「反日国家」中国と韓国の劣化が止まらない!④
③のつづき
宮崎正弘(評論家)、室谷克実(評論家) 《徳間書店『突然死の危機に陥る中国と韓国』より》
宮崎 2015年10月、中国が申請していた「南京大虐殺事件」の資料がユネスコの記憶遺産に登録されました。
いうまでもなく「南京大虐 殺」なるものは、中国がでっちあげた日本軍による30万人もの中国人虐殺ですが、そのような捏造された歴
史が認められてしまうということは、非常におかし な動きですね。

南京大虐殺記念館で資料を見る人たち =2015年9月、中国江蘇省南京市
これはやはり日本の外務省の失態ではないかと思いますが、どうでしょうか。
韓国は、同じくでっちあげの「従軍慰安婦問題」をユネスコの記憶遺産に申請していましたが、こちらの登録は見送られました。
しかし、この中国の登録成功で、韓国も再申請するのではないでしょうか。
室谷 先述した2015年12月末の「慰安婦問題に関 する日韓合意」の後、岸田外相が「韓国政府が慰安婦関連資料のユネスコへの
登録申請を見送ることで合意した」と発言したところ、韓国政府は「そんなことは 言っていない、事実無根だ」と即座に反論しました。
やはり反日カードとして使うつもりなのでしょう。
南京大虐殺関連資料の登録については、韓国も陰に陽に中国を応援していましたし、登録が決定した後に、朴槿恵大統領が「客観
的で民主的」などと評価していました。
宮崎 しかし、「南京大虐殺」と韓国とはまったく関係がないのではないですか?
室谷 いや、彼らにいわせると、関係があるのです。戦時中、済州島にアルトゥル飛行場という中国大陸爆撃用の日本軍基地があった
ので、「われわれも黙っているわけにはいかない」と言って、2015年12月13日、済州島の旧日本軍飛行場で追悼式典をやっていま
す。
宮崎 日本では「南京大虐殺」の資料登録に対抗するため、「新しい歴史教科書をつくる会」が中心となって10くらいの保守系団体を
集め、「通州事件」をユネスコの記憶遺産に申請しようという動きが始まっています。
通州事件とは、1937年7月29日に、通州の日本人居留民や通州守備隊が中国人部隊に襲撃され、残虐な方法で200人以上が
殺されたという、明らかな国 際法違反の事件です。
私は2回、現地を歩いて、写真入りのルポを書いたことがありますが、中国側はあらゆる証拠を消しています。
これに対して韓国では、「つくる会は通州事件を世界記憶遺産に登録して、歴史論争で中国を圧迫し、南京大虐殺の悪行を希薄化
する材料にしようとしていると みられる」(聯合ニュース2015年12月12日付)などと批判していますが、通州事件の被害者は朝鮮人
(当時は日本国籍)のほうが多かったのですよ。日 本叩きのためには、そういうことも無視するんですね。
ただ日本側にしても、記憶遺産の登録審査は2年に一度で、申請できるのは一国2件までと決められており、すでに文部科学省内の
日本ユネスコ国内委員会は2017年の登録候補2件を選定しているということで、通州事件をまともに申請する気持ちはないようです。
制度上は国内委員会を通さないで直接ユネスコに申請することも可能なため、「つくる会」はそうするようです。
室谷 私は、どうも文部科学省のなかに韓国のスパイがいるのではないかという気がして仕方がないのですよ。
たとえば2015年7月5日、ドイツのボンで開かれていたユネスコ世界遺産委員会で「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に
登録されることが決まりま したが、その会議の席上で韓国側から軍艦島などでの徴用工の表現をめぐって異議が出され、決定が紛糾
するということがありました。
すでにその前段階で日韓双方の外務大臣が話し合い、お互いが協力することで決まっていたはずなのに、突然、韓国側が裏切ったと
いうことで、日本国内の嫌韓意識がさらに高まりましたが、実際の事前折衝は文部科学省がしていた。
しかし、ギリギリのところを詰めずに決定の場に臨んだのです。そんなことをしたら、韓国側にやられることは目に見えているわけで
す。少なくとも韓国ウオッチャーなら、誰もがそう考えます。
そして予想どおり、韓国がいちゃもんをつけてきた。それで「韓国が裏切った」などと言っていたわけですが、いちゃもんをつけられる
お膳立てをしたのは文部科学省ですよ。
宮崎 そういう利敵行為になるような、いわば「第五列」(自国内におけるスパイのこと)のような存在は、文科省にかぎらず日本には多
いですね。
日本のマスコミにしても、第三者を装って、「日本政府がこう言っているが、中国、韓国政府はどう思うか」といったご注進報道を繰り
返してきましたからね。
だいたい、教科書検定の中身について、われわれより先に韓国メディアのほうが知っているというのは、おかしな話ですよ。
日本のメディアが国内での議論を深めるより、まず中国と韓国にご注進するほうを優先させているからでしょう。
まあ、こういうご仁は日本だけにかぎりませんが。ユネスコのイリナ・ボコバ事務局長にしても、2015年9月3日に北京で開催された
抗日戦争勝利70周年 記念式典の軍事パレードに出席して、中立性を疑われました。
中国から相当の便宜を図ってもらっているのかもしれないですし、彼女は次期国連事務総長に立候 補する意向を表明しているため、
中国の票欲しさでご機嫌とりに行ったともいわれていますが、どちらにしても中立の立場とはとてもいえない。
いずれにしても、「南京大虐殺資料」の記憶遺産登録は、日本がユネスコ対策を怠っていたということが大きな問題です。
すでに決まってしまったものを、いまさら取り消すのはなかなか難しい。
そうすると日本側の対応としては、通州事件などをどんどん申請していかなければならない。相手が政治目的の申請をするなら、
こちらもやる。ユネスコの世界 遺産はそういうものだということになれば、世界の見る目も変わるでしょう。
私は前から提案しているのですが、ついでに日本にも「天安門事件記念館」をつ くって、それを申請するという手もあります。
室谷 だいたいユネスコの世界遺産認定なんて、地方の信用組合の表彰状みたいなものですよ。
日本の名誉を犠牲にしてまでもらう必要はない。
宮崎 この「南京大虐殺の資料」が記憶遺産に登録されたことを機に、アメリカでの中国の反日活動が変化し始めています。
これまでアメリカにおける中国の「南京大虐殺」キャンペーンは、アイリス・チャンが書いた歴史捏造書『ザ・レイプ・オブ・南京』を中心
に展開されていました。ところが、この方針が変わったようで、現在ではアイリス・チャンを持ち出さなくなったというのです。
これはチャンネル桜代表の水島総さんがアメリカで取材してきてわかったことで、サンフランシスコのチャイナタウンにある抗日戦争
記念館が2015年8月 15日に改装され、再オープンしたのですが、これまで展示してあったアイリス・チャン関連の資料はほとんど撤
去されたというのです。
その代わりに、当時の国民党を支援したアメリカ合衆国義勇軍(フライング・タイガース)の展示などが前面に出され、
記念館の名前も、漢字では「海外抗日戦争記念館」ですが、英語名は「パシフィック・ウォー・メモリアルホール」(太平洋戦争記念館)と
しているそうです。
つまり、アイリス・チャンの役目はもう終わったので縮小し、今度は、中国の抗日戦争はアメリカとともに戦ったことを強調する展示内
容に変わったということなのです。
もちろんこれは、北京の指令に基づいているはずです。これから世界中で、中国の反日活動はこういう形に変わっていくのではない
かと思います。
日米を離間させるための計略ですが、ある意味では、中国から離れつつあるアメリカを中国側に引き戻したいという意志の表れだと思
います。

南京大虐殺記念館を訪れる人たち =2015年10月5日、中国江蘇省南京市(共同)
室谷 それは韓国のやり方を学んだのかもしれません。慰安婦問題を「全人類の共通問題」にすり替えて世界にアピールしていますか
ら。
そういう論点のすり替えは、非常に長けていますからね。前述の靖國神社での爆破テロ事件のときも、
韓国外交部は「訪日韓国人は靖國神社に近づくな」「右翼団体に気をつけろ」といった注意を出していました。
自分たちが不利な立場になったら、いつの間にか加害者が被害者になりすますという、お得意のやり方です。
2015年3月に駐韓アメリカ大使が韓国人の暴漢 によるテロにあった際も、朴槿恵大統領は「これは韓米同盟に対するテロだ」と言っ
て、被害者の立場になってしまった。日本人には真似ができない才能です。
宮崎 日本でも以前、北朝鮮に対する批判が高まると、登下校中の在日朝鮮人の民族衣装がナイフで切られるといった、いわゆる
「チマチョゴリ切り裂き事件」がよく起こりましたね。
それで朝鮮総連やその尻馬に乗った朝日新聞などが、「他民族への憎悪をこういう形で表すのは卑劣だ」などと、いかにも日本人が
犯人であるかのように論じ た。しかし、これまで犯人が検挙されたことはほとんどないし、検挙されたとしても単なる学生同士のケンカ
が理由だったりと、排外主義などとはまったく関係 がなかった。
いまでは、日本人の世論を転換させるために仕組まれた自作自演だったのではないかとさえ疑われています。
室谷 すでに韓国の政府内では、朴槿恵大統領にものが言えないどころか、おもねるような輩ばかりが出世しています。
たとえば、2015年、韓国は42年ぶりともいわれる深刻な干ばつ被害に見舞われました。そこで6月に、朴槿惠大統領は地方に行っ
て、水田に消防車で水を撒まくというパフォーマンスをしました。
消防車のホースはすごい水圧ですから、朴大統領は一人では持ちきれず、田んぼの土がV字型にえぐれてしまい、
消防士が慌てて横から支えたということがありました。まあ、そこまではいいのです。
収穫の時期になったとき、韓国の農林大臣が米の試食会の席で、「大統領様が水を撒かれた田んぼは大変に育ちがいい」と、わざ
わざ言ったのです。まるで北朝鮮そっくりですが、韓国の違うところは、民間のテレビ局が実際に見にいったわけです。
そうしたら、たしかに朴大統領が水を撒いたところの稲は立派に育っていたのですが、その周辺の水田はひどく荒廃していた。
つまり、農林大臣は一言ゴマをす りたいがために、朴大統領が水をやったところに毎度、公務員を派遣して水を撒かせたのだと思い
ます。北では一昔前まで、何かにつけて「首領様の現地指導に より……」でしたからね。
宮崎 本当に北朝鮮そっくりですね。中国でも、習近平主席による言論弾圧がしだいにエスカレートしてきています。
人権派弁護士の逮捕・拘束は2015年だけで数 百人におよび、中国政府の新疆ウイグル政策を批判した人権派弁護士の
浦志強(ほしきよう)は12月22日に、懲役3年、執行猶予3年の実刑判決を受けてい ます。
また、12月25日には、同様に中国のウイグル政策を批判したフランス誌の女性記者が国外退去処分となりました。
これは別の章であらためて解説しますが、2015年12月27日には「反テロ法」が成立し、テロ事件に関する報道の制限や、
通信事業者にデータ解析に必要な暗号化キーの提供を義務づけました。
さらに12月31日になって、人民解放軍のなかに3つの部隊が新設されました。
そのうちの一つが「戦略支援部隊」という意味不明なフォースでしたが、これがサイバー専門部隊なのです。
こうした言論弾圧が強化される背景には、権力闘争なども絡んでいると思いますが、一方で国民の不満が確実に高まっていて、
しかも、以前であれば反日によっ てそれらの不満を外部に向かわせることができたのですが、それがもはや効かなくなっている、
あるいは、それではすまないほど大きな鬱憤が噴出し始めている ということではないかと思います。
室谷 韓国でも、先に話したとおり、「大統領の名誉」を軸に据えて、ネット監視や、ビラの取り締まりといろいろやっています。
民主主義の前に法治主義がいまだに 確立されていないのだから、言論の自由が認められないのも当然かもしれませんね。
しかし、韓国ではデモはできる。教科書国定化反対、労働問題……掲げる テーマはあふれすぎていますからね。
おわり。