携帯電話保有にも顔スキャン、中国で身元確認強化
2019 年 12 月 3 日 03:27 WSJ By Liza Lin and Shan Li
中国で1日から、新たな携帯電話サービスの登録に際して、顔認証による身元確認を義務づける
法律が施行された。中国政府による市民の監視が一層強まりそうだ。
中国工業情報省(MIIT)が9月に公表した通知では、携帯電話による詐欺を最小限に抑え、
中古販売や違法な携帯カード売買を防ぐことが新法の目的と説明していた。中国ではこれまで、
新たな携帯電話番号の取得を申請するには、身分証明書を提示する必要があった。
中国当局は収集した膨大なデータを人工知能(AI)を使って解析し、景気押し上げに利用して
いるほか、市民監視の機能を中央に集約するなどしており、顔認証技術の普及に伴い、監視強化を
危惧する声も強まっている。
アナリストによると、国内の通信会社が顔認証による身元確認を実行に移す中、携帯サービスを
求める顧客にとっては他に代替策もないことから、セキュリティーやプライバイシーに関する懸念が
再燃している。
工業情報省は通信会社に対し、「AIもしくはその他の技術」を活用して、新たな申請者の身元を
確実に顔認証データで確認するよう、11月末までに各店舗での措置導入を指示していた。
同法はユーザーの国籍や仮想移動体通信事業者(MVNO)については言及していない。
既存の携帯サービス顧客についても触れていない。
中国移動(チャイナ・モバイル)、中国電信(チャイナ・テレコム)、中国聯合網絡通信
( チャイナユニコム )の国有通信大手3社は、現時点でコメントの要請に応じていない。
今回の新法により、中国当局は民族やその他の要素に基づき、市民を一段と正確に追跡できる
ようになる。こう指摘するのは、チャイナ・マーケット・リサーチ・グループ(上海)のマネジング
ディレクター、ベン・カベンダー氏だ。同氏は「個人的な観点からすると、プライバシーがほとんど
なくなり、恐ろしいことだ」とし、「常に誰かが自分の行動を把握しているという感覚がつきまとう」
と述べる。
懸念が高まるのに伴い、顔認証などプライバシーの侵害と思われる技術への反発も強まっている。
中国東部の法学教授、ガゥオ・ビング氏は先月、杭州の動物園と野生動物公園が新たな入園システムの
一環として、年間パスに顔認証データの共有を義務づけたのは、消費者の権利を侵害しているとして
訴えた。中国でこうした訴訟が起こされるのは異例。同氏は訴訟の状況についてコメントを控えた。