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IS最高指導者の最期、作戦「まるで映画」 トランプ氏が詳細明かす。/【WSJ社説】バグダディ容疑者死亡の教訓 収監者の尋問、同盟勢力、前方展開した米軍部隊が攻撃を成功させた

2019-10-29 09:34:47 | ISIS・過激武装勢力

IS最高指導者の最期、作戦「まるで映画」 トランプ氏が詳細明かす

2019年10月28日 12:09 発信地:ワシントンD.C./米国   AFP

イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が死亡したと発表する米国のドナルド・トランプ大統領(2019年10月27日撮影)


【10月28日 AFP】暗闇の中、敵地を低空飛行する8機のヘリコプターから始まった作戦は、2時間後に

世界の最重要指名手配犯の一人が米兵たちに追い込まれ、自爆したことで終結を迎えた。

 

 数千マイル離れた米国では、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がホワイトハウス

(White House)のシチュエーションルーム(緊急対応室、Situation Room)で、イスラム過激派

組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)容疑者の

驚愕の最期を映像で見届けたと発表した。

 

「まるで映画を見ているかのようだった」──トランプ氏は、そう語った。映像はマイク・ペンス

(Mike Pence)米副大統領や軍高官らとともに見たという。

 

 27日の会見後の質疑応答でトランプ氏は、バグダディ容疑者が「数週間にわたって監視下にあった」

と明かした。

 

 同容疑者の位置情報が確認されると、特殊部隊による急襲作戦が26日に開始された。トランプ氏に

よると、「大規模」な部隊が任務に就いた。「ヘリコプター8機に加え、多くの艦艇や戦闘機も出動した」

という。

 

 部隊はまず、現時点では未公表の地点から敵地内を約1時間10分飛行してシリア北西部へ進入。

トランプ氏は「非常に低い位置をかなりの速さで移動した。だがこれは作戦の中で重要で、非常に

危険な過程だった。進入し、機外へ出た」と述べ、「途方もない攻撃に遭う可能性があった」と明かした。

 

 そして部隊が標的の建物に着陸すると、「大混乱が巻き起こった」という。

 

「最後に残った1人」

 トランプ氏はさらに「優秀な戦闘員らの大部隊がヘリコプターから走り出し」、扉の仕掛け爆弾を

避けるために「建物の横を爆破して穴を開けた」と説明。「見ていて本当に素晴らしいものだった」

「われわれは映像をはっきりと見届けた」と語った。

 

 また「部隊は射撃による猛攻で迎えられた」とも明かし、米軍の反撃でバグダディ容疑者の

支持者らが「大量に」死亡したが、米兵の死者はなかったとも述べた。

 

 司令官らは順次、進行状況を中継報告した。11人の子どもたちが連れ出され、捕虜たちが連れ

出された。バグダディ容疑者の妻たちが死亡した……。

 

 そして、誰もが待っていた報告が届いた。トランプ氏はその報告を振り返って語った。「建物内に

残っているのは1人だけです。彼は逃げようとしてトンネル内にいますが、このトンネルは行き

止まりです」

 

 そこにいたのは、バグダディ容疑者だった。

 

 米軍はこの建物にトンネルがあり、バグダディ容疑者が自爆ベストを着ている可能性があることを

把握していた。米軍はロボットも用意していたが、使用されることはなかった。

 

「わが軍は、ものすごいスピードで迫っていた」「彼らは(容疑者を)追いかけていた」とトランプ氏は

説明した。

 

 バグダディ容疑者は、自らの子ども3人を連れてトンネルに入った。しかし、子どもたちの存在で

運命を避けられるわけではなかった。米軍が軍用犬をトンネル内に送ると、ISの黒幕バグダディ氏は

「自爆した」。

 

「われわれの犬が追い詰め、彼はトンネルの終わりに突き当たった。そして自爆ベストを爆発させて、

自分自身と3人の子どもたちを殺した」とトランプ氏は述べた。

 

「彼は英雄として死を遂げたのではなく、臆病者のように泣き叫びながら、3人の子どもたちを巻き

添えにして死んでいった。死あるのみだった。彼は、トンネルが行き止まりなのを分かっていた」

 

 米兵らは散乱したバグダディ容疑者の遺体からDNA鑑定のためのサンプルを採取し、持ち出した。

米部隊は建物内に約2時間いたという。

 

「わが軍の側は誰も死んでいない」とトランプ氏は述べたが、実際には負傷した一員がいた。

「われわれの犬は負傷した」

シリア北西部イドリブ県のバルシャ村で、ヘリコプターによる攻撃で破壊された一帯。米メディアは同県への攻撃でイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が死亡したと発表。英国に拠点を置くシリア人権監視団によると、このヘリコプター部隊は米軍主導の連合軍のものとみられている(2019年10月27日撮影)

 

 

 


IS指導者急襲作戦の映像、米国防総省が公開

シリアで、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が潜伏していた建物。左は米軍による急襲作戦の前、右は10月26日の急襲作戦後の様子。米国防総省公開(2019年10月30日公開)

 


【社説】バグダディ容疑者死亡の教訓

収監者の尋問、同盟勢力、前方展開した米軍部隊が攻撃を成功させた

  2019 年 10 月 28 日 10:16 JST    WSJ  By The Editorial Board 

 イスラム過激派のホームぺージに4月29日付けで投稿されたビデオに映ったバグダディ容疑者とされる人物 

 
 
 過激派組織「イスラム国(IS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が、米特殊部隊の

攻撃を受けて死亡した。これでイスラム過激派の脅威が終わったわけではない。

しかしこれは米国の対テロ戦略の重要な勝利であり、今後に教訓を与えるものだ。


 ドナルド・トランプ米大統領は27日朝、ホワイトハウスで「彼は胸が悪くなるような邪悪な

男だったが、もはや存在しない」と語った。トランプ氏によれば、米軍はバグダディ容疑者の動きを

「数週間にわたって」監視し、夜間に急襲をかけた。バグダディ容疑者はシリア北部イドリブ付近の

トンネルに追い込まれ、自爆用のベストを爆発させた。


 トランプ氏が「危険で大胆な」作戦と呼んだこの攻撃で、米兵の死者は出なかった。失敗し犠牲者を

出すリスクを必然的に伴うこの急襲作戦を承認したことは、トランプ氏の功績だ。

バグダディ容疑者の死は、残虐な行為に彩られた彼の経歴から判断して、まさに正義を行ったという点で

重要だ。そして今回の出来事は、他のジハーディスト(イスラム聖戦主義者)らに対し、彼らが勝利を

得ることはなく、バグダディ容疑者と同様にトンネル内で、あるいは爆弾の爆発によって死ぬ運命だと

伝えることになった。


 今回の攻撃は、収監者から得られた情報の重要性を示した。イラク当局者らによれば、拘束した

IS戦闘員らに対するここ数カ月間の尋問によって、バグダディ容疑者の潜伏場所の情報が得られたという。

イラク戦争後、米国の左派勢力は、尋問の有用性に疑問を生じさせようと努めてきた。しかしこうした

尋問は、今後のテロ攻撃を防ぎ、テロリストのリーダーを殺害するために、依然として必要不可欠だ。


 もう1つの教訓は、米軍および米国の同盟勢力が現地にプレゼンスを持つことの重要性だ。米国と

同盟関係にあるクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」の司令官マズルム・アブディ氏は、

「現地で5カ月間にわたる合同の情報協力があった」とツイートした。


 シリアおよびイラクに展開する米軍は、(相手の射程外から攻撃可能な長距離巡航ミサイルなど)

スタンドオフ型の兵器を使うのではなく、地域を知る同盟勢力と協力して、急襲作戦を練ることができた。

このため、米軍は故オサマ・ビンラディン容疑者の急襲作戦のときのように情報を集められた。

このような急襲作戦は、前方で展開する部隊がいなければはるかに困難だっただろう。前方展開する

部隊は、テロリストとの戦いを自らの勢力範囲に持ち込むことができる。これは、ビンラディン容疑者

が1990年代に行ったような、自らの聖域で米国での攻撃の計画を立てるのを可能にした状況とは異なる。

 

 この地域的な圧力を維持することは極めて重要だ。なぜなら、ジハーディストの勢力は新たな指導者の

下で再結成する可能性があることが分かっているからだ。それこそ、2011年にオバマ大統領(当時)が

米軍のイラクからの全面撤退を命じた後に、バグダディ容疑者が行ったことだった。

バグダディ容疑者はシリアとイラク西部にまたがる地域にイスラムの「カリフ制国家」を創設し、

少数民族やその他のイスラム教徒を恐怖に陥れたり、カメラの前で米国人やアラブ人キリスト教徒を

斬首したり、欧米諸国に対するテロ攻撃を促したりした。


 こうした経緯があるため、オバマ氏の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたスーザン・ライス氏

が27日にCBSテレビの「フェース・ザ・ネーション」で、「圧力を弱めてはならない。でなければ、

これらのグループの再集結を避けられないからだ」と述べたことは、ずうずうしいように感じた。

同氏はまた、トランプ氏が最近シリア北部から米軍を撤退させたことを批判した。このコラムも同様な

批判を行っている。しかし、それはまさにライス氏の上司がイラクでやったことだ。ISはそのおかげで、

シリアとイラクの広範囲の地域を支配下に置くことができた。恐らく、ライス氏は今回の件に口を

出さずにいるべきだろう。


 トランプ氏は、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領との電話会談後にシリア北部から

米軍を撤収させるという衝動的な決定を行って以来、さまざまなシグナルを発してきた。

トランプ大統領は現在、現地の油田地帯を監視するのに十分な米軍地上部隊を維持したいとの意向を

示し、メディアにリークされた発言によれば、国防総省はその一環として戦車を配備する可能性も

あるという。このことは、トランプ氏が孤立主義者たちの前で使いたがる「簡単だ」という言葉ほど、

米軍の撤収が容易でないことを示唆している。


 バグダディ容疑者を標的とする急襲作戦は、油田の安全確保以外のためにもテロリスト対策を目的と

する米軍駐留の維持が必要であることを明確に示すものとなった。米国本土で、国外のジハーディストが

計画したり、あるいは外国勢力の影響を受けたりした攻撃が成功した例は、ここしばらくはない。

これは偶然によるものではない。それは、同盟勢力と協調し、ジハーディストが世界中のどこに

いようとも追い詰めようとする、米国の絶え間ない安全保障・情報分野の活動の結果だ。


 トランプ氏は状況によっては、そのことを理解しているように見える。イドリブでの急襲作戦成功の

余韻に浸っているトランプ氏は、依然として危険な国際情勢を踏まえ、シリアからの撤収について

再考すべきだ。