EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

政治・経済・生活・商品情報などさまざまな話題で情報を発信してます。

新型コロナウイルス問題。中国共産党との戦い方 掛谷英紀コラム

2020-04-28 14:30:55 | 思想・国家体制・脱中国・中国包囲網

新型コロナウイルス問題。中国共産党との戦い方

2020年04月14日 22時00分   THE EPOCH TIMES  掛谷英紀コラム

協働した武漢の看護師と抱き合う吉林省の看護師。湖北省の天河空港で4月8日、別れの式典が行われた(Getty Images)

 

私が執筆依頼を受けてこのコラムの連載を始めたのは昨年8月である。当時、私がこれまで

得てきた左翼に関する知見を共有する以上に、特にはっきりした執筆目的があるわけでは

なかった。その半年後、このコラムが多くの人にとって具体的に役立つ局面が訪れるとは

全く想像していなかった。私が書いてきたことは、既に始まっている中国共産党との

戦いを進めるのに必要な知見が山ほど詰まっている。

 

中国共産党は現代における左翼のボスと言えるだろう。それゆえ、その行動パターンも

左翼の王道を行っている。最たるものは、加害者であるのに被害者のふりをすることで

ある。そもそも、新型コロナウイルスのパンデミックにおいて、中国政府が加害者で

あると認識している日本人は果たしてどれだけいるだろうか。

 

このウイルスは、たまたま運悪く中国で発生し、不可抗力として世界に広がったわけでは

ない。SARS、鳥インフルエンザなど、中国がしばしば病気の感染源になるのは、

衛生管理に問題があるからだ。中国政府には、問題が度重なり生じても、有効な改善策を

とってこなかった責任がある。さらに、今回の新型コロナウイルス問題では、中国当局の

初期対応にも著しい瑕疵があった。

 

昨年12月の段階で、武漢の医師たちは異常に気づいていた。殉職した李文亮医師は

有名だが、その前にSARSとの類似性、ヒトーヒト感染を確認し警鐘を鳴らしていた

艾芬医師もいた。しかし、彼女はその後行方が分からなくなっている。粛清による

隠蔽工作が行われたと考えられる。台湾当局も昨年12月に中国でヒトーヒト感染が

疑われる事案が起きているとWHOに警告していたことを証拠付きで公表している。

 

しかしながら、1月初旬に中国政府はヒトーヒト感染の証拠はないと語り、WHOは

1月14日に中国政府の情報をそのまま世界に向けて発信した。WHOが限定的ながら

ヒトーヒト感染の存在を認めたのは1月19日になってからである(ただし、1月30日時点

でも中国外でのヒトーヒト感染は限定的だと発表していた)。

中国政府は1月23日に武漢を封鎖したが、その後も中国人の外国への渡航を制限せず、

むしろ渡航制限を試みようとする諸外国を糾弾した。その結果、春節に大量の中国人が

海外に渡航し、ウイルスが世界中にばら撒かれた。中国以外の国が発生源であった

ならば、全くあり得ない対応である。

 

なぜ、ここまで対応が酷かったのか。中国共産党は、中国が世界経済から切り離されて

孤立することを恐れたからだと考えられる。中国内だけで病気が拡大すれば、諸外国は

中国抜きのサプライチェーン確立に動く。そうすれば、中国共産党の支配は大きく

揺らぐことになる。病気が世界に拡散すれば、他国も疾病対策に追われ、中国だけが

不利を被ることはなくなる。中国共産党の過去の蛮行を考えれば、彼らがこのように

考えていた蓋然性は高い。

 

たとえ、中国共産党にウイルスをばら撒く明確な意図がなかったとしても、上述の状況を

考えれば、ウイルスが世界にばら撒かれても仕方ないという未必の故意が彼らにあった

ことは間違いない。だから、これが刑事事件であれば、中国共産党の殺人罪は十分

成立する。

 

中国共産党の唯一の関心事は、自らの権力の維持と拡大である。そのためには、どれだけ

多くの命を奪うことも厭わない。それは、今回の新型コロナウイルス問題に限った話では

なく、大躍進、文化大革命、ウイグルでの核実験、天安門事件、チベット・ウイグルでの

少数民族弾圧などをみれば分かる通り、中国共産党のDNAに刻み込まれた思想である。

 

今後、中国共産党はあらゆる手を使って、新型コロナウイルス問題による自らの

ダメージを最小限に抑え、あわよくばこの事態を悪用して自らの権力を拡大しようと

目論むであろう。実際、中国外務省の趙立堅副報道局長は、新型コロナウイルスが

米国起源だと発言した。さらに、フランスへの医療支援に中国の5Gを導入することを

条件にしたとの報道もある。

 

中国共産党の最大の武器は、世界において影響力のある人物を、裏金やハニートラップ

などの手段を用いて、自らの操り人形にしていることである。WHOで中国の操り人形

なのはテドロス事務局長だけではない。

エイルワード事務局長補も、香港のジャーナリストに台湾に関する質問をされたとき

聞こえないふりをし、重ねて質問されるとテレビ会議を切る対応をとった。

 

中国共産党は日本を含む世界中のメディアにも広く深く浸透している。

トランプ大統領が「中国ウイルス」と言ったとき、世界のメディアは一斉にトランプ

大統領を攻撃した。上述の通り、もともとは中国高官が新型コロナウイルスは米国起源

だと言ったことへの対抗措置だが、それをまともに報じないので、トランプだけが悪く、

中国が被害者のような印象が生じる。

 

日本のメディア報道を見ても、国民の怒りが政府や自粛しない国民に向くような作りの

ものが多い。しかし、そうやって国民を分断して誰が得をするかを冷静に考えた方が良い。

上述の通り、中国政府が適切な対応をとっていれば、日本はこの疫病に巻き込まれる

ことはなかったのである。われわれが怒りを向けるべき対象は、何をおいても中国共産党

であることを忘れてはならない。

 

そもそも、中国共産党によるプロパガンダ戦はずっと前から行われてきた。環境団体が

先進国の温暖化ガス排出を厳しく批難するのに、世界で最も温暖化ガスを大量に排出

している中国を全く批難しなかったのはなぜか。その背後に中国政府の存在があることは

既に指摘されている通りである。その結果、先進国の産業基盤は弱体化し、中国は世界の

工場の地位を得ることができた。

 

また、先進国、中でも日本と欧州では緊縮財政派が幅を利かせてきた。それで弱体化した

先進国経済の隙間を縫って、中国は世界経済への影響力を強めてきた。

日本でも、財務省の緊縮政策が中国頼みの経済構造を生んできた。日本の緊縮財政派にも

中国政府の影が背後にあることは、高橋洋一氏が財務官僚時代、中国のハニートラップの

仕掛けを経験談として語っていることからも容易に想像できる。

 

中国共産党の強みは、どんな汚い手を使うことも厭わないことである。裏金やハニー

トラップを使って、国際機関、環境団体、先進国の政治家、メディア、官僚などを操り、

その支配力を世界全体に広げてきた。この手強い彼らにプロパガンダ戦で勝つためには

どうすればよいか。そのヒントは、私がこれまで書いてきたコラムに隠されている。

『なぜ人は共産主義に騙され続けるのか』をよく理解し、

『左翼のプロパガンダ戦略とは』何かを十分把握し、

左翼を論破する方法(前編)左翼を論破する方法(後編)』を身に着ければ、

プロパガンダ戦の達人である中国共産党に打ち勝つことも十分可能である。

 

なかでも、『左翼を論破する方法(後編)』で紹介したベン・シャピーロの知見は

参考になる。一番大事なのは、先制攻撃でレッテルを貼ることである。まずは、

中国共産党は新型コロナウイルスの拡散により世界の人を十万人以上殺した殺人犯で

あるという認識を世界中に徹底させることである。これは上述の通り論理的に正当化

されるものであって、左翼が普段やるようなウソによるレッテル貼りではない。

正しいレッテルを貼ることには何の躊躇も必要ない。

 

そもそも、中国共産党がこれまで行ってきた文化大革命、天安門事件、少数民族弾圧

などの悪事の数々は、ナチスに匹敵するものである。まさに「チャイナチ」と呼ぶに

相応しい。にもかかわらず、その認識が世界に定着しなかったのは、先進国の人々に

とって、自分が被害者ではなかったからである。残念ながら、人間は自分が被害者に

ならないと真剣にならない。だから、流石に今回ばかりは、先進国の市民も黙っては

いないだろう。

 

ただし、ここで注意しなければならないのは、敵は中国共産党であって、一般の中国人

でないことを明確にすることである。上述の通り、左翼の最も得意とするのは、加害者

であるのに被害者のふりをすることで、自らの罪を免れる戦法である。中国批判を

すれば、それを中国人への人種差別に議論をすり替えてくることは間違いない。

中国共産党に批判対象を絞ることで、人種差別と言いがかりをつける余地を奪うことができる。

 

もちろん、中国共産党は全く油断ならない相手である。先進国に浸透させてきた

親中派を使って、全力で中国の擁護をさせようとするだろう。しかし、中国共産党が

ナチスと同レベルの極悪組織であるとのレッテルを定着させてしまえば、中国を擁護

するのは難しくなる。だからこそ、レッテル貼りの先制攻撃が大事なのである。

 

これまでのコラムで述べてきたように、左翼には良心の呵責はない。そういう人間たちを

相手にするときは、こちらも心を鬼にして臨まなければ、相手に呑み込まれる。

ここで中国共産党を止められなければ、ジョージ・オーウェルが『1984年』で描いた

全体主義の世界が待っていることを我々はよく自覚せねばならない。今の自粛に不自由を

感じている人は多いだろうが、中国に呑み込まれてチベット人やウイグル人と同じ運命を

辿れば、われわれが奪われる自由は今の比ではない。

これは人類の自由の未来がかかった、絶対負けられない戦争なのである。

 

執筆者:掛谷英紀

筑波大学システム情報系准教授。1993年東京大学理学部生物化学科卒業。1998年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)。通信総合研究所(現・情報通信研究機構)研究員を経て、現職。専門はメディア工学。特定非営利活動法人言論責任保証協会代表理事。著書に『学問とは何か』(大学教育出版)、『学者のウソ』(ソフトバンク新書)、『「先見力」の授業』(かんき出版)など。


人気ブログランキング