サムスン苦しめる在庫の山、半導体需要は戻るか
【ソウル】韓国サムスン電子にとって、半導体が頭痛の種となっている。売れ残った在庫の
山を抱えているためだ。
半導体メーカーは通常、需要が旺盛な時期に約3〜4週間分の在庫を確保する。だが業界の
アナリストらによると、サムスンは目下、最大でこの倍に相当する在庫を抱えているようだ。
世界貿易を巡る懸念やスマートフォン販売の低迷で、半導体需要はここ数カ月に急減。
販売好調時に生産を増強していた半導体メーカーは、在庫の積み上がりに直面している。
こうした中、サムスンが支配的な地位を占める主要メモリーチップ2種類の価格は下落。
サスケハナのアナリスト、メディ・ホセイニ氏によると、需要の落ち込みは昨年始まったものの、
メモリーチップ2種の価格は今年1-3月期(第1四半期)におよそ2割落ち込んだ。これは従来の
想定を超える下げ幅だという。
サムスンは5日公表した1-3月期決算の速報値で、営業利益が前年同期比で60%減少した
もようだと明らかにした。これも在庫のだぶつきで説明がつく。実際にそうなれば、スマホ
「ギャラクシー・ノート7」の発火問題で世界的なリコール(回収・無償修理)を余儀なく
されて以来、2年半ぶりの低水準となる。サムスンの広報担当者はコメントを控えた。
スマホからクラウドコンピューティングの大量のサーバーファーム(サーバー集積施設)に
至るまで、中核のテクノロジーはメモリーチップに依存しており、この極小部品が世界経済の
動向を占う上で重要指標となっている。
主要メモリー2種類であるNAND型フラッシュメモリーと記憶保持動作が必要な随時書き込み
読み出しメモリー(DRAM)の価格は、2017年終盤と2018年初頭に天井をつけて以降、大きく
値下がりしている。大口の買い手は価格の上昇局面で、さらなる値上がりを懸念して
大量購入したが、現在は価格が底入れするのを待ちたいと考えているようだ。
IHSマークイットの市場調査アソシエイトディレクター、レイチェル・ヤング氏は「これは
心理的な要因だ」とし、「企業は様子見を続け、今後もっと安い価格で購入できないか見極めている」
と説明する。
サムスンや韓国SKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーは過剰供給を減らすため、
設備投資を大幅に縮小した。これら3社はDRAM市場の約95%を占めている。だが半導体の製造には
約3カ月を要するため、メーカーは供給を早急に調整することはできない。
スマホ販売の低迷とパソコン(PC)の供給不足がメモリー需要に打撃を与えているものの、
予想されているサムスンの苦境は、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフト、フェイスブックなど、
データサーバー運営大手による需要減退が大きな要因だと業界関係者は話している。
これらのハイテク大手は価格が急上昇していた過去2年に、半導体を買い占めていたようだ。
バーンスタイン・リサーチのアナリスト、マーク・ニューマン氏は「これら高性能サーバー
企業の一部は、何も購入していない。ゼロだ」と述べる。ただ、同氏は年内には購入が再開すると
みている。
サムスンは2017〜2018年に、ライバル会社ほど素早くDRAM生産を拡大しなかった。
だが、ちょうど需要が下り坂に向かい始めていた昨夏に増産に踏み切ったため、他社よりも在庫の
積み上がりが大きいと業界アナリストは指摘している。
ただ、ハイテク業界は目下、自動運転車や次世代通信規格「5G(第5世代)」など、速い
処理スピードやデータストレージを必要とする技術に注力しており、メモリーチップの需要は
底堅く推移する公算が大きい。そのため、現在の低迷は過去の半導体不況とは事情が異なると
業界アナリストはみている。またメモリー市場では業界再編が進み、価格競争圧力が和らいでいる。
サムスン、SKハイニックス、マイクロンの株価は昨年、半導体需要の低迷を前に急落したが、
2019年に入ってからは大きく上昇している。背景には、メモリー価格が7-12月期(下半期)には
回復するとの期待があるという。
SKハイニックスとマイクロン株は年初来およそ30%値上がり。サムスンも21%上昇しているが、
2社に見劣りしており、在庫過剰問題がより深刻なことが株価に反映されていると業界アナリストは
分析している。
一方、ドナルド・トランプ米大統領は4日、米中は向こう4週間で通商協議の決着を目指すと
明らかにした。ただ、予想されていた習近平国家主席との首脳会談については発表しなかった。
電子部品販売会社フュージョン・ワールドワイドのエグゼクティブバイスプレジデント、
トビー・ゴナーマン氏は電子機器メーカーとサプライヤーは「スタンバイ」しているとし、
「関税の動向がより明確になるまで、多くの仕掛品が待機状態にある」と語る。