EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

政治・経済・生活・商品情報などさまざまな話題で情報を発信してます。

中国の住宅市場に沈静化の兆し。購入者は怒りの抗議 。 不動産ブーム過熱の抑制、ついに効果が出始めたか

2019-11-12 09:49:23 | 中国・中国共産党・経済・民度・香港

 中国の住宅市場に沈静化の兆し。購入者は怒りの抗議

不動産ブーム過熱の抑制、ついに効果が出始めたか

 https://jp.wsj.com/articles/SB11700520728564973312004586000623211398598?mod=article_inline

 

 

 【天津(中国)】中国の不動産開発会社のショールームが入居する30階建てビルの屋上に立った

29歳の女性は、今にも飛び降りようとしていた。女性は、最近購入した住宅の価格が下落したことで

生活が破壊されたと主張した。


 明かすのは名字だけにしてほしいというホー(Hou)と名乗るこの女性は、2日に天津の不動産会社の

販売事務所に集まり、怒りをぶつけた住宅購入者の一団の1人だった。天津は北京から1時間ほどの

距離にある港湾都市だ。彼らは、購入した建設途中のマンションの価格下落を受けて、代金の返還を

要求していた。


 中国当局者は近年、住宅購入ブームの過熱と住宅価格の高騰を抑制するため、不動産開発業者への

資金供給を引き締め、住宅購入者への融資規則を厳格化してきた。中国政府はこれまで一貫して

「マンションは住むためのものであり、投機のためのものではない」とのメッセージを発してきた。

 

  天津の住宅購入者の怒りは、こうした政府の戦略がようやく機能し始めた兆候だ。住宅価格の

上昇ペースは中国全土で鈍化し、少なくとも一部の大都市では価格が下落するケースも出てきた。

住宅購入のために生涯を通じて貯蓄してきた人々の一部は、住宅購入がこれまで思い込んでいたような

確実な投資にならないことに気付き始めている。


 天津にある融創中国控股(サナック・チャイナ・ホールディングス)の販売センターでは、

アップビートでポップな電子音楽が流れる中で、住宅購入者らが顧客サービス担当者を取り囲み、

同社が販売価格を大幅に引き下げた理由を問い詰めていた。


 1人の女性は「住宅価格が下落することはないと、あなたは私に約束したはずだ。私はこの住宅の

せいで破産した」と叫んでいた。顧客サービス担当のユー・シー(Yu Xi)氏は無表情のまま、

自分にできることはほとんど何もないと説明した。


 ホーさんは、ある時点でしびれを切らし、エレベーターでビルの屋上に上った。その後、建物の

張り出し部分によじ登り、屋上から8フィート(約2.4メートル)の高さにまで上った。30階から

地上に飛び降りるほど危険な状況ではなかったが、警察と他の住宅購入者はそこから下りるか、

でなければ、そこに座るよう説得を試みた。彼女は会社の責任者と話すまでは動かないと言った。


 ホーさんは集まった人たちに向かい、「あなたたちは私に死ねと言っているのと同じだ」と言った。

その中にはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記者もいた。彼女は携帯電話を左手に持ち、

遠くを見つめていた。


 先週末には、サナックのショールームの前でデモが発生した。ここ数週間、住宅価格の下落を

めぐって何件かのデモが起きている。2日の土曜日には十数人の警官が駐車場をパトロールした。

融創はコメントを控えた。


 上海に本拠を置く調査会社、易居研究院(イーハウス・チャイナR&Dインスティテュート)の

推計によると、天津では中古住宅の平均価格が前月比で3カ月連続の下落となった。住宅価格は

北京のほか、同国南部の広州を含むその他の大都市でも下落している。中国全体で見るとまだ上昇して

いるが、ペースはかなり鈍っている。

 

 近年、生活費が安く、住宅規制が厳しくない天津のような都市は、若い住宅購入者を多く引きつけて

きた。ホーさんがWSJに語ったところによると、彼女と夫は4歳の子により良い教育の機会を与える

ために隣の河北省から天津に移り、融創のマンションを150万元(約2330万円)で購入した。

60%の頭金が必要だったため、夫妻は約10万元の貯金を取り崩し、残りを親戚やオンライン融資

サービスからの借金でまかなった。

 

活費が安く住宅規制が厳しくない天津のような都市は、若い住宅購入者を多く引きつけてきた 


 マンション購入は、夫妻を金銭的に追い込んだ。夫妻の月収はおよそ8000元。作業着メーカーの

営業部門で働くホーさんは「住宅ローンに月3700元払わなければならない。親戚から借りたお金とは

別にだ」と語った。この他にオンライン融資サービスに対する借金もあるため、彼女はいくつかの

パートの仕事を掛け持ちしている。「息をつく暇もない」と話す。

 

 投機的な不動産購入を阻止するための政府の試みは、長年無視されていた。中国では物価が着実に

上がり続けていたほか、不動産取引の利益による富の蓄積が圧倒的に多かったからだ。

香港の不動産仲介大手、中原地産(センタライン・プロパティー・エージェンシー)のアナリストで

北京を拠点とするチャン・ダウェイ(Zhang Dawei)氏は、中国では「住宅は金融商品の1つだ」と

指摘し、「価格が上がれば上がるほど、需要も増える」と話した。

 

 中国の不動産市場が全体的にピークに達したかどうかを見極めるのは余りにも時期尚早だ。

中国の70都市の平均住宅価格を調査した公式統計によれば、中古住宅価格は9月に前年同月比で

4.6%上昇した。8月の同5.3%の上昇は下回っているものの、健全な水準だ。


 しかし、北京に拠点を置くセンチュリー21グローバルの不動産担当者サン・ユエ(Sun Yue)氏に

よれば、北京の住宅所有者の一部は買い手を引きつけるよう希望売却価格を10%かそれ以上引き

下げている。サン氏は、住宅価格は今後数カ月間にわたりさらに下落するものの、その後は再び上昇

すると予想している。


 中国の指導者たちは、住宅価格が過度に上昇したり急落したりせずに安定することを望んでいる。

7月に開催された中国共産党中央政治局会議で、政策立案者らは投機が過熱し、家計債務が拡大するのを

警戒し、不動産市場の規制を緩和しない方針を示した。政策立案者らは既存の規制措置が不動産市場を

平静状態へ徐々に回復させることを期待していた。


 住宅価格の冷え込みや社会不安の兆しに直面した南京、天津をはじめとする一部地方政府は不動産

価格が再び押し上げられることを期待して規制措置の微調整に動いている。地方政府の多くには不動産

市場をてこ入れしなければならない独自の理由がある。経済成長目標を達成するため、不動産販売に

大きく依存してきたからだ。


 天津では、怒った一部の住宅購入者が自治体当局からの支援を要求したが、当局からは、価格下落は

「自由市場の動きによるものだ」との説明を受けた。彼らによれば、サナックが提示したのは駐車場

料金の引き下げなど不満足な対応策だけで、購入住宅の契約を解除するには高額な違約金を支払えと

迫った。

抗議の座り込みで夜を明かすため、サナックの販売センターに向かうホーさん 

 ホーさんは数時間後、警官によって建物の張り出し部分から引き戻された。何も成果なく自宅に

戻りたくなかったホーさんは、サナックの販売センターで一晩を過ごすため、自分の車からひざ掛けと

スリッパを取り出した。