中国が石炭輸入禁止ならWTOルールに抵触も-モリソン豪首相
-
豪州産の石炭輸入禁止、正式決定のもよう-人民日報系の環球時報
-
報道が事実なら中豪FTAにも違反、貿易関係に悪い結果-豪首相
オーストラリアのモリソン首相は15日、中国が豪州からの石炭輸入を禁止すれば世界貿易機関(WTO)
ルールに抵触すると述べた。豪政府は深刻化する外交対立の緩和に向けた対話の再開を中国に促している。
中国当局が10月に豪州産石炭を陸揚げしないよう港湾に口頭で指示したことを受け、50隻余りの
船舶が中国の沖合で足止めを余儀なくされていた。
中国の国家発展改革委員会(発改委)は12日、石炭の値上がりを抑えるための取り組みとして、
豪州産以外は制限を設けずに輸入を発電所に認めたことから、豪州からの石炭輸入禁止が正式に
決まったもようだと共産党機関紙・人民日報系の環球時報が報じた。
モリソン首相は記者団に対し、報道が事実なら2015年に署名した両国の自由貿易協定(FTA)
にも違反すると指摘。「両国の貿易関係にとって悪い結果を招く」とした上で、政治と貿易の問題を
結び付けるのは「他の多くの貿易相手にとって強い不確実性をもたらす」と述べた。
バーミンガム貿易・観光・投資相は、正式な石炭輸入禁止は「差別的な貿易慣行を示唆」することに
なると語り、中国に問題解決に向けた意思疎通を求めた。
15日の豪株式市場では石炭銘柄が大きく値下がり。ホワイトヘイブン・コールが前日比5.9%安、
ヤンコール・オーストラリアが8.4%安でそれぞれ引けた。いずれも一時10%を超える下落となった。
原題:Australia Says Coal Import Ban by China Would Breach WTO Rules(抜粋)
オーストラリア、中国をWTOに提訴へ 大麦への追加関税で
【12月16日 AFP】オーストラリア政府は16日、中国との対立が激化する中、同国産の大麦に中国が
懲罰的関税を課しているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴する方針を発表した。
オーストラリアのサイモン・バーミンガム(Simon Birmingham)貿易・観光・投資相は、
オーストラリア産の大麦に対する中国の80%の追加関税は「根拠がなく」、それを裏付ける事実も
証拠もないと非難。他の分野でもWTOに提訴する可能性を示唆した。
両国の関係は1989年の天安門(Tiananmen)事件以来、最悪の状態で、中国政府はオーストラリア
製品に次々と経済制裁を科している。
バーミンガム氏は、「わが国はこれまでにまとめた証拠、データ、分析に基づく揺るぎない論拠が
あると自負している」と述べた。
オーストラリアは近年の干ばつの前には、主にビールの原料として、年間約10億ドル(約1000億円)
相当の大麦を中国へ輸出していた。
専門家によると、中国は大麦の自給率が約20%にすぎないことから、輸入への過度の依存を懸念。
2018年からオーストラリア産大麦の輸入制限を検討してきた。
しかし、今回の関税の背景には両国間の激しい対立があり、政治的な動機に基づく措置ではないかと
懸念されている。
それぞれの制裁の理由は技術的な問題だとされているが、オーストラリア政府は自国および
アジア太平洋地域での中国の影響力を押し返していることへの報復だとみている。オーストラリアの
少なくとも13の業界が関税などの何らかの形で妨害を受けており、それには大麦や牛肉、綿花、
ロブスター、砂糖、木材、銅、ワイン、小麦、羊毛といった品目だけでなく、観光、大学教育も
含まれている。
オーストラリアはこれまで、紛争の解決に何年もかかったり、報復で提訴されたり、外交関係が
さらに悪化したりすることを恐れて、WTOによる紛争解決を避けていた。