ダボス会議開幕、警戒ムード強く 昨年の楽観から一転
2019 年 1 月 23 日 07:22 JST THE WALL STREET JOURNAL
【ダボス(スイス)】22日開幕したダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)では、
主要国の政治的行き詰まりや貿易摩擦、大企業への権限集中への懸念を巡り、出席者の間で
警戒ムードが広がっている。
財界の大物からは、目先の困難が昨年末の市場の急落となって表れたものの、経済はこれを
克服するとの強気な見方が多く聞かれたが、この先に大きなリスクが潜んでいるとの危機感も
出ている。
米投資会社ロッククリークのアフサネ・マシャエキ・ベシュロス最高経営責任者(CEO)は、
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催のCEOカウンシルの昼食会で
「国際貿易、政府機関の閉鎖、経済や政策の状況などいずれをとっても、不透明感は異例の水準」
と指摘する。
同氏は現在の政治・政策に関する不透明感は1970年代以来の高さで、米経済は2020年にも
リセッション(景気後退)入りする可能性があると予想する。
ダボス会議を取り巻く状況は、欠席者の事情が多くを物語っている。
ドナルド・トランプ米大統領と政府高官はワシントンにとどまり、米史上最長となった政府機関
閉鎖への対応を迫られている。テリーザ・メイ英首相は欧州連合(EU)からの秩序だった離脱の
取り決めを維持するため調整に追われている。中国の習近平国家主席は、中国経済が数十年ぶりの
低成長に沈む中、出席を見送った。
資産運用大手ブラックロックの株式部門グローバル責任者、マーク・ワイズマン氏は、
今年のダボス会議は「静かだ」と述べる。今回の状況は金融危機後に類似しているとし、
「当時は世界経済が議題だったが、今年は地政学だ。多くの主役は欠席だ」と述べた。
22日にはブラジルのジャイル・ボルソナロ新大統領が登壇し、注目を集めた。演説では、減税や汚職撲滅、貿易の利点などについて言及した。
元米財務省当局者のスチュアート・アイゼンスタット氏は「ボルソナロ氏は保守派だが、
ポピュリズム(大衆迎合主義)ではない」とし、「扇動的ではなかった」と述べた。
中国中化集団(シノケム)のトップ、寧高寧氏は、地政学が海外投資やグローバル化への
課題となっていると指摘。「中国人はかなり混乱している。他国への投資は歓迎されていると
考えてきたが、今となっては常に歓迎されていなかったことに気付いた」と話した。
だが、ダボス会議は世界情勢やムードを見誤ることで有名だ。1年前の会議では、経済への
楽観や株式相場の値上がりへの期待が占めていた。
世界最大のヘッジファンド、ブリッジウオーター・アソシエーツのレイ・ダリオ氏は昨年、
景気の力強さや大型減税の成立により株式相場が近く急伸するとの予想を示した。
だがその数週間後、株式相場は振れの大きい不安定な局面に突入し、年末の調整へと至った。
ダボス会議が開幕、銀行首脳らに慎重な声根強く
2019年1月23日 / 06:47 / REUTERS
[ダボス(スイス) 22日 ロイター] - 世界経済フォーラム(WEF)年次総会
(ダボス会議)が22日、スイス東部のダボスで開幕した。会議に参加した金融業界の
首脳らからは慎重な声が多く聞かれた。
英銀スタンダード・チャータード(スタンチャート)(STAN.L)のアンディー・ハルフォード
最高財務責任者(CFO)は会場の雰囲気について、1年ほど前は異常なほど前向きだったのに
、今やこれほど冷え込んでしまうとは驚きだと語った。
世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者兼会長、
レイ・ダリオ氏は世界経済を巡り悲観的な見通しを示すとともに、現在の経済環境は
1930年代後半の世界大恐慌の終盤と酷似していると指摘した。
その上で「長期的な観点で最も恐ろしいのは、政治的にも社会的にも対立が拡大する中で、
最も有用な手段である金融政策が限界に来ていることだ。新たな景気下降がやって来ないか
とても心配している」と述べた。
バークレイズ(BARC.L)のジェス・ステーリー最高経営責任者(CEO)は地政学的な不透明性と
金融緩和の巻き戻しが主要な不安材料とした上で「世間全般に広がっていた過度の楽観は深刻な
懸念へと様変わりしてしまった」と指摘した。
こうした中、シティグループ(C.N)のマイケル・コーバット最高経営責任者(CEO)は
明るい面もあると強調。「米中が予想外に良好な貿易協定で妥結する可能性はある」とし、
米中貿易摩擦を巡る市場の不安は行き過ぎかもしれないとの見方を示した。
昨年末の相場急落は米国内外の実証的根拠と結び付いていないとした上で「年明けは様々な
セクターでかなりの反転がうかがえる。企業の決算シーズンを迎える中で、これまで決算を発表した
企業の75%超は業績がアナリスト予想平均を上回っている」と述べた。
前出のハルフォードCFOは、企業の収益性が世界的に歴史的基準と比較して非常に良好であり、
世界の消費パターンも依然持ちこたえていると指摘した。