【衝撃事件の核心】なぜ…生コン「労組」相次ぎ逮捕
要求するも拒否され
「ストライキに参加してほしい」「(関生支部と関係が深い)組合に加入してくれ」
大阪府警によると、昨年12月上旬、大阪市港区の大手セメント会社が出荷業務を行う
サービスステーション(SS)で、関生支部の幹部が同社から運送業務を委託された業者に
要求を突きつけた。
運送業者が拒否したところ、同12~13日、関生支部の組合員がSSに集結。
車の前に立ちふさがり、出荷業務ができない状態に追い込んだ。労働組合はストライキを
起こすこともあるが、この運送業者には関生支部の組合員はいなかった。
大阪府警は今年9月、この行為について、威力業務妨害容疑などで関生支部の
副執行委員長(52)ら幹部や組合員計16人を逮捕(後に9人が処分保留)。
10月9日には、別の業者に対する同容疑で副執行委員長ら5人を再逮捕するとともに、
新たに組合員3人を逮捕した。
理念掲げるも…
生コン業界にはさまざまな業種がある。生コンを製造する過程では、セメントメーカーが
生コンの原材料にあたる「バラセメント」を各地のSSで貯蔵。それを生コン製造工場に
運び入れて、水や砂を混ぜることで生コンとし、ミキサー車などで工事現場に運び入れている。
関係者によると、各拠点間の輸送を担う運送業者は中小企業が多く、競争による過度な
運賃の値下げを避けるなどの目的で、一部の業者が協同組合を結成。仕事を共同受注することも
あるという。
一方、関生支部は、昭和59年に結成された労働組合で、ミキサー車の運転手らが所属。
ホームページや機関紙などでは「大企業にはさまれた中小企業の労働者が、劣悪な労働環境に
陥ることを防ぐ」などと活動目的を訴えている。
こうした理念を掲げつつ、関生支部をめぐってはこれまでも事件が起きている。
平成19年には、同支部の幹部らが生コンクリート会社に対し、協同組合への加入を迫った
などとして、強要未遂や威力業務妨害罪で有罪判決を受けている。
「ドン」も逮捕
武建一容疑者(76)
労働組合である関生支部が摘発される背景には、協同組合との関係性がみえる。
大阪府警に先立ち、滋賀県警は7~8月、商社の支店長を脅したとする恐喝未遂容疑で、
関生支部トップの執行委員長、武建一容疑者(76)らを逮捕した。大津地検はこれまでに、
恐喝未遂罪で武容疑者らを起訴している。
武被告は、昭和40年ごろから関生支部の前身とされる労働組合の役員として活動し、
昭和59年に同支部を立ち上げた人物。「生コン界のドン」とも呼ばれる。
起訴状によると、武被告らは共謀し、準大手ゼネコンが滋賀県東近江市で進めていた
倉庫建設工事での生コンクリート調達をめぐり、準大手ゼネコンの関連会社である商社支店長に対し、
湖東生コン協同組合(滋賀県東近江市)の加盟業者と契約するよう脅したとされる。
起訴された中には関生支部に加え、湖東生コン協同組合の理事長ら同組合関係者らが含まれている。
「アウト業者」排除の手口
大津地裁で10月に始まった一部の被告の公判で、大津地検は労組の関生支部と、
業者の集まりである湖東生コン協同組合との関係に言及した。
冒頭陳述で検察側は、関生支部が、関西各地にある生コン関連業者でつくる協同組合と
業務提携し、協同組合に加入していない業者(アウト業者)に対し、組合への加入を要求。
こうした活動の見返りに、協同組合の売り上げの一部を報酬として得て資金源としていた-などと
指摘した。
湖東生コン協同組合からは平成24年10月以降、月約100万円が関生支部の関係機関の
口座に入金されていたとし、「関生支部の組合員が、アウト業者の工事現場に出向き、
クレームをつけるなどの嫌がらせをして、アウト業者を排除していた」などと具体的な手口にも
言及した。
冒頭の大阪市港区の事件も出荷妨害を受けたとされる業者は、関生支部と関係が深いセメント
輸送業者の協同組合に加盟しておらず、加入を要求されていた。
大阪府警は、関係が深い組合のアウト業者を排除して、輸送業務を掌握することで、
見返りとして資金を得たり、セメントメーカーなどに輸送業務の値上げなどを要求したりする
狙いがあったとみて、実態解明を進めている。
関生支部はホームページで幹部らの逮捕に関し、「正式な組合活動にほかならず、不当逮捕」との
抗議声明を出している。
連帯ユニオン関生支部による嫌がらせ~企業恐喝の実態(極々ほんの一例)