輸出優遇除外:ロシアのフッ化水素供給提案に韓国業界は困
惑
純度99.999%でも…不純物の大きさによっては半導体に使えない可能性も
専門家「使ったことないため品質確認に数カ月」
韓国政府「検討中」
日本が韓国への輸出規制品目として発表したフッ化水素(エッチングガス)の輸出を、ロシアが
韓国政府に提案してきたことが分かった。
韓国大統領府関係者は12日、「ロシアがフッ化水素を供給するとの意向を韓国側にこのほど伝えてきた。
現在、その提案を検討しているところだ」と語った。
今月1日に日本が輸出規制を発表して以来、フッ化水素の問題は連日取りざたされている。
超高純度フッ化水素は半導体回路を形成し、不純物を除去するのに不可欠だが、韓国の半導体メーカーは
この素材を日本にほぼ100%依存しているため、供給が中止されれば韓国の半導体産業がストップする
可能性があるからだ。ロシア製のものが日本製のものの代替品になるなら、韓国の半導体産業界に
とっては好材料だ。しかし、同業界や専門家の間では「本当にロシア製のものが半導体製造工程で
使えるかどうかを見るには、確認しなければならないことが多い」と話す。
■産業全般で使われるフッ化水素
フッ化水素は日本が主張しているように毒ガスの製造にも使われるが、実際には産業全般において
さまざまな用途に使われる一般的な化学物質だ。蛍石を硫酸で溶かして作るフッ化水素はほかの物質と
結合しやすい。高級ガソリンを作る時に入れる触媒であり、フライパン・屋根材料・電線被覆・
眼鏡レンズなどに使われるテフロン(合成樹脂)の材料でもある。岩石を溶かしてウランを抽出する時に
使われることもあるし、エアコン・冷蔵庫の冷媒や洗濯用合成洗剤にも入っている。表面を滑らかに
したり、高級な質感を出したりするのにも使用される。
だが、このようなフッ化水素は99.9%以下の低純度製品だ。こうした製品は韓国はもちろん、
中国・台湾・インドでも作られている。一方、半導体製造工程用のフッ化水素は99.999%以上の
超高純度製品で、サムスン電子やSKハイニックスなどに納品している日本のステラケミファや
森田化学工業が世界市場を掌握している。
超高純度であることは製品不良率を下げるために不可欠な要素だ。半導体は10ナノメートル
(㎚、1ナノメートルは10億分の1メートル)前後の超微細工程で作られる。純度が低く不純物が
増えれば不良率も跳ね上がる。例えば、純度99.99%のフッ化水素内にある不純物は、純度99.999%の
フッ化水素内にある不純物の10倍となる。ソウル大学材料工学部のファン・チョルソン教授は
「肉眼では見えない不純物でも、10ナノ以下では致命的なダメージとなる」と話す。
純度の数字が1段階上がれば、製造の難易度は幾何級数的に上がる。コメ1万粒の中からアワ(粟)
100粒を見つけ出す場合、90粒までは簡単に見つけられても、最後の1粒を見つけるのが難しいのと
同じだ。西江大学化学科のイ・ドクファン教授は「高純度で精製する技術は、金をたくさん使ったからと
言ってすぐに確保できるものではない。政府がこのほど出した国産化案を見ると、『へぼ祈とう師が
人を殺す』(ということわざのような)羽目になりかねない」と言った。
■ロシア製品、すぐに使うのは容易でない
半導体専門家らは、ロシア製フッ化水素を半導体製造工程に使えるかどうかについて判断できずに
いる。韓国は最近6年間、ロシア製フッ化水素を輸入していない。
ソウル大学化学生物工学部のソン・ヨンウン教授は「半導体製造工程で使用するには、大量の超高純度
フッ化水素を安定した品質で供給できなければならないが、ロシア製はまだ何も証明されていない」
と語った。
ロシア製の純度が十分に高くても、サムスン電子やSKハイニックスがこれを実際の製造工程で
使うまでには、少なくとも数カ月以上必要だ。半導体の製造工程は700段階に分かれており、
このうちフッ化水素が使われるのは40-50段階で、段階ごとに使われるフッ化水素の純度や形態は
すべて異なる。既存の工程は日本製のフッ化水素に最適化されているので、ロシア製を使う場合は
工程をあらためて組み直さなければならない。それに、ロシア製が日本製のように純度99.999%で
あっても、使えない可能性がある。不純物の純度が同じだけで、不純物の粒子の大きさや種類が
確認できないからだ。半導体業界関係者は「新しい素材・装置が入ることになれば、少なくとも
2カ月は試験生産をして品質をチェックし、品質が低下していたらさらに2カ月間、時間がかかるだろう」
と話している。