【社説】韓国の脆弱な法治を崩壊させる「国民感情」
2017/01/17 10:29 朝鮮日報
ソウル外信記者クラブのマイケル・ブリーン会長は先月、米国の外交専門誌『フォーリン・ポリシー』の中で「韓国の民主主義、国民が怒
りの神だ」とする見解を示した。ブリーン氏は「韓国では群衆の感情が一定の線を越えると強力な野獣に変わり、法治を崩壊させてしま
う。韓国人はこれを『民心』と呼んでいる」とも説明した。ブリーン氏は16日に本紙とのインタビューに応じた時も「(民心は)韓国の脆弱
(ぜいじゃく)な法治を崩壊させる恐れがある」との懸念を示している。
ブリーン氏は「法治に基づいた民主主義社会で生きてきた人間にとって、国民を(法よりも)最も上位に置く韓国的な概念は受け入れ
がたい」とも言及した。ブリーン氏は英米メディアの特派員として35年間にわたり韓国に駐在したが、それでも外国人であることに変わ
りはない。ただし外国人の目に映った韓国における国民感情の影響力とその危険性については、一度傾聴する必要はあるだろう。
ブリーン氏は「大規模集会が続く中でも、暴力や不祥事はほとんど起こらなかった。このことは韓国の民主主義を大きく改善させるだ
ろう」と評価する一方で「民主主義国家における群衆集会はいわば自らの主張を訴える手段ではあるが、法で定められた制度を支配
するようなことはない」とも指摘した。ブリーン氏が懸念を示すのは、政府や立法府、司法機関が国民感情に反する決定を下すことがで
きないという点にある。実際に今行われている憲法裁判所による弾劾決議の審理や特別検事による捜査はもちろん、韓日関係など外
交問題でも政府が国民感情に押し切られるケースが相次いでいるのは事実だ。
14日にはキャンドル集会参加者の一部がレーザービームを使い、ソウル光化門の米国大使館の建物に「ノー・サード」という言葉を
照らした。これは言うまでもなく米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に反対するため
だ。ただし外国の大使館などに対してこのように攻撃的な行動がなされるのは法治国家ではほとんどない。キャンドル集会の主催者は
この問題について「別の協力団体がやった」としているが、彼らも新年の記者会見ではTHAAD反対を「積弊清算に向けた課題」と明言
している。法的には何の権限もなく委任も受けていない団体が、いわば何でも好き勝手にやっているのだ。
韓国の法治が脆弱であるのは確かだ。その理由は権力者が法を軽視してきたためだが、だからといって誰もが法を無視してもよい
わけではない。しかも何の責任もない国民感情が法律の上に君臨してしまえば、最終的にはこの国の構成員全員が被害者となってし
まうだろう。