルゼンチンによれば、予定より1日早い21日に容易に合意形成ができた。
ムニューシン長官は同氏にとって最も易しい声明だったと述べた。
原題:Highlights from the G-20 Summit in Buenos Aires This Weekend(抜粋)
貿易の緊張が世界経済の成長脅かす-G20財務相会議声明
2018年7月23日 6:20 JST Bloomberg
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3月会合時の声明になかった貿易巡る緊張との認識盛り込む
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為替については通貨の競争的切り下げ回避との文言なし
アルゼンチンのブエノスアイレスでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は22日、
主要国・地域の成長エンジンの同時性が失われつつある中、貿易を巡る緊張が世界の経済成長を脅かしているとの
声明を発表して閉幕した。
声明は世界の成長が引き続き堅調で、多くの新興市場国が危機への備えを改善しているとした上で、
世界経済へのリスクが増大しているとの認識を示した。主要なリスクとして「金融上の脆弱(ぜいじゃく)性の
増大と貿易や地政学的な緊張の高まり、世界的な不均衡、不平等、構造的に弱い成長」を挙げた。
新興国市場は市場のボラティリティーや資本流出などの脅威に直面していると指摘。
3月に開かれたG20財務相・中銀総裁会議では、貿易を巡る緊張は声明に盛り込まれていなかった。
トランプ米大統領が20日、中国からの輸入品への追加関税措置の可能性に触れたことを受け、G20会合では
貿易が主要議論となった。フランスのルメール経済・財務相は21日に記者団に対し、欧州連合(EU)は
「銃を頭に突きつけられた状態で」通商問題を交渉することはないと述べ、理性的な対応を取り戻すよう米国に促した。
当局者によれば、為替については通貨の競争的切り下げを回避すると約束した3月会合でのコミットメントを
あらためて確認した。トランプ大統領がEUと中国は自国・地域の為替相場を不正に操作してきたと非難し、
強いドルと米金融当局による利上げが米国の競争力を損なっていると不満を示したことから、会議で通貨問題が
活発に議論されるとの観測が急激に高まっていた。
ムニューシン米財務長官は21日、トランプ大統領が為替市場に介入しようとしたわけではなく、
米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性についても完全に支持していると述べた。
原題:Trade Tensions Threaten Global Economic Growth, G-20 Cautions(抜粋)
米貿易赤字解消、マクロ政策などで対応すべき=麻生財務相
[ブエノスアイレス/東京 21/22日 ロイター] - 麻生太郎財務相は、米政府が貿易赤字の解消に向けて、
関税を課すなどの強硬姿勢を続けていることに関し「2国間ではなく多国間で調整すべき。マクロ経済政策などで
対応すべき」との認識を示した。
アルゼンチン・ブエノスアイレスで開幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の初日の討議後、
記者団に語った。麻生財務相によると、G20の討議の中で、同じ見解を表明したという。
麻生財務相は「保護主義的な政策は、どの国の利益にもならない」と主張。自由で公正なルールに基づいた通商政策で、
経済成長を維持すべきとの考えを改めて示した。
初日の討議では、中国に対して人民元の通貨政策を透明化するよう日本側から要請したという。
同行筋によると、人民元の下落を巡って金融市場が混乱する事態を回避するため「コミュニケーションを
クリアにしてもらいたい」との意向を伝えた。
麻生氏、車輸入制限の回避要請 米財務長官に
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【ブエノスアイレス共同】麻生太郎財務相は22日、ブエノスアイレスでムニューシン米財務長官と会談し、
米国が検討する自動車輸入制限の回避を求めた。米国の対イラン経済制裁再開で邦銀などに悪影響が及ばないような
配慮も要請した。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議閉幕後の記者会見で議論の内容を明らかにした。
既に発動された鉄鋼・アルミニウムの輸入制限に関しても改めて撤回を働き掛けたという。ムニューシン氏の
反応については明言を避けた。
麻生氏は会見でG20の議論を総括し「主題が金融から貿易に移っている面は大きい」と指摘した。