倒産の嵐で雇用低迷 中国当局、対策を打ち出すも改善困難の声
中国では景気減速が続いている。李克強首相は5日、国内雇用環境の安定化を図る新措置を講じた。
従業員の雇用を維持する企業に対して、企業が納付する失業保険料の一部を返還するという。
米中貿易戦の影響、税金、従業員への福利厚生負担増などで苦しむ民間企業に対する一時的な
救済措置とみられる。しかし、専門家は、同措置では雇用市場を改善できないとの見方を示した。
官製ウェブサイト・中国政府網が5日掲載したニュースリリースによると、新措置では保険加入企業のうち、
従業員をリストラしない、またはリストラされた従業員の人数が少ない企業に対して、今年上半期に
納付した失業保険料の50%を返還する。雇用安定を強化していくという。期間は2019年1月1日から
12月31日まで。
中国共産党中央政治局は7月31日に開かれた経済政策会議で、中国経済情勢は「安定の中に変化があり、
いくつの新たな問題や試練に直面している」とし、厳しい見通しを示した。
雇用、金融市場、外資企業など6つの分野での安定強化を今後の課題とした。
在米中国経済評論家の秦鵬氏は、雇用悪化の主因は2つあるとした。
1つ目は、米中貿易戦の影響で外資企業や中国企業が次々と、生産拠点を中国から他国に移転したことにある。
また、中国当局が最近掲げた「国進民退(国有経済の増強と民有経済の縮小)」政策も、失業者の
急増に大きく関係しているという。
中国ではこのほど、雇用低迷に関する報道が増えている。財新網11月28日付によると、
国内雇用低迷のため「202万件の求人広告が消えた」という。この記事は掲載後、間もなく削除された。
ポータルサイト・網易は10月22日、「今年上半期国内504万社が倒産、失業者数200万人超」との
タイトルの付いた記事を掲載した。財新網と同様に、その後取り下げられた。
中国当局が、失業者の人数急増によって社会的不安が急速に広がると危惧して、情報統制を強めたとみられる。
いっぽう、中国求職情報サイト「智聯招聘」が10月23日に発表した統計によると、2018年7~9月期の
求職申請者数は4~6月期と比べて、24.37%減少した。企業側の求人数は同20.79%縮小した。
また、7~9月期のIT関連企業の採用者数は前年同期比51%減となった。
中国メディアは10月、中国電子商最大手のアリババ集団や京東、通信大手の華為(ファーウェイ)などの
大企業は人員削減を計画していると相次いで報じた。中国雇用および国内経済は厳しいことを示唆する。