米韓会談、文氏は北朝鮮問題を打開できるか。
11日にトランプ氏と会談、非核化交渉再開を目指す
【ソウル】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は同盟国である米国と北朝鮮を対話の席に
着かせることで仲裁役を果たした。いま直面している課題は、金正恩朝鮮労働党委員長に核兵器の
放棄を促すため、米朝双方に譲歩するよう説得することだ。
ドナルド・トランプ米大統領と金正恩氏が2月にハノイで行った米朝首脳会談は、米側が
非核化を求め、北朝鮮側が経済的見返りを求める中で決裂した。
11日にホワイトハウスで開かれる文大統領とトランプ氏の米韓首脳会談では、朝鮮半島を戦争の
瀬戸際から引き戻した緊張緩和の動きを文氏が前進させることができるかどうかが焦点となる。
韓国の安全保障当局幹部は9日、3度目となる文氏のワシントン公式訪問の目的は、米朝交渉の
ロードマップ(工程表)を作成し、非核化交渉再開の道筋を付けることだと述べた。こうした
取り組みの一環として、文政権はトランプ氏に6月末までの訪韓を要請する予定だという。
もし文氏が非核化交渉の次のステップに向けた約束をトランプ氏から引き出せなければ、
金氏に見放されかねない。北朝鮮政府系のウェブサイトは今月、文政権は南北協力で結果を出せず
「米国と保守派の圧力に公然と屈した」と批判した。
ソウルのシンクタンク、峨山政策研究院の研究員ジェームズ・キム氏は「文大統領が説得すべき相手はドナルド・トランプではなく金正恩だ」と話す。
米国と韓国は、北朝鮮に核開発を放棄させる手段について食い違いを見せてきた。ただ最近は
韓国政府が主張を軟化させている兆候が見られる。
米韓の相違点の一つは、韓国が米国に制裁の緩和を要請していることだ。制裁が緩和されれば、
韓国と北朝鮮はともに関係改善に向けた一歩だと主張している経済協力事業を進められる。
米国は、北朝鮮との交渉を再開する可能性を残しているものの、北朝鮮が核放棄のための
検証可能な措置を講じるまでは経済制裁を維持する意向だ。
文政権は最近、北朝鮮との経済協力事業を進める必要があるとの主張を弱めている。
経済協力には製造業や観光特区の事業が含まれる。ある韓国高官によると、先週ワシントンで
開かれた米韓の準備会合では、南北経済協力事業については話し合われず、北朝鮮政策の
「最終目的地、最終状態と行程表」について合意したという。
米当局者も米韓が同じ認識を共有していると述べている。ただ米韓は、北朝鮮の非核化という
広範な目的以外に最終的に何を達成するのかについては詳細を詰めていない。
韓東大学国際地域学科のパク・ウォンゴン教授は、「米韓の隔たりはかなり縮まってきた」
と述べる。「双方は最終目標で合意しており、次は最も有効な行動計画について話し合う必要がある」
米国と北朝鮮がハノイでの首脳会談を合意なしで終えた主因は、2人の首脳が対面するまでに
実務レベルで詳細を議論しておかなかったことだ。
米シンクタンクの新アメリカ安全保障センターのドゥヨン・キム客員シニアフェローは
「文氏はトランプ氏と金氏を説得し、完全な非核化と平和条約の締結に向けた行程表を交渉担当者が
決められるようなプロセスをつくらせるべきだ。それが今、最も必要とされている」と話す。
文氏は大統領として任期5年のうち約3年を残している。北朝鮮に対する同氏の融和姿勢は
3回の南北首脳会談、2018年に韓国で開かれた冬季五輪への北朝鮮の参加、そして2回の米朝
首脳会談につながった。
韓国内では北朝鮮政策で幅広い支持を得てきた。だが国民は、金氏に非核化を促す文氏の能力に
懐疑的になりつつある。
韓国ギャラップ社が昨年4月、文氏と金氏による初の南北首脳会談を受けて実施した世論調査に
よれば、回答者の58%が北朝鮮は首脳会談での合意を堅持するとみていた。その割合は今年2月の
調査で46%に低下した。3月の調査では、北朝鮮が核兵器を廃棄すると答えた人の割合はわずか
28%だった。
一方、韓国の調査会社リアルメーターによると、文氏の支持率は47.5%に低下した。2017年の
大統領当選直後には84.1%の支持率を得ていた。
一部の政策アナリストは、今週の訪米では米朝間の実務レベル協議を強化するといったことなど、
より実務的な問題に焦点が当てられるとみている。
「(トランプ氏と金氏の)3回目の首脳会談開催は賢明ではなく、非核化でも人権問題でも
具体的な進展はありそうにない」。米ヘリテージ財団アジア研究センターのアナリスト、
オリビア・エノス氏はこう述べた。