ついに出生率1.0割れ、韓国に迫る国家存亡の危機
それでも文在寅政権は北朝鮮との融和を優先
()
「韓国の文在寅政権は、北朝鮮との融和に国家資源を注ぐよりも、自国内の人口減少や社会の
危機に対処しないと破局的な結果を招くことになる」
3月下旬、米国ワシントンの大手研究機関が、韓国の文在寅政権に対するこんな警告を発表した。
韓国は世界の中で最低水準の出生率を記録し、高齢層の貧困化や自殺者の急増など、社会の
破綻の兆しが表れてきている。ところが文政権はそうした危機への対処に取り組もうとせず、
北朝鮮との融和や経済協力ばかりに国家の優先目標を置いている、という警告だった。
国家の危機が目前に?
ワシントンの国際戦略問題研究所(CSIA)の朝鮮半島研究部は、米韓関係をさらに重視する
という観点から、この3月末に「朝鮮問題公共広場」と題するネット上の論壇サイトを開設した。
主に韓国の社会や国内経済の課題を論じ、米国の朝鮮半島政策の指針とすることがサイト開設の
目的だという。
その第1回のテーマとして取り上げたのが「韓国の人口問題」である。2月27日、2018年の
韓国の出生率が0.98にまで落ち込んだことが発表された。その発表を契機として、韓国の
人口問題を取り上げることになった。
論壇には、韓国の人口問題や社会問題に詳しいベテラン・ジャーナリストのエバン・
ラムスタッド氏と、ジョージタウン大学のエリザベス・スティーブン准教授が米側の専門家として
登場した。現在はミネアポリス・スター・トリビューン紙の経済部長を務めるラムスタッド氏は
韓国駐在の経験が長い。韓国の社会問題に関する豊富な知識を買われて、CSISの上級研究員も
務める。またスティーブン氏は人口動態に関する研究を専門としており、韓国の人口問題に関する
著書もある。
論壇では2人が対話する形で、韓国が抱える人口問題の現状と深刻さを明らかにしていった。
2人の見解によると「0.98」という数字は、韓国で過去最低の記録である。また世界の中でも
最低の水準であり、このまま進めば2027年には韓国の総人口が減少に転じ始め、国家としての
危機が迫るという。
だが文在寅大統領は、人口問題に対処しようとしていない。2月27日にこの緊急事態が
明白となっても、ベトナムのハノイで開かれた米朝首脳会談への関与に忙殺され、自国への危機に
十分な関心を向けていない、という指摘だった。
経済問題で大きなミスを冒した文政権
ラムスタッド、スティーブン両氏の論壇サイトでの発言の要旨は以下のとおりである。
・一般的に出生率は、その国の経済が急成長する際に下がる。韓国でも同様だと言える。
しかし韓国では、若い世代の高等教育志向、都会志向などによる結婚延期、出産忌避、少子化と
いった傾向が他国よりも顕著である。その一方、若い世代の将来への展望が明るくない。
・韓国は出生率の低下により、2021年には65歳以上の人口が15歳以下の人口を200万も上回る
見通しである。経済の停滞も顕著であり、高齢層の貧困率が46%、自殺が75歳以上では1万人中
16人といった数字は、いずれも先進国では最高となっている。
・文政権は出生率低下を防ぐ対策をとってはいるが、2019年にはその予算を50億ドルも減らした。
対策の中身は、育児の経費補助、保育園の増加など目先の問題ばかりを優先しており、企業で
働く女性社員の出産や育児への支援、男性社員の育児休暇、さらには女性の雇用全体の改善など
構造的な課題についてはほとんど取り上げない。
・文在寅大統領は、米朝間の仲介役としては賢明な行動をとるかもしれないが、自国の人口
問題解決の土台となる経済問題では、最低賃金の大幅値上げ、原子力産業の急激な規制など、
明らかなミスを冒した。文大統領は、国民が明るい将来を感じられるように、経済、教育、
社会に関わる諸問題の構造的な改善を図るべきだ。
・任期の半ばを迎えた文大統領は「北朝鮮問題への取り組み優先」という基本スタンスを改め、
少子化、高齢化、そして、その背後にある基本的な社会の課題解決に、より多くの国家資源を
投入すべきだ。現状では、米朝間の仲介にさらに努めたところで、北朝鮮の非核化を近い将来に
達成できる見通しは少ない。
※ ※ ※
CSISを通して発せられたラムスタッド、スティーブン両氏の以上のような批判や助言は、
韓国の同盟国である米国からの率直なメッセージだという。「北朝鮮問題よりも自国の問題を」
という常識的な助言だともいえるだろう。
それは言い換えると、米国側から自明の理ともいえる、そんな助言を受けねばならないほど、
文政権が非常識な路線を歩んでいる、ということかもしれない。