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中国でカリスマ経営者が次々に退いていく理由 / 民営企業に牙を剥いた中国共産党

2019-09-30 01:40:25 | 中国・中国共産党・経済・民度・香港

中国でカリスマ経営者が次々に退いていく理由

瀕死の中国経済、“ICU入り”で延命措置
 
2019.9.26(木)   JBpress  福島 香織:ジャーナリスト
 
 
アリババ創業20周年記念日の2019年9月10日、会長を退任したジャック・マー氏(写真:新華社/アフロ)

  

 9月10、アリババ創始者で会長だった馬雲(ジャック・マー)が予告どおり引退し、アリババ

経営から完全に離れた。ちょうど55歳の誕生日であり、その前後には、中国メディアが彼の功績や

評伝を書き立てた。また浙江省杭州から「功勲杭州人」という栄誉ある称号を送られたなど、

ポジティブニュースとしてその引退が報じられている。


 だが、その10日後、杭州政府が100人の官僚を「政務事務代表」として、アリババやAI監視

カメラメーカーのハイクビジョン(海康威視)、民族自動車企業の吉利など100の重点民営企業内に

駐在させると発表した。口の悪いネット民たちは「地主を追い出して田畑を接収しようとしている」

と噂した。


 その後、IT企業、テンセント(騰訊)創始者の馬化騰やレノボ(聯想集団)創始者の柳伝志が、

馬雲のあとを追うように次々とビジネスの現場から去ることがあきらかになった。

こうした“早期退職”は決して早々とセカンドライフを楽しみたいから、といった理由からでは

なさそうだ。民営企業からカリスマ創始者たちを追い出し、政府官僚による直接支配が始まりつつある。

中国民営企業の大手術が始まっているのだ。


 だが、この大手術、失敗するのではないか。「中国経済のICU(集中治療室)入り」と言う人もいる。

ICUに入ったまま脳死する可能性もあるかもしれない中国民営経済の危機的状況について、まとめて

おきたい。


テンセント、レノボの代表も退く

 テンセントの創始者で董事会主席、CEOの馬化騰は9月19日、テンセントの子会社で個人信用情報

などを扱う騰訊征信の法定代表職から外れることになった。経営上の問題ではなく、社内の事情に

よるという。もちろん全面的な退職ではないが、馬雲引退の直後だけに、中共政治のサインと

受け取られた。芝麻信用で知られるアントフィナンシャルの会長・井賢棟もこのタイミングで引退を

表明した。


 続いてレノボ会長の柳伝志も聯想ホールディングス(天津)の法定代表、役員の職を辞任した。

柳伝志は17企業の法定代表、7企業の株主、8企業の役員を務めていたが、そうした役職も大部分が

取り消されたという。聯想側は、子会社については随時業務の進行に合わせて、調整、整理しており、

今回の人事などは企業としての正常な業務措置だという。


 柳伝志の後任は、深セン市瑞竜和実業有限公司の法人代表である張欣が務める。

聯想ホールディングス(天津)は2011年11月に資本金50億人民元で登記され、聯想ホールディングス

株式会社と深セン市瑞竜和実業有限公司が50%ずつ出資していた。


 ちなみにレノボグループの筆頭株主は聯想ホールディングス株式会社で25.81%の株を保有、

この会社がグループのコアとして北京に登記されている。この北京の聯想ホールディングスの

5大株主は中国科学院独資会社・中国科学院ホールディングス、北京聯持志遠管理コンサルティング

センター、中国泛海ホールディングス集団、北京聯恒永信投資センター、柳伝志個人で、合わせて

76.81%の株を保有している。


中国共産党が民営企業の改造に着手

 こういった動きについて、チャイナウォッチャーたちの間では、中国共産党政権がいよいよ民営企業の

改造に着手した、という見方が出ている。英国のフィナンシャル・タイムズによれば、アリババ傘下の

芝麻信用と騰訊征信は、かつて中国政府に顧客ローンのデータを提供することを拒否しており、馬雲と

馬化騰の一線からの撤退と関係あるとみられている。


 米国の政府系ラジオ局、ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、こうした動きは中国共産党政府が

クレジットローンに関するすべての情報を独占して管理するためのもので、同時に当局が民営企業と

工商界の企業に対する改造を行い、実質的にコントロールするためのものだ、という見方を紹介している。


 昨年(2018年)、中国政府はアリペイ(支付宝)に対して顧客勘定の100%の中銀準備預金を

義務付けた。これは顧客保護の観点から必要という建前だが、実際はアリペイ口座の余剰資金運用

によるアリババの儲けを政府に差し出せ、という意味でもあった。中国「証券時報」によれば、

今年6月、7月に国有資産委員管理委員会書記の郝鵬が馬雲と馬化騰に直接、中央企業と民営企業の

融合を命じ、中央企業+ネットの混合改造モデルを強化せよと通達したとか。


 ほぼ同じころ、民営企業が多い浙江省杭州市や山西省太原市、北京市などは、政府官僚や党委員会の

民営企業に対する干渉を強化する政策を打ち出した。杭州市は、民営100企業内に市政府官僚駐在

事務所を開設、太原市では財務管理部門をテスト的に接収するなどの方法で経営にコミットし始めた。

北京では党委員会が民営企業内の「党建設工作」展開状況の調査を開始するという通達を出した。

 こうした動きは、建前上は、民営企業の腐敗や野放図な経営を共産党が厳しく管理し、指導すると

いうものだが、実質は、政治上は民営企業を絞め殺し、経済上は民営企業の私有財産を接収すると

いうことに他ならない。


計画経済に立ち戻る習近平政権

 習近平政権が経済政策の目玉として打ち出している国有企業改革は、いわゆる「混合企業改革」

と言われるもので、汚職や不正経営、経営破たんを理由に民営企業の経営権を国有企業に接収させる

ことで、国有企業を大規模化して市場独占化を進め、国有企業を通じて共産党が市場に対するコント

ロールを強化するものだ。


 これは改革開放期の「国退民進」(国有企業を民営企業に移行することで市場経済化を進める)とは

真逆の方向性だとして「国進民退」政策だと言われた。あるいは50年代の「公私合営」政策への

回帰とも言われた。この結果、民営企業家たちが委縮し、今の中国経済の急減速の主要な原因の

1つになったというアナリストは少なくない。


 目下、米中貿易戦争の行方は中国にとって楽観的な観測を許さない。確実に中国経済にボディー

ブローのように効いており、経済統計上にもはっきりと予想以上の中国急減速がみてとれる。


 首相の李克強は9月16日、ロシア訪問前にロシアの国営通信社、イタルタス通信に対して、

今年通年の中国経済成長が、全人代の政府活動報告で目標に掲げた6~6.5%を達成できずに6%を

切る見通しであることを語っている。党中央内部ではその責任を習近平に求める声も強い。

一方、習近平政権としては、この経済危機を“計画経済”に立ち戻ることで乗り越えようとしている。

その表れが、今年に入っての民営企業のカリスマ創始者の現場からの排除や、党官僚の進駐や財務の

接収などの動きだと見られている。


中国経済はすでに瀕死の状態?

 ラジオ・フリー・アジアのコラムニスト、梁京が書いた「中国経済がICU(集中治療室)に入った」

というタイトルのコラムを読み、なるほど、と思った。ちょっと引用して紹介したい。


「中国共産党70周年前夜、当局は大型民営企業の直接支配を急ぎ始めた。しかし、中央宣伝部は

こういう重大事態の展開について、なんら発表していない。これは中国共産党が50年代に鳴り物

入りで行った『公私合営』とはっきりした対比をなしている。つまり当局もわかっているのだ。

国家が民営企業に進駐して干渉することが決してよいことではないということを」

「・・・中国の民営企業の経営者たちは党に搾取されっぱなしでいることに甘んじてはいなかった。

(元北京の政商であった)郭文貴は造反して米国タカ派の支持を得るようになったが、

以降、大型民営企業の経営者の政治的不忠義は中国共産党の悩みの種となっていた」

「現在、共産党が民営企業のコントロール強化を急いでいる背景には、米中貿易戦争が89年の

天安門事件以来最悪の危機を中国経済にもたらしていることが大きい。豚肉価格が高騰し、食糧生産

規模も年々縮小している。中国は悪性インフレに陥る可能性が高い。・・・中国経済はすでに瀕死に

直面している」

「では、かつてゴードン・チャン(2001年に「やがて中国の崩壊が始まる」を書いたエコノミスト)

が予測したように、いよいよ中国経済は崩壊するのか?・・・中国経済が崩壊する可能性は実際に

増大しているが、さらに大きな可能性は、中国経済がかつて前例のない実験を行う可能性だ。・・・

私はそれを“ICU経済”と呼ぼう。つまり共産党による経済管制による延命だ」


 以前、中国の体制側アナリストと雑談をしたとき「バブル崩壊もミンスキー・モーメントも

自由主義市場経済の体制で起こるもので、統制経済では起こりえない。だから習近平政権の党による

市場コントロール強化政策は正しい」という見方を説明された。梁京の言う“ICU経済”はまさにこの

アナリストの説明と同じで、経済を絶対安静にして、呼吸も心拍も中国共産党によって管理して

延命しようということだろう。

 梁京は、この共産党による完全なる経済コントロール、“ICU経済”実験を継続するためには2つの

条件が必要だという。ハイテク技術、デジタル貨幣などの技術。そして外部世界の中国経済が崩壊

しないでほしいという強い願いである。つまりICUで、たとえ多臓器不全でも延命させるためには、

それだけの先端医療技術とそれを強く願う周囲の意志が重要だ、ということである。


 だが、延命と回復は全く違う。国際社会の大勢が「中国経済が破たんすれば大変だ、破綻させては

ならない」と思っており、中国はハイテク技術と極権体制を持っている。確かに延命は可能かもしれない。

だが回復しない経済をただ維持するためだけに、いったい中国はどれだけの犠牲を払うことになるのか。


 今、中国は、老衰で死期間近い、中国の特色ある社会主義市場経済体に、西側グローバル市場で

生き抜いてきた民営企業の臓器を移植して延命を図る大手術を行おうとしている、と例えることができる。

本当に救わねばならないのは民営企業の方ではないか?


「もし中国人が、中共が自然死を迎える方策を探せないのなら、中国経済はある種の“ICU病室”で

奇跡の“長寿”をかなえるかもしれないが、その“奇跡”はすべての人にとって巨大な厄災を意味する」

(梁京)

 この厄災を防ぐためにどうするか。それが今考えるべきことではないか、と思う。


大物経営者が相次ぎ要職を退任 民営企業に牙を剥いた中国共産党

2019年09月29日 01時16分   THE EPOCH TIMES  (大紀元日本ウェブ編集部)

テンセントの馬化騰会長。写真撮影は2014年3月(余剛/大紀元)

 


中国IT最大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)創業者の馬化騰氏と、パソコン最大手の

聯想集団(レノボ・グループ)の創業者である柳伝志氏がこのほど、関連会社の要職から退いたと

報じられた。アリババ集団の創業者馬雲(ジャック・マー)氏が9月10日、同社の会長を退任した

ばかりだ。

 


大物経営者に起きた不穏な動きが憶測を呼んでいる。中国共産党政権が「公私合営」という名のもとで

民営企業の国営化を進める動きを見せているためだ。

 

浙江省杭州市政府はこのほど、市内にあるアリババ集団などの大企業に100人の幹部を配置し、

民営企業への統制を強化している。

 

また、インターネットでは、山西省は民営企業の財務業務を当局からの職員が担当する取り組みを、

一部の地区で実験的に行っているとの情報が出ている。

 

 

相次ぐ退陣

 

中国紙・新京報19日付によると、馬化騰氏はテンセント傘下の「騰訊征信」(テンセント・クレジット)

の法定代表と執行取締役を退任した。騰訊征信は2015年3月17日設立。同社は個人の信用力を

スコアリングする企業だ。ユーザーに関して過去の公共料金の支払い状況などの個人情報をアプリで

収集し、これを基に信用スコアを算出する。同社は2018年1月末に同サービスの公開テストを全国で

開始した。

 

報道によると、テンセント側は今回の人事異動は社内業務の必要性に応じたもので、会社の経営状況とは

関係していないとの声明を出した。

 


また、中国メディア「21世紀経済報道」などは23日、レノボ・グループの創業者で会長の柳伝志氏が、

関連企業の聯想控股(天津)有限公司の法定代表と取締役を退任したと報じた。

 


国内の報道は、柳氏と関わる企業が25社あるとした。同氏は17社の法定代表と、7社の株主、8社の

上層幹部をそれぞれ務めている。しかし、企業情報を公開するウェブサイト「啓信宝」では、同氏が

法定代表を務める企業のうち、聯想控股股份有限公司(レノボ・ホールディングス)を除き、

他の企業に関して「市外に移転」または「登記抹消」となっているという。

 

聯想控股(天津)有限公司は2011年11月設立。レノボ・ホールディングスと深セン市にある瑞龍和実業

有限公司がそれぞれ50%の株式を持つ。

 

レノボ・ホールディングスは同時に、レノボ・グループの筆頭株主で親会社である。

 


中国国内金融情報を提供する「Wind数据」によれば、2018年6月30日の時点で、中国科学院控股有限

公司、北京聯持志遠管理諮詢センター、中国泛海控股集団有限公司、北京聯恒永信投資センターは、

柳伝志氏が、レノボ・ホールディングスの5大株主で、同社の76.81%株式を保有する。

中国科学院控股有限公司は、中国当局直属の最高研究機関である中国科学院が100%出資する国有

独資企業だ。

 

 

民間企業への介入を強化

 

中国当局は民間企業への介入を強化する動きを見せている。

 


杭州市政府は20日、幹部100人を「政府事務代表」として、市内にある電子商取引最大手のアリババ

集団、自動車メーカーの吉利汽車、監視カメラメーカーの海康威視数字技術(ハイクビジョン)など

大手100社あまりに派遣した。これによると、杭州市政府が「新製造業計劃」に取り組んでおり、

民営企業に政府幹部を派遣する意図は「企業のために、各種の政府関連の事柄を調整する」ことに

あるとした。

 


昨年から、中国政府関係者は「民営企業退場論」や「公私合営」を唱えるようになり、中国当局が

民営企業を飲み込むための地ならしと見なされている。

 


2018年9月11日に「金融通」と自称する呉小平氏は中国メディアで掲載された記事で、

「中国では民営経済はすでに公有制経済の発展を手助けするという役割を終えており、徐々に退場

すべきだ」と述べた。呉氏は、「国有経済と融合した、より大規模な公私混合制経済が今後の

経済社会の主役になるだろう」と主張した。

 


同じ日に、人力資源・社会保障部の邱小平副部長は、「全国民営企業民主管理会議」で、民営企業が

従業員の主体的地位を堅持し、従業員にも企業管理に参加してもらい、企業発展の成果を共有して

もらうべきであり、これを実現するために、共産党の指導の強化が必要であると強調した。

この発言が、民営企業の国有化への第一歩となった「公私合営」を進めようとするシグナルであると、

解釈された。

 


中国の国政助言機関である全国政治協商会議の袁愛平委員(湖南省選出)は邱小平副部長の発言の翌日、

同省の大手企業の社長十数人から「今後、国は民営企業に退場を迫ると政策を転換させたのか」と

問い合わせが相次いだと話した。「企業家らは恐怖に陥った」

 


当局はその後、民営企業の役割を高く評価し、今後も支援すると民営企業退場論を否定した。

しかし、民営企業に党支部の設置を要求するなど支配を強めている。

 


近年、反腐敗運動で民営企業の企業家は相次ぎ摘発された。銀行や保険会社、不動産開発業者などを

傘下に置く持ち株会社、明天グループの肖建華会長は2015年1月、香港から本土へ連行された。

英紙フィナンシャル・タイムズ2018年の報道によると、拘束された後、400億元(約6600億円)の

個人資産を持つ同会長は当局の要求に従い、資産の売却を進めている。

 


安邦保険集団元会長の呉小暉氏は2017年6月に拘束され、その後の裁判で詐欺と職権乱用の罪で

懲役18年の実刑判決を言い渡された。当局は呉氏の個人資産105億元(約1800億円)を没収し、

安邦保険集団を政府の管理下に置いた。

 


公私合営は50年代にも実施されていた。「社会主義改造」を推進する当局は12万社の企業に公私合営を

迫った。これを拒否した企業家は死刑を言い渡されたり、いわれのない罪名で投獄されたりした。

将来を悲観し、自殺を図った人が後を絶たない。1966年、これらの企業は全部「国有化」された。

 


米中貿易戦争で中国経済が悪化するなか、この局面を乗り越えるために中国当局は「計画経済」に

戻るための布陣に着手した、という情報が出ている。

 


一方、米ケイトー研究所の客員研究員である夏業良氏は、当局が資金の海外流出と大規模な失業など、

これから起こりうるリスクを防ぐため、公私合営を進めていると分析した。「しかし、これは恐ろしい

ことだ。今後、民営企業、外資企業も共産党の支配下に置かれることになる」

 

無事に身を引いた民営企業の経営者はむしろ幸運かもしれない。

 

 

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