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<Forbes誌> 川崎市ヘイトスピーチ禁止条例、刑事罰はなぜ「国外出身者」に絞られるのか

2019-12-14 11:13:33 | 憲法・法制・条例等

 川崎市ヘイトスピーチ禁止条例、刑事罰はなぜ「国外出身者」に絞られるのか。

2019/12/13 12:30   Forbes


川崎市議会で全国初の刑事罰付きのヘイトスピーチ禁止条例が成立した

「差別」を禁止する対策として一歩踏み込んだ、川崎市に注目が集まっている。

ヘイトスピーチなど差別的な言動を禁止するため、全国で初めて刑事罰を盛り込んだ条例案が

12月12日、川崎市議会で可決、成立した。市の勧告や命令に従わず、差別的な言動を3度繰り

返した場合、最大50万円の罰金を科すことになると、Forbes JAPANの速報で伝えた。

ただ、刑事罰が下されるのは、日本以外の国や地域の出身者への差別が対象であり、川崎市が行った

パブリックコメントでは、「日本人に対するヘイトスピーチはなぜ含まれないのか」と、疑問の声が

多く寄せられた。


12日午前10時に開会した川崎市議会の12月定例会。議場には多くの報道陣と傍聴者が集まり、その「歴史的瞬間」を見守った。市は全会一致を目指していたが、採決する際には議員2人が退席し、残る57人

全員が起立し、賛成した。条例は成立し、2020年7月1日から全面施行される。
 
この後、57人の議員が起立し、ヘイトスピーチ禁止条例案が可決した。



公権力の濫用防止と表現の自由にも配慮

条例の正式名称は「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」。川崎市内の公共の場所において、

日本以外の国や地域の出身者に対する不当な差別的言動を禁じている。

また公の場のヘイトスピーチだけでなく、近年問題になっているインターネット上の人権侵害についても、

「市内の国外出身者に対する不当な差別的な言動」があった場合は、拡散防止の措置や公表に踏み

切ることも記した。

具体的には、違反行為に対して、1回目は「勧告」、2回目は「命令」、さらに命令に従わなかった場合

は、氏名などを公表し、50万円以下の罰金に処する。法人の場合は、行為者だけでなく法人も罰する

ことになる。


「勧告・命令」のいずれも、有効期間は6カ月間に限定し、公権力の濫用防止に繋げることにした。

今後、市は「差別防止対策等審査会」(構成員は5人)を設置し、表現の自由に配慮し、違反行為か

どうかについて、慎重に判断する。

そもそもヘイトスピーチとは

ヘイトスピーチとは、そもそも何を示すのだろうか。

一般的には「憎悪に基づく発言」の一形態を意味する。法務省によると、ヘイトスピーチ解消法においては、特定の国の出身者であることや、その子孫であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとするなどの一方的な内容の言動を示すという。

川崎市の条例では、「不当な差別的言動」として、以下の3つの類型を示した。

・本邦外出身者が住む地域から退去させることを扇動し、又は告知するもの

・本邦外出身者の生命、身体、自由、名誉または財産に危害を加えることを扇動し、又は告知するもの

・本邦外出身者を人以外のものに例えるなど、著しく侮辱するもの

公益財団法人「人権教育啓発推進センター」の報告書においても、ヘイトスピーチは同様に3つの

類型に分けられ、「〇〇人は日本から出て行け」「〇〇人を皆殺しにしろ」「ゴキブリ〇〇人」と

いった例が挙げられる。


川崎市では、2013年5月から2016年1月末にかけて、計12回にわたって、JR川崎駅の繁華街を中心に、

国外出身者の排斥を訴えるデモが行われた。この間のデモは、2016年6月に施行された国の

「ヘイトスピーチ解消法(通称)」の制定のきっかけとなった。

川崎市の福田紀彦市長の下、こうした事象が繰り返し起きないようにと、2016年から対策に乗り出した。

その中で、「ヘイトスピーチ解消法」の法律の範囲内で、人権全般の尊重を見据えた条例づくりを

目指してきた。

川崎市議会に臨む福田紀彦市長(右下)


日本人に対する差別はどうなる?

2019年6月に、市は条例の素案を公表。その後パブリックコメントを募集すると、1カ月間で

市内外から18243通もの意見が寄せられ、この条例に対する全国的な関心の高さが示された。

その中には「日本人に対するヘイトスピーチを容認するのはおかしい」や「日本人へのヘイトスピーチも

罰すべきである」と行った意見が多く見られた。

確かになぜ、「本邦外出身者」つまり、日本以外の国や地域の出身者に対象にした差別に限って

、刑事罰が下されるのだろうか。

市の担当者に尋ねると、「ヘイトスピーチ解消法」の定める範囲内での条例であることと、

先述のヘイトスピーチの定義(特定の国の出身者であることや、その子孫であることのみを理由に、

日本社会から追い出そうとするなどの一方的な内容の言動)に準じたものだと回答した。

だが、疑問は残る。憎悪表現の中には、仮に受け手が日本人であったとしても、特定の国や民族に

関する意見や思想を示した人に対して、「〇〇人は国外追放だ」「〇〇人は殺す」などと迫る発言が

見られる。特にインターネット上における「炎上」現象には、その例が多いだろう。

川崎市はパブリックコメントで多数寄せられた意見を重く受け止め、今後は国に対する働きかけなども

検討する。

市としても「本邦外出身者への差別」以外にも、いかなる差別的な言動も許されない、とのメッセージを

強く発信し、市民や事業者に対しても「レイシャルハラスメント」防止の徹底に努めていくという。

福田紀彦市長は「川崎は元祖・多様性の街。これからも差別を生まない土壌づくりをしていくべき」

と意気込みを語った。

「この街からあらゆる差別を無くしていく決意を新たに、今日がスタートとして人権尊重のまちづくりの

取り組みを始めたい」

この差別を禁じる条例は、刑罰を伴い、より厳しい抑止力として期待されている。市長ならびに

市関係者だけでなく警察を含めて、安全かつ慎重に運用されるべきである。条例全体の総則に

あるように、人種、国籍、民族だけでなく、信条や年齢、性別、障害の有無などにも関わらず、

誰もが安心して暮らせる社会づくりの機運となることを願ってやまない。



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