EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

政治・経済・生活・商品情報などさまざまな話題で情報を発信してます。

タリバン、アフガニスタン首都も掌握。ガニ大統領は出国

2021-08-16 05:28:39 | 戦争・内戦・紛争・クーデター・軍事介入・衝突・暴動・デモ

タリバン、アフガニスタン首都も掌握。ガニ大統領は出国


2021年8月15日   BBC

カブール国際空港から出国しようとする人たち

 

アフガニスタンで進攻を続ける反政府組織タリバンが15日夜、首都カブールに入った。それに先立ち、

アシュラフ・ガニ大統領は隣国へ出国した。タリバンはカブールを攻撃して制圧するつもりはなく、

平和的な権力移譲を目指すとしている。タリバンは同日夜には、首都の外で待機していた戦闘員に、

市内に入るよう指示。大統領府を掌握したとしている。

 

アフガニスタン国家和解高等評議会のアブドラ・アブドラ議長は15日夜、ガニ大統領が出国したと確認し

た。フェイスブックに投稿した動画でアブドラ氏は、ガニ氏を「前大統領」と呼び、「国をこのような

状態で置き去りにした」ガニ氏について「神が責任を問うし、国も審判を下す」と述べた。

 

これに先立ちタリバンは15日午後、首都に武力で入るつもりはないとして、権力の平和的移譲へ向けた

協議が続いていると述べていた。政府内相は、閣僚が「平和的権力移譲」を準備していると述べた。

タリバン報道官はBBCに、「全てのアフガニスタン人が含まれるイスラム首長国のイスラム政府」は

「国民と国に奉仕する」と言い、懸念されている女性の権利についても教育や就労の権利を認めると

話した。

 

大統領はタジキスタンへ

ガニ大統領は15日午後に出国した

 

ガニ大統領については、地元トロ・テレビなど複数メディアが政府幹部の話として、その出国を伝えて

いた。タジキスタンへ向かったという。アムルラ・サレ副大統領も出国したという。

同日午後には、ガニ大統領が、米政府のザルマイ・カリルザド特使をはじめ、他の北大西洋条約機構

(NATO)幹部と緊急協議をしているとの情報もあった。

 

タリバンは15日夜、首都の入り口で待機させていた戦闘員に、市内に入るよう指示した。「略奪を防ぐ

ため」だと、ザビフラ・ムジャヒド広報官は説明した。アフガニスタン治安部隊がすでに市内の持ち場や

検問所を離れているため、タリバンが混乱と略奪を防ぐために市内に入るのだと説明した。

同日夜には、大統領府を掌握したと主張した。

 

タリバン広報官は声明で、市民に戦闘員を恐れないよう呼びかけた。

 

アフガニスタンにおけるアメリカの外交トップ、ロス・ウィルソン代理大使は15日夜、大使館を離れて

カブール国際空港に避難した。米当局者によると、大使館に掲げられていた星条旗も空港へ運ばれた。

カブール空港で発砲があったという情報もある。

 

「平和的権力移譲」を


アフガニスタン政府のアブドル・サッタル・ミルザクワル内相代行は同日午後、地元トロ・テレビが

放送した動画で、暫定政府への「平和的権権力移譲」が行われると述べた。カブールが攻撃を受ける

ことはないとも話した。

 

タリバンはさらに声明で、国民に国内にとどまるよう呼びかけ、「あらゆる経歴の人たちに、将来的な

イスラム制度の中に自分がいる様子を思い浮かべてほしい。新しいイスラム制度では、責任ある政府が

奉仕し、全員に受け入れられるようになる」と強調した。

 

カタールの首都ドーハでアフガニスタン政府とタリバンが続けていた和平交渉の場に、アフガニスタン

の部族長たちが参加し、政権移譲の形を協議することになったという情報もある。

 

タリバンは15日午後、戦闘員には首都の入り口で待機するよう指示していた。さらに、首都と市民の

安全はアフガニスタン政府次第だとして、権力の平和的移譲へ向けた協議が続いていると述べた。

 

タリバン関係者は、戦闘員には祝砲の発砲を禁止したと述べた。アフガニスタン政府軍の兵士たちには、

帰宅を認める方針という。関係者はさらに、空港と病院は運営を続け、緊急援助物資の搬入を阻止する

こともないと話した。

 

外国人は、出国を希望する人には出国を認めるほか、滞在を希望する場合はタリバン当局に申告するよう

に言われている。

 

タリバンはさらに、カブール北郊にあるバグラム空軍基地と刑務所を掌握したと発表した。バグラム

空軍基地は2001年10月に始まったアフガニスタン空爆から今年7月2日まで、タリバンやアルカイダと

戦う米軍など外国駐留部隊にとって最大の作戦拠点だった。

 

 

空港へ渋滞 銀行では行列

こうした状況で、15日には多くの市民がカブールから脱出しようとして、交通渋滞が発生した。

カブールで取材するBBC記者によると、多くの店舗や市場は閉店し、一部の政府庁舎も閉じた。持ち場を

離れる兵士や警官もいたという。

 

パキスタンは、国境沿いの地域をタリバンが制圧したため、越境地点のトルカム検問所を閉鎖したと

される。このため、アフガニスタンからの出国ルートはカブール国際空港発の空路のみになった。

 

空港への道路が渋滞する中、「鍵を車内に残して空港へ歩き始めた人もいる」と、住民の1人はロイター

通信に話した。

 

 

 

カブールではさらに住民たちが、預金を引き出そうと銀行で長蛇の列を作っている。現金が足りなく

なった支店もあるという。

 

米軍を中心とした外国駐留軍が20年の軍事作戦を経て撤退すると、タリバンは一気に国内で進撃を続けて、

勢力範囲を拡大した。一連の戦闘で数十万人が避難民となり、その多くが安全を求めて首都カブールに避難

していた。

 

アメリカはドナルド・トランプ前政権が昨年2月の時点で、今年5月までに米軍を撤退させるとタリバンと

合意していた。ジョー・バイデン大統領は今年4月、米同時多発テロから20年を迎える9月11日までに

アフガニスタンの駐留米軍を完全撤退させると表明した。

 

タリバンが首都に迫ったと知らされ帰宅を急ぐ人たち(15日、カブール)

 

カブールでのアフガニスタン最大の刑務所Pul-e-Charkhiが解放され、すべての囚人が釈放された

 

女性の権利は


カタールの首都ドーハでアフガニスタン政府と和平交渉を続けるタリバンのスハイル・シャヒーン広報官は

同日、BBCニュースのキャスターとして生放送中のヤルダ・ハキーム記者に電話をかけ、アフガニスタンの

人たちに「報復はしない」と話した。

 

「アフガニスタンの人たち、とりわけカブールの人たちには、あなたたちの財産や生命は安全だと、約束

する。誰にも報復はしない」とシャヒーン氏は述べた。

 

「タリバン指導部は兵士に、カブールの入り口で待機し、市内に入らないよう指示した。私たちは平和的

な権力移譲を待っている」とシャヒーン氏は話した。

 

「平和と寛容」の政府になると繰り返したシャヒーン氏は、タリバンのイスラム政府には、タリバンに

所属しない人も含め、すべてのアフガニスタン人が参加できるとも述べた。「全てのアフガニスタン人

が含まれる」「アフガニスタン・イスラム首長国のイスラム政府」は「国民と国に奉仕する」と強調した。

 

さらに、アフガニスタン内外で懸念されている女性の扱いについては、女子が教育を受ける権利や女性が

家の外で働く権利を認め、女性は頭髪を隠すヘジャブを着ければ外出は認められると述べた。

タリバンが制圧した地域ではすでに、戦闘員が女子の登校を禁止したという情報があると指摘されると、

それは指導部の方針と異なり、タリバンの名誉を傷つけようとする風説だと述べた。

 

タリバンが掌握した地域ではすでに、女性が全身を覆うブルカの着用を強制されたり、男性の付き添い

なしでの外出が禁止されたりしているという。また、タリバンが強制する行動規範に違反した人たちを

殴ったりむちで打ったりしているという報告もある。

 

「女性に対する戦争を世界は静観している」 アフガニスタンの現状を語る

 

アメリカの対応は

こうした中、欧米諸国はアフガニスタンに在留している外交スタッフや市民の出国を急いでいる。

 

バイデン米大統領は、「アメリカや同盟諸国の人員が、秩序だって安全に出国できるよう、駐留中に

我々を助けてくれたアフガニスタン人や、とりわけタリバンの脅威にさらされている人たちが、秩序

だって安全に避難できるよう」、米兵約5000人を現地に派遣した。

 

イギリス市民の出国を支援するため、英兵約600人もカブールに派遣された。この英兵たちは、イギリス軍を

支援し、タリバンから報復される危険のあるアフガニスタン人の移住も支援する。

 

他の欧米諸国も自国民を出国させている。大使館を閉鎖する国もある。

 

バイデン大統領は7月2日深夜に米軍の大半を撤退させたことについて、「よその国の内戦のただなかに

アメリカが果てしなくい続ける」ことは正当化できないと述べていた。バイデン氏は7月8日、タリバンが

アフガニスタン全土で勝利する可能性は「非常にあり得ない」とも発言していた。

 

アントニー・ブリンケン米国務長官は日本時間15日夜、米CNNに出演。「どうしてバイデン大統領は

この件についてこれほど間違ったのか」と質問するジェイク・タッパー司会者に対して、「まず文脈を

はっきりさせよう。アメリカがアフガニスタンにいた一番の目的は、9/11に我々を攻撃した連中に対抗

するためだった」として、オサマ・ビンラディン容疑者を裁き、テロ組織アルカイダの能力を後退させる

という目的は果たしたと述べた。

 

「そもそもアフガニスタンへ行った理由については、我々は目的達成に成功した」とブリンケン氏は言い、

「我々が部隊を(アフガニスタンに)残しておけば、現状がずっと維持できたはずだという考え方は、

ひたすら間違っていると思う」と続けた。

 

ブリンケン長官は米ABCニュースに対しても、アフガニスタンでの任務は「成功」だったと強調し、

ヴェトナム戦争でアメリカが支援した南ヴェトナム軍の敗北が決定的となった、1975年の「サイゴン陥落」

と現状は異なるとの見解を示した。

「これはサイゴンじゃない」と、ブリンケン長官は述べた。

 

東部ジャララバードは無抵抗

カブール接近の前には、タリバンは14日から15日にかけて、北部バルフ州の州都マザーリシャリーフと

東部の主要都市ジャララバードを制圧した。

東部ナンガルハル州の州都ジャララバードでは15日朝、タリバンが一発も発砲することなく、無抵抗の

市内を席捲(せっけん)したとされる。

地元政府関係者はロイター通信に「ジャララバードでは何の衝突も起きていない。知事がタリバンに

降伏したからだ。市民の命を守るのは、タリバンの入市を認めるしかなかった」と話した。

 

ジャーナリストのタリク・ガズニワル氏は、州知事がタリバンに行政権を移譲する様子だという写真を

ツイートした。

 

 

ジャララバードを押さえたことで、タリバンはアフガニスタンをパキスタンとつなぐ道路を確保したこと

になる。

 

マザーリシャリーフ制圧

ジャララバードに先立ち、14日には北部の要衝マザーリシャリーフがタリバンの支配下に入った。

伝統的に反タリバン派だったマザーリシャリーフの陥落は、タリバンにとって大きな戦果となる。

ほんの数日前には、ガニ大統領が政府軍の視察に訪れたばかりだった。現地の公務員によると、

アフガニスタン第4の都市マザーリシャリーフは、ほとんど戦闘のないまま制圧された。

 

マザーリシャリーフのあるバルフ州のアバス・エブラヒムザダ議員はAP通信の取材に対し、政府軍がまず

降伏し、それに親政府派の武装組織が続いたと語った。

マザーリシャリーフはウズベキスタンとタジキスタン国境に位置する経済の中心地。タリバンが1990年代

までこの地域を占領していた。

 

ウズベキ系軍閥のアブドル・ラシド・ドストゥム司令官とタジク系指導者アッタ・モハンマド・ヌール

司令官は、マザーリシャリーフのあるバルフ州を脱出したとの情報もある。

 

ソーシャルメディアで共有された動画には、無人となったドストゥム氏の家にタリバン戦闘員が入っている

様子が映っている。

 

これに先立ち11日にガニ大統領と協議した際には、ドストゥム氏は「タリバンは何度か北へやってきたが、

いつも包囲された」と威勢よく話していた。

 

ヌール氏は14日、フェイスブック投稿で、自分とドストゥム氏は「安全な場所」にいると書き、

マザーリシャリーフでの敗退は政府軍のせいだと非難した。政府軍の兵士たちは自ら武器や装備を

タリバンに手渡していたと、ヌール氏は書いた。

 

マザーリシャリーフの住民はBBCに対して、市内に入るタリバンについて「一軒、一軒、ドアをたたいて

いる。私たちは家にいて、残念ながら何もできない。とても怖い。子供たちはとても怖がっていて、

妻は泣いている。明日どうすればいいんだ」と話した。

 

14日にはこのほか、パクティカ州とクナール州の州都もタリバン支配下に入った。

 

クナール州アサダバードで撮影された未確認映像では、タリバンの旗を振って道を歩く人たちが映って

いた。

 

カブールでは、タリバンを逃れて避難してきた人たちが、公園などで野宿を余儀なくされている。

タリバンが制圧した地域では司令官が、戦闘員の妻にするため未婚の女性を手渡すよう住民に要求して

いるという話もある。

 

姉妹2人とパルワンからカブールへ逃れてきたムズダさん(35)は、タリバンに結婚を無理強いさせられる

くらいなら、自殺すると話した。ムズダさんはAFP通信に「昼も夜もずっと泣いている」と話した。

 

タリバンの攻撃から避難して首都カブールで野宿する人たち(10日、カブール)

 

アフガニスタン政府は何を

14日にはガニ大統領の録画演説がテレビ放送された。住民がこれ以上を家を追われ、各地で破壊が続く

ことを防ぐため、アフガニスタン軍の勢力を再結集することが何より最優先されると、大統領は述べた。

ガニ大統領は、国民に「押し付けられた」戦争がこれ以上、命を奪うのは許さないとして、アフガニスタン

治安部隊の「勇気」をたたえた。

 

国連はアフガニスタンの近隣諸国に対して、避難民の安全確保のため、国境を閉じないよう呼びかけた。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、状況は制御不可能な状態に陥りつつあると懸念を示していた。

 


アフガニスタン情勢の変化:アメリカの作戦展開とタリバンの進攻

2001年10月: 9月11日の米同時多発テロを受け、アメリカ主導によるアフガニスタン空爆開始

2009年2月: アメリカはさらに兵士1万7000人の増派を決定。NATO加盟国もアフガニスタンへの増派などを約束

2009年12月: バラク・オバマ米大統領(当時)は、アフガニスタン駐留軍を3万人増員し、計10万人に拡大すると決定。一方で、2011年までに撤退を開始すると表明

2014年10月: アメリカとイギリスが、アフガニスタンでの戦闘作戦を終了

2015年3月: オバマ大統領が、駐留軍の撤退延期を発表。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領の要請を受けたもの

2015年10月: オバマ大統領が、2016年末までは兵士9800人をアフガニスタンに残すと述べた。これ以前は、1000人を残し全軍を撤退させると約束していた

2016年7月: オバマ大統領は「安全保障上の不安定な状態」を理由に、2017年には米兵8400人が駐留すると発表。NATOも駐留を継続することに合意したほか、2020年までアフガニスタン政府軍への資金援助を続けると強調した

2017年8月: ドナルド・トランプ大統領(当時)が、タリバンの勢力拡大を受けた増派表明

2019年9月: アメリカとタリバンの和平交渉が決裂

2020年2月: 数カ月におよぶ交渉の末、アメリカとタリバンがドーハで合意に至る。アメリカは駐留軍撤退を約束

2021年4月: ジョー・バイデン大統領、9月11日までに駐留米軍を完全撤退させると表明

5月: 米軍とNATO各国軍の撤退開始

5月: タリバン、南部ヘルマンド州でアフガニスタン軍へ大攻勢開始

6月: タリバン、伝統的な地盤の南部ではなく、北部で攻撃開始

7月2日: カブール北郊にあるバグラム空軍基地から、米軍やNATO加盟各国軍の駐留部隊の撤収完了

7月21日: タリバンが半数の州を制圧と米軍幹部

8月6日: 南部ザランジの州都をタリバン制圧。タリバンが新たに州都を奪還するのは1年ぶり

8月13日: 第2の都市カンダハールを含め4州都がタリバン支配下に

8月14日: タリバン、北部の要衝マザーリシャリーフを制圧

8月15日: タリバン、東部の要衝ジャララバードを無抵抗で制圧。首都カブールに入る

 

(英語記事 Afghanistan on the brink of Taliban takeover / Taliban take government's last northern stronghold

 

トム・コットン:「もしあなたがアメリカ人でアフガニスタンで立ち往生しているなら、或いはもしそう言う人を知っているなら今すぐ私のオフィスにコンタクト取って下さい。事態は切迫していますが貴方に情報を届け、貴方が脱出出来るよう最大限の努力をします」

 


人気ブログランキング