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南シナ海問題はもはやグローバルな問題である

2019-02-10 15:55:57 | 南シナ海・東シナ海

南シナ海問題はもはやグローバルな問題である

2019年2月6日   WEDGEInfinity   岡崎研究所

1月17、18日にタイのチェンマイでASEAN外相会議が開催され、ミャンマーのロヒンギャ問題、

南シナ海問題などが話し合われた。ここでは、南シナ海問題を取り上げる。18日に発出された

議長報道声明のうち、南シナ海に関する部分は次の通り。


 我々は、南シナ海における、平和、安全、安定、航行と上空飛行の自由を維持・促進することの重要性を

再確認し、南シナ海を平和、安定、繁栄の海とすることの利益を認識した。

我々は、2002年の「南シナ海行動宣言(DOC)」が完全かつ実効的な形で実施されることの重要性を

強調した。

我々は、ASEANと中国との継続的な協力強化を歓迎するとともに、相互に合意したタイムラインに沿って

実効性のある「南シナ海行動規範(COC)」の早期策定に向けた中身のある交渉が進展していることに

勇気づけられた。

我々は、ASEAN加盟国と中国が単一のCOC交渉草案に合意していることに留意し、2018年11月に

シンガポールにおける第21回ASEAN首脳会議で発表された通り、2019年中に草案の第一読会を終える

ことを期待する。

この点に関して、我々は、COCの交渉に資する環境を維持する必要性を強調した。

我々は、緊張、事故、誤解、誤算のリスクを軽減する具体的措置を歓迎する。

我々は、相互の信用と信頼を高めるため、信頼醸成と予防的措置が重要であることを、強調した。


 我々は、南シナ海に関する問題を議論し、地域における埋め立てへの一部の懸念に留意した。

我々は、相互の信用と信頼を高め、自制して行動し、事態を複雑化させる行動を避け、国連海洋法条約

(UNCLOS)を含む国際法に沿って紛争を平和的に解決することの必要性を再確認した。

我々は、全ての領有権主張国、あらゆるその他の国による全ての行動において、非軍事と自制が重要で

あることを強調した。


 南シナ海をめぐっては、2017年11月にフィリピンが議長国を務めたASEAN首脳会議の際に

「懸念」の文言が削除されたが、シンガポールが議長国となった昨年に同文言が復活し、

タイが議長国を務める今年も維持された。

今回の外相会議では、ベトナムとマレーシアが南シナ海への懸念を表明したと報じられている。

ベトナムは一貫して対中強硬姿勢を維持してきた国であり、マレーシアは昨年マハティールが首相に

復帰して以来、前政権の対中傾斜を大きく強く軌道修正している。「懸念」の文言は、中国による

南シナ海の軍事化の加速の前では無力と言わざるを得ないが、こうした国々が、南シナ海問題をめぐり

ASEANの中でどれだけ声を上げていくのか、行動を示していくのか、今後とも注目される。


 COCについては、早期策定に向けた具体的な日程が示された。声明では「相互に合意したタイムライン」

とあるが、中国の李克強首相は昨年11月のASEAN首脳会議に際する関連会議で2021年までに妥結したいと

表明している。今回の議長を務めたタイのドン外相は記者会見で、早期妥結が可能である旨、述べている。

2021年よりも早く妥結もあり得るという話もある。


 しかし、ASEANと中国との間で昨年8月に合意されたとされるCOC草案は公表されていない。

法的拘束力を持たないものになるのではないかとも言われている。中国は軍事活動通告のメカニズムも

提案している。域外国と合同軍事演習を実施する場合、関係国に事前通告しなければならず、反対があれば

実施できない、という内容である。例えば、ASEAN加盟国が米国と合同演習をしようとしても、中国が

反対すれば、実施できないことになる。仮に、こういう内容のCOCになってしまっては、かえって有害と

言えるかもしれない。


 南シナ海問題は、もはや地域の問題ではなくグローバルな問題である。航行と上空飛行の自由を

確保するための主要各国の取り組みが重要であり、実際に、そのようになってきている。

米豪だけでなく英仏など欧州の国も「航行の自由作戦」(あるいはそれに準ずる行動)を実施し始めた。

英国のウィリアムソン国防相は、最近、シンガポールあるいはブルネイに基地を置くことについて言及した。

南シナ海における英国のプレゼンスを維持するため、補給・維持修理の要員と補給艦を配備するという

ことのようである。また、フランスも、インド太平洋の海洋秩序維持のため、日本との協力を進めつつある。
 

出典:‘Press Statement by the Chairman of the ASEAN Foreign Ministers’ Retreat’(17-18 January 2019)

 
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