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【朝鮮日報社説】文大統領は盧武鉉政権の再現ではなく新たな統合と協治を示せ

2017-05-11 13:00:42 | 韓国

文大統領は盧武鉉政権の再現ではなく新たな統合と協治を示せ

 朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領の弾劾と罷免により韓国憲政史上初めて前倒しで行われた第19代大統領選挙において、進歩(革新)系・共

に民主党から出馬した文在寅(ムン・ジェイン)候補が当選した。9日に行われた投開票の結果、午前0時30分の時点で文氏の得票率は

39.5%に達し、当選を確実なものとした。その支持率の高さは明らかに弾劾に伴うものだが、一方で政権交代を叫ぶことで国民の支持を集め

ることに成功したのも事実だ。ただ弾劾という圧倒的な好材料があったにもかかわらず、支持率が39.5%にとどまったという事実は厳粛に受

け止めねばならない。1987年に大統領直接選挙制が導入されて以来、当選者の中で今回の支持率は最低だ。その厳然たる事実を文氏本人

がどう受け入れるかによって、文在寅・新大統領が政権運営を成功させられるかどうかが決まってくるだろう。


 今回、文氏に投票しなかった多くの有権者は新政権が「第2次・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権」になるのではないかと懸念している。盧武鉉政権

当時、国内では毎日のように新たな対立と分裂が繰り返されていたが、新政権の発足でその当時に戻るとなれば、これは明らかに歴史の逆行

だ。もし文大統領が当時を超え、統合と協治という新たな大統領像を国民に示すことができれば、文大統領に投票しなかった国民もその成功

を後押しすることだろう。

 

 今回、文大統領には政権引き継ぎのための準備期間も与えられておらず、首相候補の指名と大統領府スタッフ人事、組閣などを円滑に滞り

なく行い、7カ月以上にわたり空白状態だった政権運営を短期間で正常化しなければならない。もちろんこれは決して簡単なことではない。新

政権発足がまた新たな混乱の始まりとならないようにするには、首相候補については野党も同意できる人物を抜てきする必要があるだろう。与

小野大となっている国会の構図と国会先進化法の影響で、今や協治は選択の問題ではない。文大統領は「当選すれば直ちに野党本部を訪れ

たい」とも発言したが、野党も今後は「反対のための反対」から脱却しなければならない。


 大統領は何よりも国を守るという重大な責任を持つ立場だ。文大統領は対北朝鮮政策と安全保障政策の両面において変化を予告してきた

が、これは選挙期間中も大きなテーマの一つとなっていた。そのため国民も関係国も文大統領の外交・安全保障政策を懸念の目で見つめてい

る。文大統領は「政権を握れば金剛山観光と開城工業団地を直ちに再開する」と何度も語った。しかし国連による対北朝鮮制裁に反するとの

指摘、あるいは北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に対する国民感情の悪化などが影響したのか、文大統領は後に「核実

験をやらなければ」という条件を付けた。ただそれでも文大統領の姿勢はこれらの「再開」に重きを置いているため、もし国民の同意なしに独断

で決めてしまえば、また新たな大問題に発展しかねないだろう。


 文大統領はすでに韓国国内での配備が完了した米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」について、配備を

続けるかどうかを国会での採決によって決める意向を示してきた。しかし軍の装備を国会の批准によって判断した前例などこれまで一度もな

い。北朝鮮の核兵器やミサイルによる攻撃を阻止するTHAADがここまで問題となっている理由はただ一つ、中国が反対しているからだ。今後

も中国が反対を続ければ、文大統領の言葉通り軍事面での対応を国会の批准に任せるのだろうか。THAADに関係する問題はどれも国内で

大きな対立や問題を引き起こしかねないため、文大統領は野党と率直かつ粘り強い意見交換と対話を続けていかねばならない。


 盧武鉉政権当時の2006年に北朝鮮は初めて核実験を強行し、これまでその回数は5回に達した。腹違いの兄を殺害した金正恩氏

と北朝鮮政権の野蛮さは通常の理解を超えるものだ。ところがそれでも文大統領は「アメとムチ」のアメ、あるいは相互の交流によって

北朝鮮を変えられるとする太陽政策(宥和〈ゆうわ〉政策)を進める考えだ。このことを知る金正恩氏は文大統領からの対話の提案を

首を長くして待っていることだろう。それによって金正恩氏は韓国からの支援を手にし、核武装を完成させる時間を稼ぐことで、韓国と

米国との関係に亀裂をもたらそうとするはずだ。そうなればこれを容認しない国内の反発世論が再び沸き立つだろう。


 これら数々の困難な問題は韓米首脳会談を通じて解決を目指さねばならない。米国の新政権と対北朝鮮政策を調整し、両国の方針

を一致させることが何よりも急がれるからだ。またそのプロセスを通じて開城工団問題や金剛山観光問題、THAAD問題、中国との関

係悪化などを解決するきっかけも同時につかまねばならない。しかしトランプ大統領についても不確実性という大きな不安要素が指摘

されている。米国はこれまで韓米同盟について「単なる損得を超えた価値同盟」との立場だったが、トランプ大統領はこの考え方を根

本から見直そうとしている。先日トランプ大統領は韓国に対してTHAAD配備に必要な費用の負担を要求したが、この問題も完全に決

着したわけではない。韓米自由貿易協定(FTA)についてもトランプ大統領は新たな枠組みを求めてくる可能性が高い。ただでさえ文

大統領を支持する勢力の一部は反米的な考え方が根強く、文大統領自身も選挙戦序盤「(米国よりも)北朝鮮へ先に行く」と発言し

た。これら数々の不安要素が横たわる中、もし韓米首脳会談が成功しなければ、韓国はどのような事態に直面するか現状では予想も

つかない。


 韓国社会は人口減少と少子高齢化という大問題に直面している。働く世代が減る一方で支援を必要とする働かない人たちが増え、

それによって現役世代の負担が一層重くなる時代もすでに始まった。文大統領は児童手当、若者の求職を促す手当、65歳以上を対

象とする失業手当、基礎年金、高齢者雇用手当など、新たな給付の新設や支給額の引き上げなど、各世代を対象に現金支給を増や

す公約を次々と出した。しかし一度現金を与える制度を導入すると、それを見直すのはほぼ不可能だ。「公務員の81万人増員」の公

約も注目を集めているが、これも結局は税金で雇用を増やすことに他ならず、一度職員を雇ってしまえば数十年は雇用を保障しなけれ

ばならない。新政権によるこれら一連の福祉、あるいは雇用関連の公約が本当に実現した場合、韓国経済は果たして今後長期にわ

たり持ちこたえることができるだろうか。文大統領は自らの公約実現には年平均35兆6000億円(約3兆6000億円)、5年で178兆

ウォン(約18兆円)の費用がかかると試算しているようだが、専門家はこれでは不十分と反論する。そのためこれらの政策も社会的な

合意の上で実行に移さなければならず、もしそれがなければ国と社会全体に深刻な後遺症を残してしまうだろう。


 福祉と分配という一方の政策だけでは韓国経済は前に進めない。経済分野で文大統領が最初に取り組むべき課題は国の経済成長

に向けた行動計画を示すことだ。韓国経済は現在、成長率が2%台にとどまっているが、この状況が続くようでは雇用を増やすこと

も、あるいは福祉に必要な財源を確保することもできない。選挙運動の際、文大統領は第4次産業革命と景気の活性化に何度も言及

したが、いずれも抽象的な感は否めなかった。持続的な成長を実現するための大きな課題はやはり構造改革と規制の撤廃しかない。

つまり共に民主党が今掲げる政策とは異なった方向に進まねばならないのだ。

 

 最後に残った大きな課題は政治の大転換だ。過去の「君臨する大統領」「帝王的大統領」では未来に向けて一歩も進めないだろう。

分権の実現は大統領の善意に期待するのではなく、制度として実現していかねばならないが、その唯一の道は憲法改正だ。文大統

領が約束した政府内の改憲特別委員会の立ち上げ、国民が参加する形で改憲を議論する仕組みやそのための政府機関の設立も実

現に向け直ちに行動を起こさねばならない。憲法改正は文大統領の行く手を阻むものではなく後押しするものであり、文大統領自身も

そのような発想を持つべきだ。


 文大統領には自らを支持する国民よりも反対する国民の方が多いが、この現実を突破する方法はただ一つ。それは過去とは違った

新しい大統領像を自ら築き上げることだ。誰からも認められないような権威主義、あるいは自分一人で何でもできるという錯覚をまず

は捨て去らねばならない。それができなければ、また新たな形だけの大統領へとたちまち転落してしまうだろう。逆に文大統領から先

に手を差し出せば、その権威も力も弱まることなくむしろ一層強くなるはずだ。